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もっきぃの映画館でみよう(もっきぃの映画館で見よう)

年間100本の劇場鑑賞、音声ガイドもやってました。そんな話題をきままに書きます。ネタバレもありますのでご注意を。

ビデオ鑑賞『真由美』 事実というよりプロパガンダ、違和感の残る金賢姫像

2009-11-03 23:46:43 | 実在する人
タイトル:真由美 政治犯・金賢姫 犯罪史上衝撃の大韓航空858便爆破事件
作品/韓国1990年製作、日本語吹き替え版93分(韓国版は110分)
英語のタイトル:Mayumi:Virgin Terrorist
ビデオ鑑賞日時:2009年11月2日
私の満足度:65% 
オススメ度:50%

【序】
今年の3月、テレビで久しぶりに金賢姫(キム・ヒョンヒ)を見た。
公の場に姿を現すのは12年ぶりという。かつては、大きなものを
背負っていて耐える表情が印象的であったが、今回は自ら激しく主張している
という話し方に、新鮮なものを感じて、昔のビデオを取り出した。

もう22年も前の話。私が最も衝撃を受けたニュースのシーンのひとつが 
1987.12.15自殺防止用マスクとテープで口を覆われ、両脇を抱えられて
タラップを降りる金賢姫の姿であった。いま風の言葉で言えば、美人すぎる
テロリストである。韓国大統領選挙前日に韓国移送というのもできすぎで、
私は金賢姫は事件後に生きて捕まる役割だったのではないかと思った。
だから、映画を見る目もゆがんでいるかもしれないが、とにかく興味の
ある事件だったので、1997年ごろにレンタルでみつけて見て、その後
ヤフーのオークションで買い求めてもっていたのを、久々に見た。
(韓国での上映は1990年、日本ではTBSで放送されたそうです。)

【ストーリー:ビデオのパッケージを要約改訂】
北朝鮮工作員の金賢姫は金勝一(キム・スンイル)と共に、日本人父娘になりすまし
大韓航空機858便を爆破するよう命令を受ける。ソウル・オリンピックを来年に控え、
韓国の威信を失墜させるために。1987年11月29日、運命の時!大韓航空機858便は
115人の命と共に空中爆破した!
 日本人名、蜂谷真由美を名乗っていた金賢姫はソウルに移送され韓国政府から
保護されながら取り調べを受ける。長い心の葛藤の末自白するが、それは金賢姫に
とって、苦難の日々の始まりにすぎなかった。

【大信田礼子が、恩恵役で出演】
物語は、ほとんど時系列に沿って展開されますが、日本人化教育のここだけは
逆行して、爆破の使命を受けたあとに受けたこととして挿入されている。

『ごめんください』
朱色の着物を着た金賢姫が廊下で膝をついて両手で障子の戸を開ける
『失礼します』
と、手をついてお辞儀。
和室のなかに入り、再び座って戸をしめ、座布団の上に座る。
向かいにほほえんでいる先生役の大信田礼子。
『だいぶ慣れてきわわね。でも、言ったでしょ。敷居を踏んじゃいけないって。
覚えといてね。』
『はい。』
『じゃ。次、行きましょう。』

わずか、1分。大信田礼子というとセクシーな歌手とのイメージがあったのですが、
もともと役者さんでいまも舞台女優さんなんですね。登場シーンはここだけでした。

【感想・ネタバレあり】
金賢姫が爆破命令を受けたところから爆破(機内の映像もあり)、さらに
逮捕、自白、裁判まで、うまくまとまっているなあとは思うのですが、
いかんせん緊張感に欠けます。日本語吹替だからか、折角偽装日本人だったり
中国人のふりをしたり、北朝鮮人らしさをだしたりという見せ場が、見せ場に
なっておらず。金賢姫がとても弱い女性として描かれていることに違和感を
もちました。

例えば、金賢姫が病院のベッドから移送されるときに
「もしかして南へ!?嫌!いや~!嫌!嫌!嫌!」と露骨に顔をひきつらせて
抵抗するのですが、工作員がそんなこと言うのかなあ。酒井法子が、尿検査は
嫌だとか、騒がれるので今釈放は嫌だとか言っていたのを思い出しました。
あれは、アイドルらしいなあと思ったのですが。

また、金賢姫は韓国に移送されてからたった1週間でスパイだと告白して
しまうのですが韓国の捜査官は
「ごく普通の人間として目覚めさせることが大事だと思う。」
「じっくりと心の傷をいやして同じ民族であることをわからせるんだ。」
などと言うとてもできすぎた"よいひと"。

突っ込みどころは多いのですが特に、クリスマス前のソウル市街に、
金賢姫が連れていかれるところ。赤マフラに青ジャケットで手錠も腰紐もなし。
捜査官と街中を歩くのですが逃げられたらどうするんでしょう。
金賢姫著『いま、女として』で該当箇所をみてみました。
『自動車が信号待ちしている間、町の露天商を見て私は衝撃を受けた。私は北で
南朝鮮では最下層階級に属するのが露天商だと聞いていた。その下層階級の
露天商が売っているものが、私の視線を釘付けにした。高級時計を並べて売って
いるかと思うと、高級な道具、服、靴などを売っている露天商もいた。』と
書いてある。車のなかから高級かどうかわかるんかいなという突っ込みは
置いといて、自動車から降りた様子はない、本の方がリアリティがあって
説得力があるなあと思う。

告白直前のところも映画では、
金賢姫「父と母と弟たちが、私が自白すればみんな殺されてしまいます。
約束してください 秘密にすると。」
捜査官「難しい問題だな、よし考えとく。」という軽いノリにもかかわらず、
しゃべっちゃうんですね。あ~そんなに簡単に言っちゃっていいの?
と思ってしまいました。

