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『みんなの学校』

2015年07月21日 | 映画(ま行)
『みんなの学校』
監督:真鍋俊永

第七藝術劇場には2種類の会員制度があります。
シネマクラブ会員は年会費3,000円、サポートクラブ会員は年会費10,000円。
会員になればどちらも1,000円で映画鑑賞できますが、
大きく異なるのは、申し込み時に前者は劇場招待券1枚、後者は8枚もらえるということ。
そりゃ後者のほうがお得でしょうと、ここ数年サポートクラブ会員です。

更新月は7月で、招待券は「海の日」まで有効。
1年間にナナゲイに8回は絶対行くやろと思って更新したのですが、
今年はなぜだか十三にあまり足が向かず、
足が向いたときには特別興行日で招待券が使えなかったりして、
ほとんど手つかずのままここまで来てしまいました。

喜んで使ってくれそうな人に何枚か引き取ってもらい、
それでも手元にまだ2枚残っている。
これは早急に使わなくてはと、先週の日曜日、久しぶりに十三へ。

何カ月か前に上映されていて好評だったのか、今回はアンコール上映。
招待券を使いきるためではありましたが、とっても良い作品でした。

大阪市住吉区にある大阪市立大空小学校は、
地域に住んでいる子どもであれば、誰でも受け入れてくれる公立小学校。
2012年度の児童数は約220人、そのうち特別支援の対象となる児童数が30人。
他地域では暴れたりいじめに遭ったりして学校にかよえなかった児童が
わざわざ引っ越してきて大空に転入するのもよくあること。

普通の小学校であれば、特別支援対象児童は学年に1人か2人。
だけど大空の場合、その何倍もの数の特別支援対象児童がいるのです。
教職員は通常のルールによって加配されていますから、
地域住民や学生ボランティア、保護者の支援が必須。
すべての子どもの学習する権利を守るという理念を持ち、
子どもたちに課すたったひとつのルールは、
「自分がされて嫌なことは人にしない、言わない」。

学生のころ、知的障害児何十名かのキャンプに行ったことがあります。
子ども1名につきリーダー1名もしくは2名。
マンツーマン以上でも大変だったのですから、
小学校でこんなことができるのか疑いつつ観はじめました。

ごく普通の小学校と同じように、クラスが分かれていて担任の先生がいる。
けれど、「このクラスはこの先生だけで」ということではなく、
常に子どもたち全員の情報を共有しています。
それは、決して先生ひとりひとりの責任を軽くするためではありません。

別の小学校から転校してきたセイちゃんことセイシロウは、
これまで在席した学校では2時間を過ごすのが限界でした。
転校してきてからも「大空を引退します」が口癖で、たびたび逃亡を計画。
しかし、みんなが自分にまとわりつくのは自分をいじめようとしているわけではない、
自分と友だちになりたいと思っているだけだと理解してからは、落ち着きが見えはじめました。
彼のお母さんが言うには、これまでは学校からすぐに帰ってきていたから、
鉛筆の先は尖ったまま、上履きも真っ白、
ランドセルの中は先生が整えてくれるからいつもピシッと綺麗でした。
今は真っ黒な上履きを洗ったり、めちゃくちゃなランドセルの中を見たりするのが楽しいと。

両親が早朝から働きに出ているために起こしてもらえず、遅刻ばかりのカズキ。
いわゆる不良で近所から怖がられ疎まれていた彼ですが、
大空では彼が登校していないと知るや、誰かがチャリを飛ばして迎えに行きます。
すぐキレる問題児との申し送りつきで他校からやってきたユヅキも、
なぜ自分が腹を立てたのかを考えて説明できるようになります。

圧巻は運動会で、大空では特別支援対象児童を含めて全員が走る。
あっち向いたりこっち向いたりする子どもも多いなか、
どうやったら走れるか、バトンが渡せるか、自分たちで考えるねんでと校長先生。

なんで給料上がらんのやろと笑う先生たち。
実際のところ、それがいちばんの問題だと思います。
こんな学校にしたい、あれもこれもできたら。
そう思ってはいても、資金面で難しかったり、
相応の給料が出なかったりすれば、続けていくのは難しい。
こんなふうに「やり直せる」学校が増えればいいのになぁ。

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