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日々の暮らしのなかで

アニキと呼ばれる男

2006年09月22日 | 日記・エッセイ・コラム
独特の雰囲気を持つ男。彼はアニキと呼ばれている。

近所に住み、小さい頃からの知り合いである彼。
歩く姿やその喋り方は、一種独特な雰囲気を醸し出す。

小学生の時、集団下校での帰り道。
何かに躓いた彼は、手もつかずにそのまま前のめりに倒れ込んだ。

「おぉー! お前、何やってんねやぁー!」

異様な光景に引くモノもいたが、
まるでドリフのコントのような行動を間近で目撃出来たことに感激し、
僕は大笑いをして、彼のユニークなパフォーマンスを賛美した。

酒とカラオケと女をこよなく愛するのもアニキだ。

酒は泥酔するまで飲み続ける。楽しい酒だ。
ずっと笑顔で飲み続けるアニキであるが、
僕達はひとつの“バロメーター”を持っている。

“トイレの回数”

である。

アニキは、最初のトイレタイムは他人とさほど大差はない。

「あっ、ちょっとスミマセン」

まだまだ、紳士である。

しかし、二回目、三回目とそのインターバルは徐々に短くなって行き、

「・・・・・」

無言で立ち上がったかと思うと、トイレに向かうのである。

そして、トイレから帰ってくる度に、その“泥酔度”は上昇していく。

村の秋祭りの折には、まるで

“あやつり人形”

のように、体中の関節をフルに駆使して歩くアニキの姿に
呼吸困難で失神しないかと思うくらい、笑って苦しい時間を与えてもらった。

無事にトイレを終えたアニキの視界に入った僕達。
アニキはとびっきりの笑顔でこっちに近づいてくる。

「やめてくれ~! 助けてくれぇぇぇー!」

すでに、腹筋を傷め、毛細血管は何本も切れていただろう。
それぐらい笑った。

「アイスクリーム食べますか?」

泥酔して操り人形化していたアニキから、アイスを驕ってもらった。


消防団で、分団長のお宅にお招きに預ってお邪魔した折りには、
自転車ごと溝に突っ込んだ事もあった。

深さ1メートルちょっとだろうか。

アニキは、笑顔でしゃべりながら、突然僕達の視界から消えた。


「おぉー! お前、何やってんねやぁー!」


タイムスリップしたかのような、
デジャヴではなく、確かに以前にも言った事のある言葉で、
僕は彼を再び賛美した。


明記する事を忘れていたが、彼が何故“アニキ”と呼ばれるのか?

それは二人兄弟の“兄の方”だから。

それ以外に意味はない。


ちなみに「ばっくういんどう」の名付け親も彼である。

 


コメント
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