雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

歴史散策  空白の時代 ( 13 )

2016-06-03 08:39:55 | 歴史散策
          『 空白の時代 ( 13 ) 』

百済との親交の端緒

神功摂政四十六年の春三月の一日、斯摩宿禰(シマノスクネ)を卓淳国(トクジュノクニ・朝鮮半島の一部らしい)に派遣した。斯摩宿禰は、どういう出自の人か分からない。
この時、卓淳王マキムカンキは斯摩宿禰に告げて、「甲子年(コウシノトシ・神功摂政四十四年を指すか?)の七月中に、百済人(クダラヒト)のクテ・ミツル・マコの三人が、わが国に至って、『百済王は、東方に日本(ヤマト)という貴国(大国といった意味か?)があることを聞いて、我らを派遣して、その貴国に親交を求めさせました。そこで、行路を探し求めて、この国に来てしまいました。もし我らを快く通行させていただくなら、我が王は、必ず深く君王(キミ)を大切に思うでしょう』と言った。そこで、クテ等に『もちろん東の方に貴国があることは聞いている。しかしながら、未だ行き来したことがなく、行き方を知らない。ただ、海路は遠く波が険しい。つまり、大船に乗ってようやく通えることが出来るくらいである。もし途中に港があるとしても、大船なしではとても行き着くことは出来まい』と伝えた。するとクテ等は、「それならば、今はとても行くことが出来ますまい。今は国に帰り、船舶を整えてのち行くことにします』と言った。そして、『もし、その貴国の使者が、この国に到来するようなことがあれば、必ずわが国にお知らせください』と言った。彼らは、このように言い残したうえで帰って行きました」と語った。

そこで、斯摩宿禰は、ただちに従者の爾波移(ニハヤ)と卓淳人のワコの二人を百済国に派遣して、その王を表敬させた。
その時、百済の肖古王(ショウコオウ)は大変喜び、手厚く遇した。そして、五色の綵絹(シミノキヌ・彩色された絹織物)を各々一匹(反物の単位で、一匹は二反か?)と角の弓、それに鉄鋌(ネリカネ・鉄の延板)四十枚を爾波移に与えた。また、宝蔵を開いて、様々な珍しい物を示して、「我が国には、多くの珍しい宝がある。貴国に献上しようと思うも、行路が分からない。志はあっても思うようにはならない。しかしながら、ちょうど今、使者に託して貢物として献上しよう」と言った。
そこで、爾波移はこの事を承って、斯摩宿禰に報告した。
そして、斯摩宿禰は、卓淳から帰還した。

     ☆   ☆   ☆
 
新羅との軋轢

神功摂政四十七年の夏四月に、百済王は、クテ・ミツル・マコを使者として貢物を届けてきた。その時、新羅国の使者もクテらと共に来朝した。
彼らの訪朝を、皇太后(オオキサキ・神功皇后)と太子誉田別尊(ヒツギノミコ ホムタワケノミコト・後の応神天皇)は大変喜ばれた。そして、「先王(仲哀天皇)が望んでおられた国の人が、今来朝した。痛ましいことだ、先王に拝謁させることが出来なかったことが」と仰せられた。群臣全てが涙を流した。

そこで、二つの国の貢物を点検した。すると、新羅の貢物は珍しい物が多かった。一方、百済の貢物は少ない上に粗末な物ばかりであった。そこでクテ等に「百済の貢物が新羅に及ばないのはどういうわけか」と尋ねた。
そうすると、「私どもは、道に迷ってしまい沙比(サヒ・地名)の新羅に着いてしまいました。すると新羅人は私どもを捕えて牢屋に監禁しました。そして、三か月たって殺そうとしました。その時、クテ等が天に向かって呪詛しました。新羅人はその呪詛を怖れて私どもを殺すのは止めました。しかし、私どもの貢物は奪い取り、新羅国の貢物としたのです。私どもは、新羅の粗末な貢物を我が国の貢物としたのです。新羅人は私どもに『もしこの事を漏らせば、帰る日にお前たちを殺す』と言うのです。そのためクテ等は怖ろしくて従うしかなかったのです。そういうことに堪えて、何とか天朝(ミカド・日本を指す)まで来ることが出来たのです」と答えた。

そこで皇太后と誉田別尊は、新羅の使者を詰問し、天神(アマツカミ)に祈って、「誰を百済に遣わして事の虚実を確かめさせ、誰を新羅に遣わしてその罪を尋問させればよいか」を尋ねられた。
天神は、「武内宿禰に計画を立てさせよ。そして、千熊長彦(チクマナガヒコ・氏姓が分からない人物、と説明されている)を使者とすれば、願い通りになるだろう」と教えた。
そこで、千熊長彦を新羅に遣わして、百済の献上物をすり替えたことを責めた。

     ☆   ☆   ☆

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