♪ 香澄ちゃんの汗は、 永遠に！

夕方のゆうパック便に載せるべく、香澄ちゃんの足裏の汗の滲みこんだ小砂利を小包に作る。

‘０７年の、金つなぎ・熊野大花火を、香澄ちゃん夫妻が楽しんでおられた姿が甦る。
香澄ちゃんは手遅れの家族性肝がんを病んでおられ、「この年を越せないだろう」と夫君はＤｒから告知を受けておられた。

そんな状況を知ってか知らずか明るい笑顔の香澄ちゃんは、夫君の優しいサポートと病友がたの力強い励ましに守られ、この夜の見事な花火を楽しまれた。

金つなぎの会の観覧席は、毎年有難くも本部席間近のブルーシートだ。
香澄ちゃんは一番前に座を占め、寝転んだり座ったり、写メを撮ったりして、本当に楽しそうだった。

波打ち際に吹く風は涼しかったけれど、花火に夢中の私たちは汗びっしょり。
「暑いわぁ！」
「暑いねぇ！」

香澄ちゃんは、「足が熱いですぅ」と言って、ブルーシートから両足を出して小砂利の上に置いた。
「ひんやりして涼しい…」と言い、「小石が汗を吸ってくれるわ」と笑顔を見せた。

「あなたの汗の滲みこんだこの砂利を、まおちゃんに届けてあげるね♪」と私は言い、香澄ちゃんは「うれしい…♪」と喜んだ。

それからわずか１か月半あまり、秋色が深まるころ。
香澄ちゃんは、逝友の待つあの世のひとになってしまわれた。
‘０７年１０月５日の未明だった。

その日のＷｅｂ日記に、私は次のように記している。

前日、定期検診に出向いたＮＴＴ病院で、ご主人からの「香澄ちゃんが、もう、ダメですっ」と悲痛なＴＥＬを受け、聞いてしまったからには捨て置けない。

一緒に行ってくれるという竹内理事と、ＪＲを乗り継いで八尾市民病院に向かった。

腹水が溜まり、痛みを訴えつつもシャープな受け答えをする香澄ちゃんに、「…わぁ、来てくれた～」　と手を握って喜ばれた金つなぎの両人、しんどいけれど、来て良かった！

容態が急変したのは、明け方だったそうだ。
５日早朝の連絡でそれを知らされた。

家族性大腸ポリポーシスからの肝転移ほか、全身を蔽う痛苦に毅然として耐えて、ほんとうに良く頑張られた。

そのころ制作中だった機関紙に、彼女の様子を記事にしている。
「名前も顔も、出すのＯＫですよ。　それで、誰かのお役に立てるなら…」
快活に言ってくれた生前の姿が蘇る。

車中で校正したゲラを見せたら、ご自分の記事を読んでとても喜んでくれた。
「来年は、娘も連れて親子３人で絶対に行きます」と声を弾ませておられた。

２８歳、１児の母。　
夫と愛娘を残して逝かれる無念は、計り知れないものがある。

けれど香澄ちゃん！、ＯＫ、ＯＫ！　大丈夫だよ。
金つなぎの皆さんが、あなたのご家族を応援していますよ。

香澄ちゃん！
きっと、忘れないから、ねっ！

翌‘０８年には、夫君と一人娘のまおちゃんが熊野花火に参加され、香澄ちゃんを偲び、併せて逝友の鎮魂と生友の安寧を祈ってくださった。

そんな熊野灘の小砂利は我が家のお仏壇の前にうず高く積まれたお供えの品に混じって、２年あまり静まっていた。
年末の大掃除で改めて小砂利を確かめ、短くも確かに終わった香澄ちゃんとご遺族の闘病生活に思いを馳せた。

昨年末は、随分と片付け＆掃除に時間を割いたせいで、香澄ちゃんの小砂利もそろそろご遺族にお返しする時がきたものと納得し、夫君に連絡をとったのだった。

ところが。
携帯電話からは、「現在、使われておりません…」との応答が返ってきた。
思いついて、「香澄ちゃん♪」と表記した番号にかけ直したら、「はい、…」と懐かしい夫君の声が聞こえてきた。

「あぁ、まだ、再婚しておられないのね。　ではでは、香澄ちゃんの汗を吸った小砂利をお届けしましょうか？」

まさか。
小砂利が汗を吸うワケなど金輪際あるはずなどないのであるが、私は大まじめにそのように言い、夫君も「そうですか、ぜひ、送ってください！」と喜ばれた。

生前の香澄ちゃんが、花火の立体オーナメントをくださっていた、その裏面に几帳面な字で金つなぎと出会えた喜びが綴られている。
居間のテレビの上に飾っていたが、まおちゃんにママの書いた字を見せてあげたくて同装した。

満さん、まおちゃん。
香澄ちゃんの汗は永遠ですよ♪
この世の２８年間の最後のシーンで彼女の流した汗は、永遠にあなた方のものですよ♪


満さん、まおちゃん♪
頑張って、香澄ちゃんの分も楽しく幸せに、生きてくださいね。

それが、香澄ちゃんの一番喜ばれることだから！