雅工房 作品集

長編小説を中心に、中短編小説・コラムなどを発表しています。

トランプ米前大統領に有罪評決

2024-05-31 18:31:57 | 日々これ好日

   『 トランプ前大統領に有罪評決 』

  トランプ前大統領をめぐる ニューヨーク州の裁判で
  陪審員12人は 起訴されている34件すべてに対して
  全員一致で 有罪評決を下した
  この後は 判事が量刑を決める審理に入る
  米国の裁判制度は わが国と大分違うようだが
  大統領経験者が 刑事事件で
  有罪評決を受けるのは 史上初だとか
  さて 接戦が噂されている
  秋の大統領選挙への 影響や如何に

               ☆☆☆ 

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若宮の誕生 ・ 望月の宴 ( 111 )

2024-05-31 07:59:43 | 望月の宴 ③

     『 若宮の誕生 ・ 望月の宴 ( 111 ) 』


さて、たいそうな大騒ぎのすえ、無事にお産をなさった。
とても広大な御邸の内に詰めている僧も俗も、上の者も下の者も、もう一つの御事がまだ終っていないので、額を地に打ちつけて祈っている様子などは、想像いただきたい。
その後産も無事にお済みになり、中宮をお寝かせなさった後は、殿(道長)をはじめとして、その辺りの多くの僧俗たちはしみじみと嬉しく、めでたいことである上に、お生まれになったのが男子でいらっしゃったので、その喜びは並大抵のものであるはずもなく、素晴らしいなどではとても及ばない。

今はすっかり安心なさって、殿も上(倫子)もご自分の御部屋にお渡りになり、御祈りに奉仕なさった人々、陰陽師や僧侶たちすべてに録をお与えになられたが、その間も、中宮の御前には年配のお産などに経験のある女房たちが伺候し、まだ若い女房たちは離れた所々で休息して横になっている。
御湯殿の儀など、その儀式はたいそう立派に行われる。そして、御臍の緒を切る儀は、殿の上(倫子)が、こうした事は仏罰を受けることになるとかねてお思いであったが(そういう俗説があったらしい。)、ただ今の嬉しさに、何もかもお忘れになってお勤めになった。
御乳付け(チツケ・初めて乳を含ませる役。乳母とは限らない。)には、有国の宰相(藤原有国。従二位参議。)の妻で、帝の御乳母である橘三位(キノサンミ・橘徳子)がお勤めになった。
御湯殿の儀なども、長年親しくお仕えになっている人をお役にお当てになった。御湯殿の儀式については、言葉にすることが出来ないほどすばらしい。

そうそう、帝(一条天皇)からは、御剣(ミハカシ・守り刀)が即刻届けられた。御使者は、頼定の中将(源頼定。正四位下、蔵人頭、左近衛中将兼美作守。)であった。その際の禄は格別の物であっただろう。実は、伊勢の御幣使(ミテグラヅカイ)もまだ帰参していなかったので、帝の使いもみだりに長居することは出来ない。(伊勢神宮に遣わされた御弊使が帰参するまでは潔斎する必要がある、ということらしい。)
女房たちはみな白装束と見受けられたが、包、袋、唐櫃など運んできて、これからの儀式に備えて衣装の準備を急いでいる。

御湯殿の儀式は酉の時(トリノトキ・午後六時前後。)に行われるとのことである。
その儀式の有様は、とても言葉で尽くせるものではない。
火をともして、中宮職の下役共が、緑の衣(六位の衣の色。)の上に白い当色(トウジキ・儀式により決められている色。出産の場合は白。)を着用して、お湯をお運び申し上げる。すべての物に白い覆いがされている。中宮(彰子)の警護の侍の長である仲信(六人部仲信)が担いで、その桶を御簾のもとに差し上げる。
中宮の御厨子所の女官二人が正装して、その桶を取入れては湯加減良くうめて、それを御瓫(ホトギ・水を入れる土器。)に入れる。十六個の御瓫である。

女房たちはみな白い装束を着用している。御湯殿で着用する湯巻(イマキ・腰に巻く白い正絹の布。)も同様である。御湯をおかけする御役は、讃岐の宰相の君(藤原豊子。道綱の娘で、讃岐守大江清通の妻。)、御迎え湯の御役(補佐役)は、大納言の君(倫子の兄弟の娘で、道長の寵愛を受けた女性、らしい。)である。
若宮は殿(道長)がお抱き申し上げている。御剣は小宰相の君(小少将の君が正しいらしい。源扶義の娘。)、虎の頭(作り物で、魔除け。)は宮内侍(ミヤノナイシ・橘良芸子、元東三条院詮子の女房。)が持って先頭に立って参上する。御弦打(オンツルウチ・鳴弦の儀。魔除けのために弓の弦を鳴らす。)は五位の者十人と六位の者十人が勤める。御文博士(オンフミハカセ・漢籍のめでたい一節を読む儀式がある。)には蔵人弁広業(ヒロナリ・藤原有国の子。文章博士。)が高欄のもとに立って、史記の第一巻を朗読する。護身の加持の役には浄土寺僧都(前権少僧都明救。延暦寺の僧。)が伺候されている。雅通の少将(源氏。従四位下右近衛少将。倫子の甥。)が撒米(ウチマキ)をして大声を挙げていて、僧都に振りかけているが、僧都が知らぬ顔をしているのが可笑しい。

女房たちの白装束がさまざまなのも、まるで墨絵のような風情であるのも奥ゆかしい。日ごろ我も我もと大騒ぎして用意していた白装束を見ると、禁色を許された者も、織物の裳にせよ唐衣にせよ、同じ白色なので、何とも見分けがつかない。禁色を許されていない者も、少し年長の者は、五重の袿に無紋の織物などの白い唐衣を着ているのも、それはそれなりに見える。
扇なども、わざとらしく華やかにはしていないが、いかにも上品ぶった様子の気配りされた古歌などが書かれていて、それがいかにも似合っている。
年若い女房たちは、刺繍や螺鈿(貝細工)を施したり、袖口に縁飾りをし、裳の縫い合わせを左右から太い銀糸でかぶせ縫いをしたり、あれこれと浮き立っている。
雪深き山を、明るい月の光りのもとで見渡したかのような様子である。とても、この様子を正しく伝えられるものではない。

     ☆   ☆   ☆

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