箕面三中もと校長から〜教育関係者のつぶやき〜

2015年度から2018年度に大阪府の箕面三中の校長を務めました。おもに学校教育と子育てに関する情報をのせています。

わかりやすく話すには

2020年08月05日 06時22分00秒 | 教育・子育てあれこれ
大阪府の吉村知事の話がわかりやすいと言われています。

たしかにわかりやすいと、私も思います。

私には、中学生に対してはもちろん、大人に話す機会が多くありました。

そのときの経験を通して、吉村知事の話し方がなぜわかりやすいのかを考えました。


まず、話す文が一つずつ短いのです。

なおかつ、一つの文には、一つの意味、メッセージしか含めていません。

「感染防止は必要です」
「でも、休業で多くの飲食店が困っています」
「だから経済は止めることをできません」



これを、多くの人は一つの文に、複数の意味やメッセージを入れ込んで話そうとします。

「感染防止は必要なので、休業要請を飲食店にしましたが、それで多くのお店が困ることになりましたので、経済を止めることはやはりできないのです」

文が長くなり、聞く方もつらくなります。
結局何を言っているかわからなくなるか、最後まで聞いてなんとかわかるのです。
 
話すときの文と書いたときの文は、少し形式が異なることもあります。
でも、何らかの意味やメッセージを相手にわかりやすく伝えるという点では同じです。

文字にして書いた文書のうち、行政文書は特に長いものが多いです。

たとえば、文部科学省が今年5月15日に発出した「 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性等について」という通知文があります。

そもそも標題からして長いですが、その文書のなかに、次の一節があります。

緊急事態措置の対象から外れた地域も含め、学校における感染拡大のリスクがなくなるものではなく、引き続き万全の感染症対策を講じていただく必要がありますが、同時に、社会全体が、長期間にわたり、この新型コロナウイルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子供たちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要です。」

これは、実際のA4版の文書では、この一文で5行にわたっています。
よく読んでも伝わりにくいのです。

私は、話すときだけでなく、文書を書くときも、短文+短文で書くように心がけています。

上の文を変換してみます。

緊急事態措置に含まれなかった地域でも、学校での感染拡大のリスク がなくなるものではありません。
そこで、引き続き万全の感染症対策を講じていただく必要があります。
しかし、同時に、社会全体が、長期間にわたり、この新型コロナウイルス感染症とともに生きていかなければなりません。
この認識に立ち、子供たちの健やかな学びを保障することと感染防止の両立を図っていきます。
すなわち、両立こそが重要と捉えています。


このように、短文と短文の間に、必要に応じて接続詞をはさみます。

誰が読んでも、理解しやすいと考えます。

私は、ブログも、できるだけ短文で書くようにしています。


くわえて、吉村知事の話し方にはもう一つ特徴があります。

印象的なキャッチフレーズを最初に言い、あとで説明する。

または、説明したことを印象的なキャッチフレーズでまとめるという手法です。

たとえば「ウイルスとの共存」という言葉です。

前者は、聞き手の関心を引きつけて、「どういうことだろう」と話に注目させる効果があります。

後者は、聞いたことを最後に一つの言葉でまとめてくれるので、聞いたことを忘れないという効果があります。

私も朝礼の話で、これを使いました。



「中学生は、時には、一人になって自分を見つめることが必要です。

他人が自分を見るように、自分自身を見つめることができたら、自分の変化や成長がわかるからです。

ただし、友だちとの関係を切って、一人になってしまうのは、よくないです。

人は一人では生きられません。人とつながり、助け合って生きるからです。

このことを短い言葉で言います。しっかり聴いてください。

『孤独になっても、孤立はするな』
(繰り返すときもあります)

この言葉を覚えていてください。

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人にわかりやすく話すことは大切だと、あらためて思います。





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