日々思うこと

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戦場のピアニスト

2006-08-11 | ヤワラカメの話
以前に、私の映画の好みは、イコール「音楽の好み」だということを書いたが…
先日その法則が成り立たない映画を見た…いや、見てしまった。
その名は「戦場のピアニスト」。
一部からは評価も高い映画だが、私にとっては期待はずれもいいところだった。
その理由は…

1.まず、音楽の扱いが物足りない。
結局じっくり聞ける場面は、ドイツ将校を前に弾く有名な最後のシーンだけ。
あとは「これはドキュメンタリーか…?」と思うほど、ホロコーストのシーンが延々と続く。
余計な音楽も演出も一切ない。
「そこがいい」と評価する人も、もちろんいるのだろうが、私が見たかったのは「戦争記録映画」じゃなくてただの「映画」だったのに…

2.そのホロコーストのシーンも、ただ恐怖感を煽るためにやたらと殺しまくっていただけのような気がする。
そこには一人ひとりの「人生の重さ」なんて微塵もなく、
まるで人から冷静な判断力を奪うかのように「戦争ではこんなに理不尽に殺されるんですよ~こわいですね~」という、底の浅いメッセージの押し付けしか感じられない。

そうは言いながら、実は私も見ている間じゅうずっと
「自分や家族がこんな恐ろしい目に合うのだけはゴメンだ!!」と恐怖感に押しつぶされそうになっていた。
こんなときに誰かが「戦争反対!」と叫んだら(それがいつもは軽蔑している「平和原理主義者」でも)何も考えずついていくかもしれない。あるいは逆に、「敵を皆殺しにせよ!」と過激な活動に走るか…

まあ、ちょっとした戦争擬似体験にはなったかもしれない。どんなときでも冷静さを保つことの大切さ、難しさが少しわかった気がする。
(実はちょうど北朝鮮のミサイル騒ぎの直後だったので、見た時機も悪かったのだが…)


3.そして何より「主人公に感情移入できない」。
これが致命的だった。主人公の「生きたい」という意志に裏づけが感じられないのだ。
愛する人の存在もなく、家族を見捨てることになっても一人でも生き延びようとする芸術家っているのだろうか。音楽への執着も特に感じられなかったし…
(まあ実話に基づいてるものをいろいろ言ってもしょうがないんだけど。)

生への執着といえば、極端な比較だが
「ボーン・スプレマシー」の主人公の本能的・条件反射的な生への執着は、自分で自分の人生を何とかしようとする男の強さがあったが、「戦場のピアニスト」の主人公は、ただ助けを借りまくるだけで、どんな手を使っても自分だけでも逃げ延びようとしているだけなのだ。
「助けてくれた人の娘と恋に落ちる」なんていうドラマの一つでもあれば、まだ彼の「生きたい」という意志を応援したくもなるのだが…

結局のところ、彼の「生への執着」は、「人との絆の強さ」から来るものでもなければ、「一匹狼的強さ」でもないのだ。
では何から来ているものかというと…全くわからないとしか言いようがない。