いちばん印象に残ったのは、終盤の裁判所のシーン。
周辺道路を黒塗りの車でやってくるのですが、『殺せ!』『息子を返せ!』と
罵倒が浴びせる人の山。『そんな女を裁くことはないぞ!』『死刑だ!』という
なかを弱々しく裁判所へ入って生きます。裁判官と対峙して座っている金賢姫の
後ろには、2mぐらいの高さの透明な塀があり、その後ろには立ち見も含めて
三百人ぐらいの傍聴人。

裁判長の『被告の名前を述べてください』の言葉ではじまるのですが、、、

『裁判長!なぜそんな奴に敬語を使うんですか!』
『そうだ!人殺しに敬語を使うな!』
『どうして殺人鬼の見方をするんだ!』
『そんな女に丁寧な口をきくのだけはやめてください!』

と傍聴席から叫ぶもの、物を投げるものがいて、退廷させられるなど
騒然とした雰囲気が伝わってきました。敬語を使って裁判長が非難されるとは
びっくり。裁判所から帰りの車のなかで金賢姫は、泣き出して、女捜査官に
抱きかかえられるようにして、再び罵倒を浴びせる群集のなかを進んで
行きます。白装束のおばさんが車の前に飛び出してきて『私を轢いていけ!!』と
車の前に寝そべって、警官?にひきずって道路わきに連れて行かれたりもします。
混乱のなか、車のなかで取り乱し暴れる金賢姫。
すると、捜査官が『彼女は飛行機が爆破されたところを見ていなかった、
でも遺族の悲しみでやっと自分の犯した罪を知ったんだ』と全てを見通して
いるかのような発言。韓国関係のひとは、てきぱきと仕事をするいい人ばかり、
金賢姫は洗脳された人で、北朝鮮が悪い!!ということを広めるために
事件から2年半という短い期間でで映画化された、政治色の強い映画という
感じをうけました。

監督:申相玉は、一時期北朝鮮に拉致され(北は[亡命]と主張)、そこで映画を撮るも、
1986年オーストリアのアメリカ大使館駆け込んで脱出。87年に北朝鮮での体験記
『闇からの谺』を出版した人。どこまで本当かは別として、とてもドラマチックで、
できることならそちらを映画化してほしかった。(2006年になくなられました。)

追記:ほぼラストで『私日本語話せません』という意味不明のセリフがでたり
日本語訳は、やや乱れた感あり。


以下、ほとんど自分のためのメモですが、経過をまとめてみました。
【金賢姫関連年表】敬称略
1961.01.27 生まれる。父は外交官でキューバで数年過ごす。
1978.06.(田口八重子拉致。横田めぐみは前年)
1980.01.07(「アベック3組謎の蒸発事件」と報道。サンケイ新聞)
1980.平壌外語大日本語科在学中に、工作員として選抜される。
1981.07-83.03 日本人化教育
1987.11.29 (大韓航空858便115名と共に消息を絶つ)
1987.12.01 バーレーン空港で、自殺をはかる。一緒にいた男性は死亡。
1987.12.09 (墜落現場捜査撤収)
1987.12.15 自殺防止用マスクにテープで口を覆われ、両脇を抱えられて
      タラップを降りる。
1987.12.16(韓国大統領選挙、ノ・テウ当選、金大中落選)
1988.01.15 記者会見。
『私は、北朝鮮の特殊工作員で、ソウルオリンピックを妨害するために
大韓航空機を爆破しました』『私が日本人教育を受けた李恩恵という女性は、
北朝鮮によって1978年に拉致されて来た日本女性です』
1988.01.17(オリンピック参加申込み締め切り)
1988.01.20( アメリカが北朝鮮をテロ支援国家に指定)
1990.03.27 最高裁死刑確定 04.12特赦
1990.(映画『真由美』製作)
1991.著書『いま、女として』発行
1991.05.15(警視庁、李恩恵は田口八重子と酷似と発表)
1992.著書『愛を感じるとき』発行
1994.ビデオ『金賢姫 私と北朝鮮』に出演
1995.著書『忘れられない女(ひと)-李恩恵先生との二十ヵ月』発行
1996.ビデオ『金賢姫 北朝鮮を語る』に出演
1997.12.28 結婚 後に長男出産、離婚との報道もあり。 
1998.(金大中政権誕生)以後、10年親北政権の下、逃亡生活?
2002.09.17 (小泉訪朝。「5人生存8人死亡」=>10.15帰国)
2003.(事件の疑惑をあつかった小説がベストセラー・放送は高視聴率)
2009.03.11 田口八重子の兄・息子と対面。12年ぶりの公の場。

注)途中にビデオとあるのは、金賢姫の解説とともに、北朝鮮のテレビ放送を
  紹介するもの。1995年のマスゲームでは貴賓席に、アントニオ猪木、
  モハメッド・アリ、リック・フレアーがいるのがちらりと写ります。 


※ビデオ&事件つづきというわけでもないのですが、今、見たいなあと思っている
作品がありまして新藤兼人監督の『絞殺』。1977年に東京の超進学校に通う息子の
家庭内暴力が激しくなり父親が「絞殺」してしまうという実話に基づいているという。
昨日ブックオフでみつけた本田勝一編『子供たちの復讐』で知りました。DVDは
なく、ツヤタに聞いてもレンタル/販売ともにないとのこと。ヤフーのオークション
では1200円、1800円、3000円とありました。うーん、あわてて買うのはやめましょう。

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