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もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)

年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。

ビデオ鑑賞 生きてみたいもう一度「新宿バス放火事件」 もう29年たちました

2009-08-15 15:11:23 | その他(邦画)
タイトル:生きてみたいもう一度「新宿バス放火事件」/1985年作品/126分
ビデオ鑑賞日時:2009年8月15日
私の満足度:60% 
オススメ度:60%

【序】
昨秋、古本屋で原作をみつけて読み、映画化されていることを知りました。
DVDにはなっていないようで、その後ヤフーのオークションでVHSビデオを
購入、送料別で300円ぐらいだったか?

【冒頭】
夜の高層ビル。10階~20階~30階と見上げるようなカメラの動き。半分以上の
窓には明かりがついている。隣にも同じ様なビル、そのまた近くにも。
複雑に入り組んだ道路に車が溢れる。吹き抜けから地下にも車の流れが見える。
(新宿西口とわかる。)

JR(国鉄)の電車が行きかう向こうに靖国通りのネオンが光る。
西口きっぷうりば。人は多いが列はなし。カメラを振って改札。駅員さんが
きっぷを切る音が響く。立ち話をしている半そで姿の若い女性、白人、
サーフボードを持ち歩く男。

電車のなか、黒のノースリーブに肩まで髪を下ろした若い女性、ドアによりかかり
ややうとうと。(主人公杉原美津子役:桃井かおり、以下[美津子]と記す。)

『二百人を超す死傷者を出した、国鉄静岡駅前のガス爆発事故を捜査している
静岡県警は・・・』茶色モノトーンの画面で、ニュース映像が流れる。
アルタのオーロラビジョン。

♪トーキーオ。トキオが二人を抱いたまま。トーキーオ(沢田研二)
思い出横丁と書いたちょうちん越しにカウンターで一杯飲んでる男たち。
♪雨雨降れ降れもおっと降れ、私のいい人連れてきて(八代亜紀)
暗い裏通り、ボーットした感じの中年男性が徘徊。通り過ぎたと思ったら
戻ってきて道路わきにあった、銀色のバケツを引っ張りだして持ってゆく。
表情は暗くて見えないが、ほぼ無表情か。
(犯人丸山役:柄本明、以下[丸山]と記す)

『池袋、上野方面の到着でございます。』ホームに電車が入ってくる。
[美津子]、白のブレザーを手に持って降りてゆく。
『新宿、新宿でございます。車内、落としもの、お忘れもの・・・』
まもなく、ジィーーーという発車をうながす音。

[美津子]は、小走りに階段をかけあがりながら白のジャケットを着てバックを
肩にかける。人ごみをとおり過ぎて、バス乗り場を歩く。このあたり、あまり
人はいない。バスの横を後ろから前へ。バスは後ろ、真ん中、前の3つドアが
あるがいずれも開放。前の扉から乗り込む。立っている人が2人いるが間を
通って後ろ側へ。真ん中のドアと、後ろのドアの間の横向きの席に空席を
みつけ、軽く会釈して座る。

道路横の生垣に座り込み、コップ酒を飲む[丸山]。
バスの窓越しに、やや切ない表情の[美津子]、耳にイヤリング。
バスのエンジン、アイドリングの音と振動が伝わってくる。

新宿西口吹き抜けからビルの時計が見える。タクシーが3台通りすぎる。
テロップ『1980年8月19日 東京・新宿』
ビルのCITIZENデジタル時計が『9:08』を示す。

炎。夕刊2つ分ぐらいの新聞を束にした先が燃えている。中年男は右手に
燃える新聞紙、左手に先ほど拾ったバケツを持って歩き出す。バケツの取っ手
と本体がすれる微妙な金属音と、新聞の燃える音。カメラが後ろから追う。
わずか二十歩程度で暗がりのなかからバスの後部が現れる。新聞は1m弱の
半分ぐらいが燃え、画面の中心を占める。中年男はバスの後ろから回り込んで
後部ドアが視界にはいったかと思うといきなり燃えている新聞を車内に投込む。
つづいて、バケツを両手でささえながら勢いをつけるように後ろに振ってから
車内へと中の液体を投込む。勢いあまってかバケツも車内へ。

一気に燃え上がる火。騒ぐ乗客、数秒で爆音とともに後部ドアから後ろは
火に包まれる。『ウワー』という声ならぬ声とともに走り出す乗客。
[美津子]は、座って火を見つめていたが、立ち上がり外へ。
『熱いっ』『助けてくれ!!』の声が飛び交うなか火のついた白いジャケット
が右往左往する。さらなる爆音とともにバス全体は火に包まれ、乗客は周囲を
のたうちまわる。『新宿西口駅』と書いたバス亭だけが平然としているように
見える。ゴーという火の音が激しい。窓からその何倍もの炎が噴出す。

原型が見えないほどに燃えさかるバスの全景に、おどろおどろしい音楽と伴に
メインタイトル
『生きてみたいもう一度』が細い手書き、下に活字で「新宿バス放火事件」

真っ黒の腕から皮膚がはがれたところが真っ赤に見える。指先がなにかを
掴もうとするかのように動いている。浴槽にそそがれる水の音、低いうめき声。
真っ黒な人間[美津子]が浴槽のなかで生きている。青いポリバケツ一杯の氷が
浴槽につぎ込まれる。

病院入り口、救急車の音、65ぐらいの老女が入ってくる。
『石井美津子の母ですが』と看護婦に声をかける
『今あえません、そこでまっててください』と看護婦は、走ってゆく。

