goo blog サービス終了のお知らせ 

もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)

年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。

チェイサー 緻密な脚本と演出で、韓国映画らしい「血・暴力・そこまでやるかという絶望感」が身にしみる

2009-05-17 23:55:33 | その他(洋画)
今日はフィリピンでみた中国映画について書くつもりでしたが、昨日みた韓国映画がよかったので、とりあえずそちらを優先しました。

タイトル:チェイサー 、製作:韓国
ジャンル:ノンストップ・クライム・サスペンスR15/2008年/125分
映画館:テアトル梅田2(60席)25人
鑑賞日時:2009年5月16日18:XX
私の満足度:70% 
オススメ度:70%(血と暴力は、覚悟してみてください。)

【序】
最近韓国映画を見ていない。1999年の「シュリ」に衝撃を受け、数年前まで
東京にいた頃は、ハン・ソッキョ、チェ・ミンシク、キム・ユウジンの出演作は
好んでみていたのだが、田舎に引っ越してたまにしか機会がない。さらに、
韓国映画自体ブームが過ぎてかなり減ってきていることも影響しているだろう。
そんななか、予告編がとても怖そうで、緊張感があったことと、日本の映画
関係者の評判も高そうなのでみてみることにした。

【ストーリー:gooより引用】
街では連続猟奇殺人事件が起こっている頃、元刑事でデリヘル嬢の斡旋を
生業としているジュンホは、彼の元から行方をくらませた2人の女の行方を
探っていた。その手がかりを握る男を見つけるも、探りを入れさせた
デリヘル嬢ミジンも失踪。だが偶然ジュンホは疑惑の人物ヨンミンを見つけ、
捕獲する。すると警察でヨンミンはとんでもない告白を始めた。「女たちは
自分が殺した。そして最後の女はまだ生きている」と――
[ 2009年5月1日公開 ]

【冒頭】
大都市ソウルの大通り。夜の渋滞に、ヘッドライトが輝く。
歩道沿いを運転するひとりの若い女。携帯片手に、あたりを見回しながら
ゆっくりとすすむ。車からおりた女、ノースリーブが似合うスラリとした美人。
歩道で男と出会い、向き合い二言三言ことばをかわすと、男が運転席へ。
女は助手席へ。車は、大通りから住宅街へと進んでゆく、坂の多い道。
大邸宅が多そうだ、道には駐車の車がいっぱい。縦列駐車を行う。

男「もう少しバック」
女が車からおりてくる。暗いが、そんなに悪くない止め方に見える。
男「ひどいとめかただなあ」
女「少しだからいいのよ」

家の中へと消えてゆく二人。夜が明け、雨が降り、雨がやみ、雨かふり。
二人が乗っていた車には、名刺サイズ大のビラが多数貼られている。
半裸女性の写真に、電話番号だけが大きい。その放置自動車の前を
パトカーが通り過ぎ、バックして戻ってくる。
警察「あなたの車?」
タバコをくわえる男、車を眺めているが警察を無視。
「あの女、あとで殺してやる。」

【感想1:つかみはOK】
最初のシーンから危険な香り。デリヘル嬢が、携帯で直接客と電話する
というのも、待ち合わせた場所から車で移動(店側が場所を把握できない)
というのも危険。放置自動車は、無関心の象徴ともとれる。背後でいったい
何が起こっているんだという恐怖心が広がってくる。

「あの女、あとで殺してやる。」とつぶやいた男は、デリヘルの店長。
女が逃げて金を踏み倒されたと思っている。そこで、女性が消えたときと
同じ携帯番号から注文があったときに派遣するミンジに指示をだす。
「家にはいるときに住所を覚えろ。部屋にはいったら、シャワーを浴びる
といってトイレに行け。トイレから住所をメールで送れ。」

このミンジ。出番は少ないが、昔の風吹ジュン似で物語のヒロイン的存在。
女ひとりで7歳の娘を育てており、今日は風邪で休んでいたところを店長に
電話で呼び出されて、ぼろくそいわれて出勤する。(お涙頂戴的設定でも
あるが、実際そういうのって多いのでしょう。韓国でも日本でも世界でも。)

【ミジン失跡のシーン】
家の前にたつミンジ。男は、ジャラジャラと20個ぐらい鍵のついた束から
鍵を選んで差込み、振り返ってミンジを見る。

部屋のなか。男は大きなソファでテレビ。ミンジは予定通りトイレへ。
店長は車のなかで、携帯を見ている。

ミンジ、トイレにはいるがシャワーも風呂も使ってないかのような汚さ。夢中で
住所を打ち込み送信・・・・・ところが送信失敗。電波が弱い。タイル作り
の湯船をまたぎ、壁の窓に近づけるが反応はない。窓をあけるとレンガの壁。
湯船の端に、血のついた髪の毛を見つける。
店長、電話をかけるもつながらない。

