雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

リーダーを選ぶ ・ 小さな小さな物語 ( 869 )

2016-10-12 13:09:07 | 小さな小さな物語 第十五部
イギリスの国民投票の結果を受けての混乱は、なお落ち着きを見せる気配がありません。むしろ、混乱はまだ始まったばかりなのかもしれないという感さえあります。
そうした中で、イギリス保守党の次期党首を選出する選挙に、離脱派の中心人物だったという人が立候補を見送ると発表したことが大きなニュースになっています。
その理由について、幾つかの報道がなされています。まず一つは、立候補をしてもとても勝てないと読んだという見方です。残留派議員が多い保守党内では、突然離脱派となったこの人物に対して、保守党内では支持が低く勝てそうもないと判断したというもので、勝てないというのはおそらく事実でしょう。 
もう一つは、もともと残留派であったこの人物は、党内の立場、あるいは国民人気を高めるために離脱派を演じただけで、まさか離脱派が勝つとは思っていなかったので、その後の国家の運営の青写真など全く持っておらず、いわんや、EUとの困難な交渉や、国内の混乱の終息に当たるなどは勘弁してほしい、というものらしいのです。こちらは辛らつに過ぎる気もしますが、当たっているような気もします。

この人物の支持者はもちろん、残留派からも、敵前逃亡だといった非難があるようです。国民投票の選挙中に彼が訴えていた内容には、相当作為的なものもあるらしく、かき混ぜるだけかき混ぜて後は良しなに、というのであれば相当ひどい話です。
前回の当コラムと重なる部分もありますが、国家の意見を二分するような案件の国民投票、そして、多数決による意見掌握の難しさ、といったものがますます感じられてなりません。
今回のイギリスの国民投票の分析を見ても、「若者たちの残留支持の比率は高いが投票率は低い。高齢者層はその反対」といった現象を、投票しない者が悪いのだと割り切ってしまっていいのかということも考えさせられます。

それにしても、リーダーを選ぶのは難しいことだと思います。イギリスのこの人物もロンドンオリンピックを成功させた立役者だということですから、その考えに乗った国民も少なくないと思うのですが、途中で放り出されたのでは情けなくなってしまうことでしょう。
他国の話もさることながら、私たちも首都とされる街で、「政治家の金銭面の問題を強く指弾し、介護行政を自分の経験も踏まえて推進する」などという口から出まかせの主張に、圧倒的な票を投じて煮え湯を飲まされたのはつい最近のことです。
国民は、あるいは住民は、その民度の水準以上のリーダーを持つことなど出来ないというのが真実だとしても、どのように見分ければいいのでしょうか。

次の都知事選挙を廻っても、「出たいという人よりも、出てほしい人」を推薦したいと、ある党の有力者らしい人が述べていました。なかなか味がある言葉ですが、果たしてそれも優れたリーダーを選ぶ絶対条件になり得るのでしょうか。
「出たい、出たい」という人にもうさんくささがありますが、それだけの覚悟を抱いているのであれば、自ら手を挙げる人を支援したい気もします。いざ選挙になれば、全員が「我こそは」と言い出すのですから。
いずれにしても、真のリーダーとは何か、本当にそんな人物が簡単に出てくるのか、考えればきりがありませんが、無い物ねだりをするわけにもいきません。
そこで、今回の参議院選挙では、じっくりと最善と思われる人物を選んで、末永くその人物の成長を見守ることに決めました。

( 2016.07.02 )

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