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東シナ海資源の共同開発のために

2011-01-18 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.66 )

「中国が白樺(春暁)から樫(天外天)へのパイプライン建設を始めましたよ」
 05年10月6日の取材の冒頭、直近の情報だと言って、中川昭一経済産業大臣は語った。
「ですから引き延ばし策なんですよ」
 中川経産大臣の指摘しているのは、9月30日と10月1日、中国側の要請で開かれた日中外務省局長級会談のことだ。同会談で日本側は東シナ海の日中中間線をまたいで、白樺、樫、楠(断橋)、翌檜(あすなろ)(龍井)の4ガス田の共同開発など3点を求めた。中国側は「真剣に検討し、次回協議で回答する」と答えながら、着々と新たなパイプライン敷設工事を始めたのだ。白樺のガス田群の開発はいま最終段階にあり、白樺と樫を結ぶパイプラインの敷設はその仕上げの工事だ。敷設工事の開始は日中協議が形ばかりで時間稼ぎにすぎないことを示している。中国の意図は、何が何でも日本の資源を奪ってしまいたいというものだ。資源のみならず、尖閣諸島も東シナ海も、中国領にしてしまいたいというものだ。
 日本の資源のみならず、世界中の資源争奪に中国は凄じい力を注いできた。93年に石油輸入国となり、一挙に石油消費大国となった。中国は、形振り(なりふり)構わず、資源獲得に狂奔する。
 2003年、中国の石油消費は日本を抜いて米国につぐ世界第2位だった。
 05年の石油輸入量は1億3000万トンを超え、5年後の2010年には2億5800万トンに倍増する見込みだ。中国問題に詳しい評論家の宮崎正弘氏が指摘した。
「コストを度外視した資源買い漁りの背景には人民解放軍の恐怖心があります。エネルギーが不足すれば船も戦闘機も動かせません。形振り構わぬ獲得競争は経済要因に加えて、軍の意向も強いのです」
 石油、天然ガスなどを片っ端から輸入する反面、節電、節水、省エネの発想はそっくり抜け落ちているのが中国だ。老朽化した設備の漏電、漏水、エネルギーの無駄遣いも、殆どが放置されたままだ。このアンバランスの中で、中国はひたすら貪欲に資源を漁る。宮崎氏がさらに指摘した。
「2004年10月、中国は核開発疑惑のイランと700億ドルの高額で25年契約を結び天然ガスを確保しました。また日本がロシアと契約直前までいったシベリアの天然ガス鉱区を金に飽かせて奪い取りました。米国の石油会社『ユノカル』の買収に乗り出したものの米国議会の反発で断念しましたが、今度はカナダの『ペトロカザフスタン』(PK)を41・8億ドルで買収しました。インドネシア、オーストラリアでも長期の契約を結びました。スーダンでは日量50万バレルしかない鉱区まで買いました。日本の消費量が日量で530万バレルですから、いかに少ない産出量か、それさえも中国は買ったのです。中南米の全ての国、アフリカ大陸でも半数以上の国と何らかの契約を結んでいます。中東、アジア、米国など、手をのばしていないところはないのです」
 中国がコストを度外視して契約する理由のひとつに武器供与がある。代金のかわりに中国製武器を供与するのである。たとえばダルフールの虐殺で知られるスーダン政府に対しては、ミャンマー、バングラデシュなどと同様に、主として機関銃などを供与し続けている。サウジアラビアなどには1800キロの射程をもつミサイルを供与してきた。世界に武器を拡散させつつ、世界のエネルギー資源を飲み込んでいるのが中国なのだ。
 東シナ海の日本の資源を奪おうとする動きは、軍の強い意向を反映するもので、武器供与とセットで進められている地球規模での中国の資源獲得の一端である。だからこそ中国が、日本の期待する常識や良識を発揮して理想的な解決を導く可能性は極めて小さい。むしろ中川大臣の指摘のように、日中協議が時間稼ぎの場となるのは明らかだ。


