雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

話せば分かるのか ・ 小さな小さな物語 ( 1504 )

2022-07-25 14:44:20 | 小さな小さな物語 第二十六部

某現職の国会議員が、某元知事に対して、『ヒトラーを思い起こす』とツイッターに投稿したことが話題となっています。
さっそく、当事者ばかりでなく、ヒトラーにたとえられた側にあたる日本維新の会は、某国会議員が所属する立憲民主党に謝罪を求める会見を行っています。
問題とされるツイッターの全文を見ていませんので、また見るつもりもありませんので、本意がどういうものであったかは分かっていませんが、いかにも低俗で非常識な引用であることは間違いないでしょう。
まあ、この議員であれば、この程度の発言があっても驚きもしませんし、それほどの影響はありませんでしょう。また、ヒトラーにたとえられたお方も、この程度の発言でひるむお方でもないでしょうから、大声を出すほどのことでもないかもしれません。

電車内で優先席で横になってタバコを吸っていた男に注意した高校生が、暴行を受け重傷を負ったという痛ましい事件がありました。他の乗客は何をしていたのか、などと言った意見もあるようですが、さて、その場に自分が立ち合っていたとすれば、果たしてどのような行動を取ることが出来るのかと考えますと、何とも難しい問題です。
この男はほどなくして逮捕されていますが、「正当防衛だった」と主張しているそうですから、とても、注意したり手出しできる相手ではなかったのかも知れません。

折から、ロシアとウクライナの間が、危うげな様相になっています。ロシアは、かなり前から国境線辺りに大軍を展開させていますし、ウクライナ側も、アメリカが全面に立つかの様相を示しているなど、一地域の紛争の域を超えてしまっているようです。
現に、世界中の株式市場は動揺を見せていますし、大使館の関係者や自国民の国外退避を指示している国が出ています。
この種の対立は世界の各地で見られることです。それぞれの地域で解決に向かって話し合いが行われているのでしょうが、その多くは、軍事力を背景にしてのものが大半だということも歴然とした事実ではないでしょうか。

「話せば分かる」は、クーデターまがいの襲撃で重傷を負った政治家の言葉として紹介されることがありますが、私たちは、本当に「話せば分かる」のでしょうか。
個人的には、ぜひそうあるべきだとは思うのですが、最近では、「話せば分かる」のは、話が通じる人同士だけであって、通じ合わない相手とはいくら話し合っても通じることがない、と思えてならないのです。
国家間の同盟の条件の一つに、「価値観の共有」といったことがよく挙げられますが、つまり、「話せば分かる」関係なのかどうかということになるように思うのです。
上記に挙げましたいくつかの対立の事例は、果たして「話せば分かる」ことが出来るのか、大いに疑問を感じるものとして紹介させていただいたのですが、さて、どういう結果を見るのでしょうか。
そして、今私たちが必要としている知恵の一つは、「話しても分からぬ者同士」が分かり合う手段ではないでしょうか。

( 2022.01.26 )



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