凡凡「趣味の玉手箱」

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酸性雨の原因となるSOXの半分は中国の影響

2005-11-10 07:48:40 | 中国関連ニュース
日本の国立環境研究所の畠山史郎大気反応研究室長と中国の環境科学研究院の研究員は3年前から中国の大気汚染に関して共同で研究を行っています。最近得られた知見では、我が国に降り注ぐ硫黄酸化物(SOX)の50%が中国から冬の季節風に乗ってやってくる影響によるものとわかったそうです。飛行機で上海や工業都市である重慶の3000m上空の空気をサンプリングして分析した結果、二酸化硫黄の濃度は最大70PPBに達し、東京のそれの10倍の濃度となっていることが判明しました。

硫黄酸化物SOXは水と反応すると亜硫酸となって雨となって日本に降り注いできます。これが酸性雨といわれるものです。要するに、我々の頭に濃度の非常に薄い硫酸が降り注いでくると考えればよいわけです。日本海側では松やナラなどの木が立ち枯れている状況も見られるようですが、酸性雨が原因の一つと考えられています。硫酸は酸性ですから、長い年月が経つ間には、湖沼や河のPHが上がって生物環境にも大きな影響がでてくると考えられます。魚が生きて行けなくなるような状況に陥る可能性が我が国でも興る可能性があって、ただ単に大気汚染の問題だけにとどまらないわけです。

中国は石炭を大量に使う国です。しかも経済成長が著しく、今後ともGDPは大幅な伸びを示すでしょう。燃料が石炭から徐々に石油や天然ガスに変換されるとしても、時間がかかります。

中国ではSOXだけでなく、窒素酸化物による汚染も同時に進んでいます。畠山室長は「大気汚染が中国に深刻な被害を与えるということを共同研究を通じて知らせることが大事」と指摘されています。本当にその通りだと思います。同時に中国側が国に環境面で相当なダメージを与えているということをデータでもって示してゆくことが必要なのでしょう。

今、畠山室長がいわれているとおり、大気汚染は国境を越えて取り組むべき課題であるし、日本ができることは中国と共同で環境対策を行うことです。日本の最先端の環境対策技術を中国にトランスファーする(もちろん有償で)ことによって、日本にビジネスチャンスも生まれる一方で、中国の大気汚染の改善に貢献し、それがひいては、日本の環境保全につながるものです。

現在の中国とのぎすぎすした関係は、こういった取り組みを地道に進めることによって、少しでも改善されることを期待するものです。

(日本経済新聞11月6日朝刊“地球号は今”から)


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