 日本側の求める(東シナ海の)ガス田「共同開発」について、中国側は「真剣に検討し、次回協議で回答する」と答えながら、着々とパイプライン敷設工事を始めたのである。中国がコストを度外視して資源を買い漁る背景には、人民解放軍の恐怖心がある。また、中国は代金のかわりに中国製武器の供与も行っている、と書かれています。



 日本側が「共同開発」を求めているのは、
 日中中間線付近の油田・ガス田の場合、地下では油田・ガス田がつながっていると考えられることから、一方が(自国側の海域で)採掘を始めれば、相手側の資源をも吸い取ることになってしまう
からですが、中国側は「真剣に検討し、次回協議で回答する」と答えながら、着々とパイプライン敷設工事を始めています。これは信義にもとる行為だと言わざるを得ません。

 また、中国側は「日中中間線の日本側海域」での共同開発を求めているようで、「中国側海域」での共同開発は拒否しているもようです。これなどは、「日本側の資源はほしいが、中国側の資源は渡さない」という意志表明だと受け取ってよいでしょう。



 ところで、「日本は対中政策を変更すべきである」に引用した報道によれば、いまなお、日本側は中国との共同開発を望んでおり、中国側は「こっそり」単独開発の準備を続けているようです。

 おかしいと思いませんか?

 このような中国との共同開発に、日本はなぜ、固執するのか。それが不思議なところです。(すくなくとも東シナ海油田・ガス田共同開発に関して)中国は信頼に値しない行動をとり続けているにもかかわらず、なぜ、そのような中国と「共同開発」しようとするのでしょうか? 常識的に考えれば、日本はさっさと単独開発に踏み切るべきだということになるでしょう。

 もちろん日中それぞれが単独開発を行えば、「互いに(地下でつながっている)相手の資源を吸い取り合う」ことにもなってしまうわけですが、日本側が共同開発を求め続けているうちに、着々と中国側は準備を進め、単独開発を始めてしまうでしょう。そもそも中国側が「共同開発を拒否する」姿勢をとっているにもかかわらず、日本側が共同開発に固執するのは変だと思います。

 相手が共同開発を(実質的に)拒否しているなら、しかたがありません。互いに単独開発を行うまでのことです。



 日本側が単独開発も辞さない態度を示し始めれば、中国側も共同開発を真剣に考え始めるかもしれません。すくなくとも現状のままでは、中国側には日本側と共同開発するメリットがありません。日本を適当にいなしつつ、その間に準備を進めて中国が単独開発すれば、資源全部が手に入ります。それにもかかわらず、なぜ、中国側が態度を変え、共同開発を「真剣に検討する」と考えるのでしょうか? あり得ない話です。

 つまり日本が「本当に」共同開発に持ち込みたいなら、日本も「単独で」開発に踏み切る態度を示さなければなりません。それで中国側も共同開発に同意するなら、共同開発を行えばよいのです。もし、中国側があくまでも共同開発を拒否したり、「こっそり」単独開発したりしようとするなら、日中それぞれが単独で採掘するほかありません。



 なお、
 中国がコストを度外視して契約する理由のひとつに武器供与がある。代金のかわりに中国製武器を供与するのである。たとえばダルフールの虐殺で知られるスーダン政府に対しては、ミャンマー、バングラデシュなどと同様に、主として機関銃などを供与し続けている。サウジアラビアなどには1800キロの射程をもつミサイルを供与してきた。世界に武器を拡散させつつ、世界のエネルギー資源を飲み込んでいるのが中国なのだ。
と書かれていますが、

 このことはすなわち、「武器輸出三原則「固執」は平和国家にそぐわない」ことを意味します。社民党の福島党首は「日本製の武器が世界中の子どもたちを殺すことを望むのか。日本が『死の商人』になるのは、平和国家にそぐわない」などと述べたそうですが、これは(=福島党首の主張は)現実を見ない空論ではないでしょうか。

 武器輸出三原則は見直すべきだと思います。



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