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第37回「田舎でロックンロール」

2015年01月27日 00時01分00秒 | アーカイブス:出版物・印刷物
奥田英朗 2014年10月発売 角川書店 \1200

最近では、新刊の単行本は総じて2000円前後、文庫でさえ1000円前後するので慎重に選ばなくてはならない。
これはレコード・コレクターズ2015年1月号のブック・レビューで紹介されて初めて知った“ロックエッセイ”である。(&短編が1編)
詳細は省くが直木賞作家でもある著者の作品は、ハードな展開のエンタメから、市井の人たちや若者を扱った作品まで幅広く描き、決して分かりにくい文体ではなく一気読みにはもってこいである。

この本は、けっして田舎でロックを演奏する若者を扱った小説ではなく、氏の中学から高校までのロック体験を綴った“体験記”である。
1959年生まれだから年下だが自分とは、ほぼ同年代といってよい。
決定的な違いは、東京の真ん中でロックに接してきた自分と、岐阜県の小都市で悶々としながらもロックに目覚めて行ったことの地域格差くらいで、あとはほとんど「ある!ある!」の世界なので一気に40数年前の自分に戻っているのだ。

本書に出てくる単語でだいたい分かるでしょう。「ラジオ」「エアチェック」「ステレオ購入」「ヤング・ミュージック・ショー」「サウンド・オブ・ャbプス」(NHK-FM)「スクリーン」「ミュージック・ライフ」「ニューミュージック・マガジン」「フィルム・コンサート」などなど。一部で出てくるが、東京や京都育ちだったら「ロック喫茶」(入り浸り体験)がもう少し加わっただろうね。

初め行ったコンサートが、クイーン。その他ロリー・ギャラガー・デイヴ・メイソン、BTO、レインボー、エリック・クラプトン、サンタナなど、ほとんどが愛知県体育館と名古屋公会堂ということだが、岐阜の小都市の高校生にしては東京在住者並み、それ以上のコンサート参戦ぶりには驚かされる。LPレコードも高校時代にすでに100枚は所有していたようだ。

ハードロック好きブログ読者の皆さんに、私も武道館で共有した、レインボー初来日の項を少し抜粋してみましょう。

「76年の12月、レインボーが初来日した。久々にうおーっ。オクダ少年のテンションは上がった。
ハード・ロックは卒業したんじゃないのかって?いえいえ、中学時代は散々お世話になったリッチー・ブラックモアだもの。わたしにとっては「いざ鎌倉」駆けつけなければ男がすたる。このとき、わたしはチケット入手で裏技を使った。まともにプレイガイドに行ってもよい席は買えない。
だからわざと売り切れるのを待って、会場の当日券窓口に並んだのである。
仕組みはこうだ。招聘元は、前売りでは2階席の最前列を売らない。それは熱狂した観客が欄干から1階に落ちるのを恐れていたからである。
チケットが売り切れなかった場合は、シーツが被され、デッド・エリアとして人を入れない。ただし商売なので、売り切れたら「当日券アリ」として売り出す。
当日券で入る客は「あるので観ておくか」という心に余裕のある客なので、最前列で騒ぐこともないだろう。という招聘元の読みなのだ。
だから窓口で30番目ぐらいまで並べば、2階最前列が当日券で手に入る。ただし遅れると立ち見になる。この裏技はレコード店のアルバイト学生が教えてくれた。
レインボーなら売り切れるに決まっている。そう判断し、賭けたら、当たったのだ。(略)
レインボーの初来日公演(注:名古屋市公会堂)は、それは凄まじい大音量で会場を揺るがす大ハードロック大会であった。
このときリッチーは31歳。まだ植毛以前で、髪を振り乱し、元気一杯にステージを動き回っていた。
ロニー・ジェイムス・ディオもコージー・パウエルも全盛期。何かの格闘技を観ているような、そんな錯覚を起こしたほどの迫力でした。
客席も1階は戦場のような有様だった。(略)
アンコール曲が始まると、私の目はリッチーに釘付けになった。歌があって、ギター・ソロがあって・・・。
そのとき、キーボードにスャbトライトが当たると、闇の中、リッチーはするするとステージの袖に引っ込んだ。
そしてアンプの陰でローディから(たぶん安物の)ギターを受け取ると、肩に鰍ッ替え、再びステージ中央に歩み出る。
スャbト・ライトがリッチーに切り替わる。床にたたきつける破壊パフォーマンスが始まった。(略)
レインボーは約1年後に再来日し、日本縦断ツアーを行ったが、そのときの札幌公演で、ステージに殺到した観客の一人(少女だった)が圧死するという痛ましい事故が起こった。以後警備が厳しくなり、しばらくは席で立ちあがることも許されない事態が続くこととなる。ロック・コンサートで暴れたのは、わたしたちが最後の世代となった。」

