雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

鬼の子哀れ

2020-06-09 08:04:27 | 麗しの枕草子物語

          麗しの枕草子物語

              鬼の子哀れ


簑虫は、とても哀れなものでございますねぇ。

簑虫は、鬼が産んだ子供ですから、「きっと親に似て、恐ろしい心を持っているはずだ」と決めつけられて、親からはみすぼらしい衣を着せられて、
「すぐに秋風が吹きますからね、その頃には迎えに来ますから、待っているのですよ」
と言い置いて、逃げて行ってしまったのです。

そうとも知らない子供は、風の音を聞き分けてか、秋も半ばの頃になりますと、
「ちちよ、ちちよ」
と、心細げに泣くのです。
いくら鬼の子とはいえ、簑虫の泣く声は何とも哀れなものでございます。


                      (第四十段 虫は・・、より)


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