ベッドの上、うつぶせになっている[美津子]。背中は一面、
焼け焦げており、数人の医師・看護婦が取り囲んでいる。霧が吹きかけ
られるとうめき声があがる。

再び、病院の入り口。若い女性、ベンチの老女をみつける。
『お母さん』、うずくまっている老女。
『どうしてこんなことになるんだろう』
『大丈夫よ、しっかりして』 医師が通りすぎる。
『あの、石井美津子ですけど、熱傷面積はどれくらいですか』
『ちょっと待ってください』
『どれくらいですかっ!!』逃げるように去ってゆく医師。

【ストーリー:ビデオのパッケージを要約】
昭和55年8月19日、国鉄新宿駅西口のバスターミナルでバスが
放火炎上、乗客6人が焼死、16人が重軽傷を負った。この事件で
九死に一生を得た被害者、杉原美津子さんの手記を桃井かおりの
主演で全篇事実にもとづいて映画化、それがこの作品である。
皮膚の80%が焼けてしまうほどの重傷を負いながらも奇跡的に
死の淵から帰還する。事故にあう前、彼女は上司と不倫の関係に
あった。入院中に上司の妻が病死し、ようやく夫婦になれた時には、
愛にこたえられない体になっていた。そして会社は倒産。

★以下、ネタバレありです。

【関連年表】
1980年8月 新宿西口バス放火事件
1983年1月 杉原美津子、原作手記出版
1984年4月 東京地裁 無期懲役(検察告訴)
1985年3月 映画公開
1986年8月 東京高裁 1審指示、無期懲役
1997年10月 丸山刑務所で首吊り自殺(55歳)

【感想】
映画は、放火事件の当日から、東京地裁の判決直後までの4年間。
当時の新聞、著者と丸山との手紙、さらには
ナレーションのように診断書を医師が読んだり、丸山の生い立ちを
主人公がかたったりすることで、原作のほとんどをみごとに網羅
しています。さらに出版後、1審の判決までを盛り込んだことで、
話の区切りとしてもまとまりがよく、事件の映画というよりも、
ひとりの女性のいろいろありすぎる4年間がじっくりと
描かれていました。「生きてみたいもう一度」というタイトルは
見終わるとしっくりと来ました。

主人公は『犯人を憎んでいない』と言っていますが、ある意味
犯人に対する優しさというのは、犯人にとって逆にきついものが
あるようにも感じました。そういう主人公の『優しさ』と、
周囲や自分あるいは病気に対する苛立ちを、桃井かおりらしく
演じていると思いました。全篇でずっぱりですのでファンの方は
必見でしょう。不倫相手役の石橋蓮司は、編集プロダクションの
社長ですが、なんだ文学青年のような容貌。もっと若い頃は
ギラギラしたイメージをもっていたのですが、変わりました。
犯人役の柄本明は、登場シーンも少ないのですが、とらえどころ
のない私の犯人のイメージそのままでした。

全般的に暗くて、痛くて。それに当時、「過去に例がない
無差別の放火」という表現がつかわれたこの事件も、ここ1年
個室ビデオ店の放火(16人死亡)パチンコ店放火(5人死亡)
とづづいていることを考えると、結局どうしようもないという
無力感に襲われます。犯人を恨んでも恨まなくても、とにかく
どうしようもなくって、世の中も変えようがなくって、
とりあえず保身にはしりたくなります。でもラストシーンでは、
本人が生きててよかったなあと思いました。

【ラスト】人ごみの中をあるく美津子。軽く女性にぶつかりバランス
を崩して倒れるがすぐに起き上がって歩き出す。まっすぐ前を見る
顔のアップで「完」

この映画らしい、オーソドックスでひとひねりの演出がある終わり方
でした。私が期待した、面会に行くシーンの演出はいまいちでした。

【どうでもいいこと】
冒頭の放火のシーン。乗客がのたうちまわるなか、火を消そうと
するためか、爆風のためかでんぐり返りをしたりするのですが、
その動きがどうもただものではない動き。東映の殺陣で、やられ役
をやっている役者さんの動きではないでしょうか?

【著者:杉原美津子】
アマゾンで検索すると、福祉/介護関係の本を何冊かかかれていますが、
そのなかに映画にも登場する身内の方がメインと思われる作品があったので
紹介しておきます。

「老いたる父と」文藝春秋 (1989/05)

老年離婚で自らの生活をえて生々とする母親。急速に老化の進む父親を看る娘を
通して、夫婦とは?肉親とは?性とは何かを考える。
※映画のなかでも、主人公の父母はややぎくしゃくしておりました。
老いたる父と (文春文庫)
杉原 美津子
文藝春秋



「夫・荘六の最期を支えて」講談社 (2009/8/6)
“なぜ、これほど凄まじい介護ができたのか?” 1980年新宿バス放火事件被害者
の著者。苦難を乗り越え、伴侶の認知症介護と向き合った。
※映画のなかで結婚した人です。
夫・荘六の最期を支えて (介護ライブラリー)
杉原 美津子
講談社



さらに、2010.4.2.に続編とも思えるこんな本もありました。そのうち読もうかな。
ふたたび、生きて、愛して、考えたこと
杉原 美津子
トランスビュー



(g原作本の感想は、以下のブログ参照)
「生きてみたい、もう一度 新宿バス放火事件」これは運命なのか?

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