恩師のご著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第五章 心の曇りをとるための反省
父母の恩を知り孝養を尽くすべき
先の続き・・・
次に揚げる「父母恩重経」には、
親の無条件の愛がどういうものかが説かれております。
吾が腹から心せよ。
山より高き父の恩。海より深き母の恩。
知るこそ道の始めなり。
子を守る母のまめやかに、吾がふところを寝床とし、
かよわき腕を枕とし、骨身をけずる哀れさよ。
美しかりし若妻も、幼な子一人育つれば、
花の芳せいつしかに、衰えゆくこそ悲しけれ。
身を切る如き冬の夜も、骨さす霜の暁も、
乾ける処に子を廻し、濡れたる処に己れ臥す。
幼き者の頑ぜなく、懐汚し背を濡らす。
不浄を厭う色もなく、洗うも日に日に幾度かや。
己は寒さに凍えても、着たるを脱ぎて子を包み、
甘きは吐きて子に与え、苦きは自ら食らうなり。
幼な子乳を含むこと、百八十石を越すとかや。
まことに父母の恵みこそ、天の極まり無きが如し。
父母は吾が子のためならば、悪行作り、罪重ね、
よしや地獄に落ちるとも、少しの悔いも無きぞかし。
もし、子遠くに行くあらば、帰りてその面見るまでは、
入りても出ても子を想い、寝ても醒めても子を想う。
髪くしけずり、顔ぬぐい、衣を求め帯を買う。
美しきは皆子に与え、父母は古きを選ぶなり。
己れ生あるそのうちは、子の身に変わらんこと思い、
己れ死に行くそのあとは、子の身を守らんこと思う。
寄る年波の重なりて、いつしか頭の霜白く、
衰えませる父・母を、仰げば落つる涙かな。
ああ、有り難き父の恩。子はいかにして報ゆべき。
ああ、有り難き母の恩。子はいかにして報ずべし。