雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

心打たれるもの

2019-05-10 08:29:45 | 麗しの枕草子物語
          麗しの枕草子物語 
               心打たれるもの  


この草紙を『をかし』の文学と評される方が多いと聞きますが、私とて、しみじみと心打たれることは数多くございますわ。ただ、これ見よがしに『あはれ』を強調することが私の性に合わないだけでございます。
私が『あはれ』を感じる幾つかをあげてみましょう。

男であれ女であれ、若くて美しい人の喪服姿。
微かに聞こえてくるこおろぎの声。
卵を抱いて伏している鶏の姿。
秋深き庭の草々に、さまざまな宝玉のように露が輝いている様。
夕暮れや暁の頃に、河竹が風に吹かれて鳴っているのを、ふと目覚め一人聴いている時。
また、夜は、何につけても。
山里の雪。

でも、やはり、愛し合う若い二人が、邪魔立てする人があって思うにまかせないことほど、『あはれ』なことはございません。


(第百十四段・あはれなるもの、より)

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