雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

鶯はお馬鹿さん

2020-06-21 08:25:01 | 麗しの枕草子物語

          麗しの枕草子物語

               鶯はお馬鹿さん


鶯は、和歌ばかりでなく漢詩などでも素晴らしいものとして作られていて、声も姿もあれほど上品で可愛らしいのに、九重の内で鳴かないのは、いったいどういうつもりなのでしょうか。

そのことを初めて聞きました時には、
「まさかそのようなことはないでしょう」
と笑っていたのですが、十年ばかり宮中にお仕えしていますが、ほんとうに鳴く声を聞いたことがないのですよ。実に不思議なことなのですが、ほんとうなのです。
内裏には、竹林や紅梅もたくさんあるのですから、頻繁に通ってきてもよいはずなのに、どうしてなのでしょう。
内裏から退出した時など、貧しい民家の荒れ放題の梅の木などでは、それはそれは、うるさいほどに鳴いていますのにねぇ。

鶯は夜は鳴かないのですが、それも寝坊のような気がするのですが、今更どうすることも出来ないでしょうね。
また、夏や秋の終りになっても、年老いたしやがれ声で鳴いたりするものですから、下々の者に「虫食い」などと名付けられてしまうのですよ。あなたは、雀などとは違うのですよ、まったく・・・。

『 あらたまの 年立ちかへる 朝よりも 待たるるものは 鶯の声 』
と詠われているように、春に鳴くからこそ歌にも詩にも情緒あるものとして大切にされているのです。
それを、時も考えずに、夏や秋に、しかも年老いてまで鳴いているとは・・・。
ほんとうに鶯はお馬鹿さん。


                               (第三十八段 鳥は・・、より)


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2 コメント

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あらたまの (自閑)
2020-06-21 10:03:22
学生時代の遠い記憶でもはっきりと覚えている
なくよ(794)うぐいす平安京
とありますが、宮中では昔も鳴かなかったのは驚きました。
あらたまのの歌は、どっかで見たなあと調べたら、先週アップした和漢朗詠集鴬素性法師の歌で、先週の事も忘れてしまうのにと、ボケを感じております。
枕草子は高校の授業で勉強した時しか知らず、その時に春はあけぼのを暗唱すると言う宿題があり、今でもそらで暗唱出来ます。
人生で一度も使わない知識でも忘れず、先週の事も忘れる、人間の脳は不思議だなと思います。
又お邪魔します。
拙句
さつき闇遠い花だけ目立ちけり
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少々耳が痛いですねぇ (雅工房)
2020-06-21 18:42:39
あらたまの様
コメントありがとうございます。
記憶のことを言われますと、私も全く同様で、少々耳が痛いところです。
自分のブログは出来るだけ読み返さないようにしているのですが、それでも読み返す機会がありますと、短い間に同じようなことをくどくどと述べていることに出会います。
まあ、それだけ心に掛かっているからだ、とずうずうしく自分を納得させることにしています。
とんだ泣き言を申し上げました・・・
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