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殺すには惜しいが

2005-07-31 06:40:36 | 十八史略を読む
十八史略を読む-42 戦国の七雄-2 趙 その4 殺すには惜しいが
「十八史略:徳間書店発行、丸山松幸、西野広祥編訳、1987年7月九刷」から

殺された知伯には予譲(よじょう)という臣下がいた。予譲は知伯の仇を討とうと思い、囚人になりすまして、襄子の館にまぎれこんだ。

厠の壁を塗りながら、隠し持った短剣で機会があれば襄子を刺そうとした。まもなく襄子がやって来た。が、襄子は何となく胸騒ぎを覚え、当たりを確かめさすと、予譲が見つかった。

襄子は予譲を詰問した。「おまえはかつて范(はん)氏、中行(ちゅうこう)氏に仕えた男でそれを滅ぼしたのは知伯だ。おまえはその仇を討たぬばかりか、逆に誓いをたてて知伯に仕えた。知伯が滅んだときだけなぜ仇討ちに執念を燃やすのか」

予譲は答えた。「范氏、中行氏に仕えたことは仕えたが、その待遇は十人並みだった。だから十人並みに報いたまでだ。それに対し知伯は私を国士として遇してくれた。だから国士として報いるのだ」

これを聞いた襄子は「この男は義士だ。許してやれ。今後は自分が注意すれば良いのだから」と。

刑死を免れた予譲は、こんどは漆を体に塗って癩廟(らいびょう)に見せかけ、さらに炭を飲んで喉までつぶし、町を乞食して歩いた。妻でさえ道であってもわからぬほどであった。

ところが,友人の一人が乞食を予譲と見抜いて忠告した。「うまく襄子に仕えれば、才能があるのだからきっと傍に近づけよう。その上でめざすところを実行すれば良いではないか。何を好んで自分の身をそれほどまで苦しめるのか」

だが、予譲は「そんなやり方ができるか。臣下の礼を取りながら、その命を狙ったのでは初めから二心を抱いて仕えたことになる。確かに俺は困難な道を歩いているが、それは、後世、二心を抱いて仕えるものを恥じ入らせようと思うからだ」と答えた。

ある日、襄子の外出に当たって予譲は橋のたもとで待ち伏せした。襄子の馬が橋にさしかかったところ当たりの気配に馬が驚いて立ち上がった。

襄子が当たりを確かめさせると、はたして予譲が見つかった。襄子はやむなく予譲を殺した。

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