さても このごろは、昔のことが しきりに思いだされる・・・
紡績会社の寄宿舎に入って、最初のひと月くらいは夢中だった。
辛いとか苦しいとか考えている暇もなかったなあ。
それに、この会社へは姉が最近まで勤めていたので、わたしはあまりいじめられなかった。中には 意地悪な人もいて、新しく入ってきた子が泣かされることもよくあったよ。
まだ 数え年で十四や十五の子をいじめるなんてね。
ひと月ほど経って、少し慣れた頃が一番さみしかった。
夕飯が終わって、やっと自由な時間になると、途端に淋しくなってくるのよ。
寝床の中で里のことなど思い浮かべて泣くこともよくあったけれど、わたしは 夕日を見るときが一番悲しかった。
仕事の途中でトイレに立ったときなど、窓から 沈んでゆくお陽さんが見えるのよ、西の方にね・・・。ちょうど、里の方向なのよ。
そりゃあ、いま思えば、中学に入ったばかりの年なんだもの、無理もないとは思うけど、何もかも投げ出して、里へ逃げて帰ろうと思ったことが何度もあったよ。
里で それほど良い生活をしていたわけでもないはずだのに、あの懐かしさは 何だろうねぇ。
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