雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

「春は名のみ」の時 ・ 小さな小さな物語 ( 1508 )

2022-07-25 14:37:52 | 小さな小さな物語 第二十六部

今年の「立春」は2月4日でしたが、私の好きなフレーズである『暦の上では春ですが』という言葉が、テレビで何度か聞かれました。この名言はまだまだ健在のようです。
立春の日は過ぎましたが、「立春の期間」となりますと、次の「雨水」の前日(2月18日)までの期間を指します。二十四節気は立春から始まり「大寒」で終りますので、『暦の上では』立春が一年の始まりともいえます。

4日に行われました北京冬期オリンピックの開会式では、二十四節気が組み込まれておりましたが、二十四節気は中国で誕生しました。
中国の戦国時代の頃といいますから、紀元前400年代から200年代の頃ですから、わが国でいえば弥生時代の終りの頃になるのでしょうか。
誕生の切っ掛けは、太陰暦の季節とのずれを補うためで、太陽の運行の一年を二十四等分させたもので、農耕文化の広がりからの必要性があったのでしょう。誕生地は中国の中原地帯といわれますから、黄河の中・下流辺りになります。二十四節気のそれぞれの意味合いも、その地方の気候に基づいていますから、わが国では違和感を感じる部分もあるわけです。

二十四節気がわが国に伝えられた時期は、今一つはっきりしませんが、奈良時代の頃には使われていたようです。おそらく、仏教文化などと共に伝えられたのでしょうが、農耕が盛んになりつつあったわが国では、貴重な季節を知る手本になったと思われます。ただ、中国の中原地帯とは気候が違いますから、必ず一致するわけはなく、特に、梅雨と台風が二十四節気には考慮されていないといわれます。
そこで、「八十八夜」とか「二百十日」といった雑節といわれるものを生み出して補完していったのでしょう。さらに、『暦の上では春ですが・・・』という名文句が生まれたのも、実際の季節感とずれがある二十四節気のお陰ということになるのかも知れません。

そして、その名文句を証明するかのように、立春と共に寒波がやって来ていて、昨日・今日あたりは日本海側を中心に広い地域で大雪になっています。ここしばらくは、『春は名のみ』という名文句も併用する必要があります。
わが家の小さな庭も、「寒がり屋の主」の意気地無しから、荒れ放題になっています。ただ、それでも、大地は季節の流れを正確に捉えているのでしょうか、わが家の庭で唯一自慢できそうなノースポールは、去年のこぼれ種から懸命に芽を出して、通路を中心に数え切れないほどの物が大分大きくなり、花もつけ始めています。そして、スイセンはすでに花をつけている物もありますが、チューリップをはじめアイリス・ユリ・ムスカリ・ヒヤシンスや名前も忘れてしまった球根たちが健気に姿を見せてくれています。
『春は名のみ』の時が今しばらく続くのでしょうが、時間は一瞬とて休むことなく進んでいることを感じさせてくれる季節でもあるようです。

( 2022.02.07 )


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