夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『つむぐもの』

2016年06月09日 | 映画(た行)
『つむぐもの』
監督:犬童一利
出演:石倉三郎,キム・コッピ,吉岡里帆,森永悠希,本多章一,
   結城貴史,広澤草,伊東愛,宇野祥平,内田慈,日野陽仁他

観た順番が前後します。
これを観たのはフリーパスの有効期限が切れた翌日、日曜日。
前日家に帰り着いたのは日付が変わろうかという頃でしたから、
お風呂に入ってなんだかんだしていたら午前2時近く。
今日は映画をパスしようかなぁと思わなくもなかったけれど、
今度は7月半ばで有効期限の切れる第七藝術劇場の招待券のことが気になりはじめ。

以前にも書いたことがありますが、
1万円を払ってナナゲイのサポートクラブ会員になると、招待券8枚がもらえます。
有効期限は1年で、その間に8回は行くはずだと思っているのですが、これがなかなか。
勢い込んで行くと、たまたまその日は特別興行で招待券使用不可だったなどということもよくあり、
昨年などは飲み仲間のお姉さま方に声をかけて使っていただきました。
今年こそ自分で使うぞと心に誓い、はや10カ月。

そんなふうに久々の十三でしたが、やっぱり好きだなぁ、この街
駐車料金も安いので車で向かい、最大料金700円のコインパーキングに駐めて、
徒歩数分のナナゲイへ。その数分間の楽しいこと。

まず、去年は見た記憶がないキャバクラのドでかい看板。
「世界No,1昼キャバクラ」。

世界の基準はなんでっか。しかも「No.1」じゃなくて「No,1」やし。
遠回りして商店街を歩いてみれば、粟おこしの専門店が美味しそう。
そのすぐ先、商店街の入り口付近にぶっ倒れているホストらしき兄ちゃん。
仰向けでぐっすりお休み中のようですが、もう朝10時近いし。
それにズボンのチャック全開やで。せめてそこは閉めようよ。
何よりそんな兄ちゃんに誰も奇異の目を向けることなく、
当たり前の光景になっているのが可笑しすぎる。

と、とても楽しい十三界隈なのでした。

アホほど長い前置きですみません。
さて、本題。

福井県、越前の和紙職人、剛生(石倉三郎)。
紙漉き一筋の人生を送ってきた彼は、素晴らしい職人ではあるが、
偏屈者ゆえ、人づきあいが皆無に近い状態。
同じ職人だった妻に先立たれてからも、誰にも頼らずに一人暮らし。

ところがある日、脳腫瘍で倒れる。
幸い手術は成功したが、半身に麻痺が残り、日常生活もままならず。
世話好きの石川(日野陽仁)がヘルパーとして連れてきたのは、
韓国人の若い娘ヨナ(キム・コッピ)。

職場でふてくされた態度ばかり取っていたヨナはクビを宣告され、
家業の手伝いもせずにひたすらごろごろ。
そんな様子を見かねた父親が、ワーキングホリデーで日本に行くことを勧めたのだ。

伝統工芸の和紙づくりに携われると聞かされてやって来たのに、
和紙の勉強なんて真っ赤な嘘。老人を住み込みで介護させられると知る。
しかも顔を合わせるなり剛生から「韓国人は帰れ」と言われてぶちキレ。

誰がクソジジイの世話なんてするものかと飛び出すが、
どこかよそへ泊まる金も韓国へ帰る金も持ち合わせていない。
剛生は剛生で誰かがいてくれないと困ることは確か。
双方仕方なく、同居の話を飲むことになるのだが……。

どちらも頑固で口も悪く、最初は衝突してばかり。
それが次第に心を通わせるようになります。
ありがちといえばありがちで、先も読めるのですが、
そこに伝統工芸や介護、日本と韓国の問題も絡んで、観る者の心を捉えます。

実際に介護の仕事に就いている人から見れば、
台詞の中にもあるように、綺麗事では済まされないにちがいありません。
だけど、ヨナのように施設入居者の笑顔を生み出すことができたら、
自分も楽しんで介護することができたら、そう思うことでしょう。

「どうして日本人は韓国人のことが嫌い?」
「同じことを日本人だって思ってるさ。
 嫌いっていうのはさ、たいていはちょっとした誤解から来るんだ」。
マッコリと日本酒を酌み交わすふたりのシーンがとてもいい。

ハリウッド大作もいいけれど、こんな作品もやっぱり好き。
笑って泣いて、心が洗い流されるようでした。

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