箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

中学校部活動 自治体単位で柔軟な地域移行を 

2022年06月30日 07時18分00秒 | 教育・子育てあれこれ

運動活動や文化的活動を体験できる部活動は日本での、ゆわば教育文化であるといえるでしょう。

世界には例がない、おそそらく日本独自の伝統として発展してきました。

中学校時代の思い出をだれかに問うと、体育祭や文化祭、修学旅行、臨海学舎などの学校行事のことにふれる人も多いでしょうが、部活の話をする人も多いのではないでしょうか。

それほど、部活の学校生活の中で占める位置には大きなものがあります。

全国的に言うと、全国の中学生の約7割が運動部で活動しています。

これは、日本で生涯にわたってスポーツに親しんだり、健康に過ごす素地を作っているという点で、部活動の体験は優れた教育文化であると、私は考えています。


ところが、その中学の教育文化は、多くの良心的な教員(顧問)のボランティア的,私生活を犠牲にしたかかわり(ほとんど報酬なし、休日出勤)や取り組みにより、維持・発展されてきたという内実があります。

かといって、すべての教員が今課題になっている部活動の地域移行に賛成しているのではないという現実もあります。

平素から練習に練習を重ね、地方大会や中央大会、コンクールに出場できたり、受賞したりして、暑い日も寒い日も生徒とともに時間を過ごし、生徒とともに泣いたり笑ったり喜んだりする、学校を舞台にしたドラマやヒストリーに教育的効果を見いだしている教師も多いのです。

そのような部活動の課題や効果をすべてふまえながらも、近年進められている教員の働き方改革の断行は不可欠なところまできています。

したがって、「部活動の地域移行」は方向性としては推進する必然性をもっていると私たちは認識すべきです。

地域移行は課題も多いですが、ここは子どもや保護者の意見を聞いた上で、自治体単位でていねいに移行を進めていくべきでしょう。

というのは、2017年度にスポーツ庁が運動部活動の実態調査を行いましたが、「学校から地域の活動へ移行させる」に賛成したのは、たったの7%ほどでした。

ですから、地域移行を進めるには、子どもや保護者の意見や考えに十分耳を傾ける必要があるからです。

さらには、子どもは1週間を生きて、活動をずっとしているのであり、平日の活動と休日の活動を切り分けることに無理があると現場の多くの教員は考えています。

また現状では、少子化により学校単位のチームがすでに構成できない場合は、学校と学校の「合同チーム」で大会への出場が認められ、大会が運営されています。

地域移行を段階的に進めていくなかで、民間のスポーツクラブも参入するようになり、出場団体数が増え、試合数が多くなり、大会を運営する日数が伸びたりして、会場を確保する必要も出てきて、運営側はたいへんになります。

したがって、中央がトップダウンで一律的に「地域移行」を進めていくと、末端の学校現場、地域では混乱が起きると予想されます。

ていねいに子どもや保護者の意見を聞き、自治体単位で地域の実態に沿うようなかたちで移行する方が望ましいのです。

場合によっては学校が部活の責任をもったまま、地域クラブに業務を委託するなど、教員の指導だけではカバーできない部分を外部から指導者を派遣してもらうなど、柔軟な「移行」をめざすのもいいかもしれません。


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