夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『家へ帰ろう』

2019年01月29日 | 映画(あ行)
『家へ帰ろう』(原題:El Ultimo Traje)
監督:パブロ・ソラルス
出演:ミゲル・アンヘル・ソラ,アンヘラ・モリーナ,オルガ・ボラズ,
   ナタリア・ベルベケ,マルティン・ピロヤンスキー,ユリア・ベーアホルト他

週に一度は『ボヘミアン・ラプソディ』を観たくなっているところ、
なんぼなんでももうそろそろ「いろいろ観る」モードに戻らなければと、
気になっていた本作をシネ・リーブル梅田で観ることに。

スペイン/アルゼンチン作品。今年初泣き映画となりました。

アルゼンチン・ブエノスアイレスで一人暮らしのユダヤ人の老人アブラハム。
子どもや孫をたくさん授かったものの、誰もアブラハムを引き取る気はない。
家を売却してアブラハムは老人ホームに送り込まれる予定。
しかも壊疽しかけている右脚をまもなく切断されてしまうことになっている。

今日は最後の日ということで、家族が集まって記念撮影。
長年暮らした家と別れを惜しみたいからと、明朝の迎えを頼んで家族を帰す。

皆が帰ってから、アブラハムはこっそり出かける準備をする。
実は老人ホームに入るつもりなどなく、ポーランドに行くと決めていたのだ。
第二次世界大戦中に彼をかばってくれた親友がまだそこにいるはず。
有り金全部と親友に渡すためのスーツ一着を携え、
70年前の約束を果たすために家を出るアブラハム。

しかし旅は前途多難。空港では税関で引っかかる。
そこをクリアしたらポーランドまでは列車で。
列車の出発時間まで近くの宿で休憩するつもりが寝過ごすわ、
起きて食事に行っている間に宿に泥棒が入って金を盗まれるわ。
マドリードにいる唯一疎遠だった娘に連絡を取り、金を融通してもらうしかなく……。

登場人物がみんな味があって素敵です。
飛行機内で隣席に座る若者レオナルド、宿の女主人マリア、
看護師ゴーシャとのやりとりは特に楽しい。

ホロコーストを生き延びた人の話は巷に溢れかえっているけれど、
語り継ぐことが途切れてはいけないものだと思います。

ポーランドへ行くためにドイツの地を一瞬でも踏みたくないアブラハムは、
ドイツ人女性の助けを強く拒みます。
でも、ドイツ人みんなが悪いわけじゃない。
敵対するさまざまな国、その国の人だというだけで憎むのはまちがっている。
そのことに気づいていてもなかなか許せなくしてしまうのが戦争なのでしょう。

死を考える年齢になったら、思い残すことはできるだけなくしたい。
そうじゃなきゃ、死にきれない。

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