とにかく楽しめて一気に読み終える。同年代作家のロック・エッセイ本である・・・by Mr.UNIVERSE


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8 コメント

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Unknown (bass5001【仕事開始前))
2015-01-27 08:38:21
自分もつい先週土曜日バンドの人から自分と同じ年の人の書いた本だから読めばと、、、借りたばっかりで土日で読みました。最初がクイーンでBTOも見てレインボーも初来日見て・・・自分もこーしてたなぁ~とか、似たような出来事があったんだなぁ~と、なんかにやにやして。ひょっとしたら自分たちはロックを見る、聞くについては恵まれた世代もしれないと思いました。
返信する
Unknown (kazypaicy)
2015-01-27 09:11:08
チケット購入の裏技、お見事ですね♪
ぴあだと、一般発売後1週間でキャンセル席が出回ると聞き、意外と良い席が取れたことが何度かありました。
予約で購入した時は、席を確認し一喜一憂(笑)前から2列目だったり、PAスピーカーが目の前だったり。。はたまたステージ裏だったりと、その時々に想い出がありますね。
今度本屋さん行ったら買ってみようかな~(^^)
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Unknown (headstorm)
2015-01-27 09:38:20
なんかア!数行の文読んだだけで、燃えますナア…(笑)
確かに、当日券狙いは正解✌…武道館のアリーナで数回見たことあります(笑)
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Unknown (akichan!(職場より))
2015-01-27 10:45:20
僕は8歳から高校卒業までの多感な時期(笑)
今でこそ開かれてはいるが
当時ド田舎だった“君津”で育ちました。
そこでROCKに目覚めたわけですが
筆者は僕と同い年のようです。まさしく
田舎のボンズはこんなだったです。
ただ・・・僕には
コンサートに燃えるほどの根性は無く
ただひたすらレコードを買い集めまくりました。
僕もこの本、読んでみます。
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Unknown (Mr.UNIVERSE)
2015-01-27 12:38:49
訂正です。レコード・コレクターズのブック・レビュー
は、2015年1月号でした。
奥田英朗は、小説だが「東京物語」という著作があり、
主人公は、名古屋出身でキャンディーズ解散コンサート
の日に上京(行ってはいない設定)して、松田優作の
死去までの時代を描いた、このロックエッセイの続編
ともいうべき物語があります。こちらは、すでに文庫化
(集英社文庫)されており大型古書店で安価で購入も
可能なので未読の方は是非。大学中退して小さな広告
代理店で80年代を過ごした青春小説。
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Unknown (akichan!(職場より))
2015-01-27 12:43:26
昼休みに、職場近くの本屋に行って探したが
「無い」と言われた。
注文するよっか“アマ”でしょ
って感じなので、帰宅したらャ`します。

あ、それとRAINBOWのBOX SET
早くも“金払え”が来た。
今週中に届きます。楽しみ~
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Unknown (akichan!(職場より))
2015-01-28 12:47:35
本日、アマさんに送金しましたよ~
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Unknown (Mr.UNIVERSE)
2015-01-28 15:45:49
50数枚の70年代アルバム・レビューも
フムフムなるほど、と思わせてくれます。
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