再び部屋、やや呆然とした表情のミンジ「車にコンドームとってくるわ」
「そう」テレビのリモコンをいじりながらさして気にしない感じの男。

南京錠のついたドア。=>いきなりエビゾリで縛られた下着姿のミンジ。
男は、道具箱をぶちまけ、かなづち、のみを手にする。猿轡からもれるミンジ
の叫びもかいせず、「痛くないから」と、のみを頭にあてがうとかなづちを
思いっきり振り下ろす。

【感想2:怖ぇ~痛ぇ~】
言葉の説明がなくとも、段々と自分が犯罪現場に誘導されてゆくのが実感
できる映像だ。鍵の束は、ここが本人の家ではなく、侵入したものであり、
携帯が通じないのも南京錠がかかっていたのも全て計画通り。そして
エビゾリで文字通り身動きできないところまでこちらまで追いこめられて
しまった感じ。特に私はエビゾリに反応。あの連合赤軍山岳ベース連続
リンチ事件を思い起こして恐怖倍増。

【感想3:アイアムサムのダコダ・ファニングを思い出す】
7歳の娘が親と離れるというと思い出すのがアイアムサム。あの映画でも
要所要所でセリフなしで音楽と演技で魅せる部分がありましたが、この映画
もそういうのありました。ミンジの娘が泣き出すシーンは、雨と車の窓ガラス
越しのショットで泣く声さえ聞こえないことが逆に印象的。男の親戚を尋ねて
行ったとこの、男に手をかけられた男の子の目も短いカットながら忘れ難い。
いや悪夢のように残像として私の脳に刻み込まれて、消せないのではなか
と心配になるほどだ。

【感想4:やりきれぬ思い。現場と組織の温度差】
この映画、犯人は最初からわかっている。ミンジのいる場所もわかっている。
観客と犯人には。ところが主人公と警察は、わかってないので、観客は、
とにかくもどかしい思いをいだきつづけて見さされることになる。
警察の「既に死んでるだろう」という言葉がどれほど無責任に思えたことだろう。
警察の打ち手も観客から見れば無駄なものばっかり、必死に捜す主人公も
警察にじゃまされるし、なかなかたどり着けない。

監督は、この映画のもととなった猟奇殺人事件「ユ・ヨンチョル事件」のほかに
この映画をつくるきっかけになった事件として2004年のイラクでの韓国人拉致
殺害事件をあげている。日本でいえば「バッシング」「自己責任」「ボランティア」
が問題となったときである、そして日本人青年殺害のシーンがインターネットで
公開された。韓国人殺害についてネットで調べてみたが、情報が交錯していて
なにが本当なのかよくわからなかった。ただ殺害シーンは公開されたという。

映画をみると、ミンジに助かってほしいという気持ちは多くの人が抱くだろう。でも
実際の事件では、デリヘル嬢はもともと危険な仕事だし、当時のイラクも危険な
ところだしそんなところに行って拉致されてもそは或る程度しょがないでしょうという

意識が働く。そういうトーンの報道もされる。さらに、本人の生死とは別のところで
それぞれの思惑で、生死に影響をおそぼすかもしれない」やりとりがされる。
監督は『普段、新聞やニュースで報道される死に対して、我々が鈍感になっている
という事実をまざまざと思い知った』という。そこから生まれた映画だけに、この映画

鈍感なままでは見させてくれません。

さらに実際の犯人かなり不幸な生い立ちをそぎ落としたことが、見るものに安心や
言い訳をあたえず緊迫感を与えてたと思います。

【感想5:マンツーマの対決の迫力】
最後にこの映画をもりあげたのは、ヘラヘラした殺人犯と、そこに迫る元刑事で、
デリヘル店長(経営者)のチェイサー(追撃者)ジュンホ(キム・ユンソク)。
走る暴れる叫ぶ、ときに寡黙になる。私は、この映画チェ・ミンシク主演なら
もっといいなあと思って見に行ったのだが終わってみれば見事な演技。
多くの暴力シーンを、テンションがさがることなしに最後まで迫力あるバトルを
展開してくれた。

映画のなかで私はジュンホを応援するが、ジュンホは決して正義ではない。
刑事の頃から売春斡旋をしていて解雇され、そのままデリヘルを開業したという
設定のようで、ミンジの携帯には「ゴミ」と記録されているような人間。金のために
犯人を追うジュンホに対して、ミンジを助けてくれと応援しながらみていたのだが
最後には何を応援しているのかわからなくなった。ただ悪夢をおわらせてほしい
というそれだけかもしれない。最後までファミリーで楽しめるような映画には
ほどとおいという感じなのだが、描きたいことが精巧なストーリーになっており
それを妥協なく描いたという感じだ。日本の映画関係者が絶賛しているのも、
スポンサーに「あまり注文つけずに取らせてくれ」という叫びかもしれない。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。