箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

保育者を育成する難しさ

2020年12月13日 10時24分00秒 | 教育・子育てあれこれ

人材育成(人財育成)は、どの職種、どんな職場や組織でも、マネジメントの中心になるテーマです。

私も校長時代は、自校の教職員育成に腐心した経験があり、現在も教職員の育成に広くかかわっています。

学校もICT化が進行する職場(職員室)になっています。
しかし、それでも人のチカラは大きいものです。なかでも、教育に携わる人を育てることは、とくに難しいと考えています。

組織で人を育てるということは、必要な役割を果たし、業務を遂行するための知識・技能を身につけさせ、資質を磨き、能力が高まるよう働きかけ、経験や研修の機会を提供し、支援することです。

教育関係の中でも、幼児教育や保育にかかわる人を、専門職者として育てることは、子どもが幼いぶん、学校で教員を育てるよりも難しいのでないかと、わたしは常々考えています。

一人ひとりの子どもを理解して、それぞれの子どもの意向にあうよう対応して、子どもの生活意欲を高め、さらに子ども同士の友だち関係をつくっていく援助、さらに保護者をサポートするなど、多岐にわたります。

まして、今の時代、保育の意義や役割への認識が進み、保育者への期待は高まります。

このような期待に応え、「さすが保育士」と保護者が思うような専門性をもつ保育士を育てるという組織の役割は増すばかりです。

ところが、昨今の人材不足が影響し、採用の段階で高い資質や専門性をはかることが難しくなっているという現状があります。

モノを製造する会社組織でなら、ふつうは高性能で、消費者が求める製品を、できるだけコストを抑えて作り、販売目標を実現することをめざし、従業員は各業務に必要な技能を高めることが求められます。

では、乳幼児期の子どもの育ちに携わる幼児教育・保育の現場では、どういうことが求められるのでしょうか。

保育者は日々の子どもの変化や成長から、「たくましくなったね」とか「おにいちゃん(おねえちゃん)になったね」と、子どもの育ちを肌で感じます。

卒園時には、数年間の成長の過程をふりかえり、人間の育ちの尊さに感激します。

わたしの娘のクラスがそうでした。保育所での入所式では、所長先生の話もみんながうわの空で、好き勝手に話す子、泣く子などで、騒々しかったのです。

ところが、修了証をもらうときには、ちゃんと話を聴き、大きな声でうたい、しっとりとした集団に育っていました。

学校教育に携わる私としては、保育者の偉大さに感心したことを今でも思い出します。

生涯にかかわる人格を形成する基礎を育む乳幼児期の経験は、とても奥が深く、その子の人生に影響を与えます。

感性、知的な好奇心、人への信頼、困難に出会ったときの向き合い方など、その人の人生のさまざまな場面で学んだことがあらわれます。

でも、保育者は、通常、その子の将来や人生まで見届けることはできないのです。

将来の可能性をふくめた人間の成長や育ちにかかわるという、仕事の特性が幼児教育・保育の現場での人材育成の難しさの本質だとも言えます。


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