箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

動画の飛ばし再生と文書の飛ばし読み

2022年11月06日 08時59分00秒 | 教育・子育てあれこれ

いま若い世代を中心に、動画を早送りで見る人が増えています。

限られた時間で多くの動画を見ることができるので、「そうしている」という人は少なくありません。

とくに、映画の鑑賞などは、最近は早送りでしか見ないという人が増えています。

大学のオンライン授業の動画も2倍にして見れば同一時間で2度見ることができ、学習がはかどるという声が大学生から聞こえてきます。

ただ、わたし自身も大学で講義をしていますが、学生から早送りで見られていると思うと、「授業の不要な部分が多いのか」と少し残念にも思います。

また、早送り再生はいいことばかりではないように思います。

今までなら、時事問題の解説とか新しい商品の紹介ページは、人びとはふつう文字で書かれていたものを読んでいました。

ところが、今の時代は動画だけでなく文字で書かれたものまで飛ばし読みをして、「読んだ」となってしまうのです。


私は以前、学校で学校だよりなどの通信をつくっていました。

読んでもらう通信にするにはテクニックがあります。

まず、文字数が詰まっていて行間が狭い文書は、それだけで読む気がなくなります。

ですから、文字がぎっしり詰まっている通信は避けて、行間も広くとりました。

そこをクリアしたら次の段階があります。

人の視線は最初に①紙面上を左上から対角線上に動き、②反対側の右下まで動くのがふつうです。

この①→②の動きで面白くないと思ったら、人はもう読むのをやめます。だからまず「見出し」をインパクトのあるものにして、右下には効果的な人目をひきつけるような写真やイラストを挿入するなどの工夫をしていました。

(見出しは「通信のいのち」です。イラストや写真は「誌面が余ったからこのへんに入れておこう」というものではないのです。)

そうすると、人は「ちゃんと読もう」として、1行目から最後の行まで全部読んでくれます。

以上は読んでもらうための工夫であり、基本的には文字メディアの場合、読者の都合に合わせて斜め読みやとばし読みができるという長所があるのは事実です。

文字を読むことをしない人の増加は、社会全体に広がってきています。

動画の場合は、文字だけの文書よりも視覚的で、親しみやすいと言えます。

ただし、出演者の表情やジェスチャー、体の動きがついているので、その場の感情にのってしまう傾向があります。

その点、文字で書かれた文章は、感情とは関係なく客観的に情報を伝えてくれます。

文字で書かれた文章を読む習慣をなくしてしまわず、これは早送りで見る(読む)、あれは文字を一部始終ていねいに読む。

このような、両方の習慣をなくしてはならないと思います。


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