言語空間+備忘録

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東シナ海油田・尖閣問題にみる中国の狡猾さと「本当の」日中友好

2011-01-15 | 日記
櫻井よしこ 『異形の大国 中国』 ( p.60 )

 日中外交を検証するとき、こみあげてくる憤りをおさえるのは至難の業である。そこには国益を忘れ、事勿れ主義に堕した外務官僚と幾人かの政治家の姿が見える。彼らの姿は深い吐息なしには直視できないが、現在の日中関係の惨状は日本が重ねてきた姑息な妥協の結果であると認識することが重要だ。この点を誤魔化すことなく認識しなければ、対中国外交の展望も解決も、望み得ないからだ。
 日本固有の領土である尖閣諸島とその周辺海域での日本による資源開発に中国政府が異を唱えたのは、1970年12月である。国連アジア極東経済委員会(ECAFE)が、尖閣諸島周辺海域に豊富な石油資源が埋蔵されている可能性があると発表したのは、それの約2年前の68年だった。
 60年代末から70年代初めにかけて、東シナ海で日本、台湾、韓国は共同で民間レベルの油田開発に入る合意が出来ていた。が、それを御破算にしたのが前述の中国の抗議だった。

★欺き、裏切られた歴史

 日中国交樹立の72年、田中角栄首相は尖閣諸島の領有権問題に決着をつけようとしたが、周恩来首相は領土問題に触れないほうがよいとの立場をとり、「ここで議論するのはやめよう」と日本側をいなした。
 ところが、78年4月、突然100隻以上の武装中国漁船群が尖閣諸島周辺に集まり日本の領海を侵犯し、「釣魚島は中国領土だ」と気勢をあげた。釣魚島は尖閣諸島の中国名である。中国で、漁民が勝手に武装し、集団で日本の領海を侵犯することが可能なはずもなく、そこには中国政府の意図が働いていたはずだ。が、小平はこれを「偶発的な出来事」と弁明し、「このような事件を今後は二度と起こさない」と確約した。
 それから約半年後に日中平和友好条約締結のために訪日した小平は尖閣諸島問題を「いまの世代の我々」が解決できないのならば「子々孫々」の世代がじっくり話し合って解決するのがよいとして、「尖閣諸島の領有権問題の棚上げ」を提案した。子々孫々の世代、つまり半世紀も一世紀も先までこのままでいようとの提案である。尖閣諸島は日本の領土であり、中国側の言うように棚上げする理由は、日本側には皆無である。にもかかわらず、外務省は日本の立場をまったく主張せず、中国に譲歩し巨額の政府開発援助(ODA)を与え始めた。その決断をしたのは福田赳夫首相だった。
 そして92年2月25日、突然、中国は領海法を作った。同法は尖閣諸島も南沙諸島も、西沙諸島も、その他全て中国領だと宣言する内容だった。早くも6月には東シナ海に鉱区を設定し国際入札を呼びかけた。子々孫々の世代などと言いながら、日中平和友好条約締結からわずか14年後のことだった。「棚上げ」と言い繕って時間を稼ぎ、その間に着々と調査を進め、有無を言わせぬ状況を作り上げたとみるや、中国政府は問題を棚下ろししたのだ。
 この時の首相は宮沢喜一、外相は渡辺美智雄、中国大使は橋本恕(ひろし)である。中国側の狡猾な戦略に彼らは一体どう対応したか。信じ難いことに、彼らは口頭で抗議をしたにとどまったのだ。領土領海を奪われようとする場面で、日本国は文書1枚送りつけなかったわけだ。では、日本と同じように、自国領の島々や海を奪われかかったマレーシアやベトナムなど、アジアの「小国」はこの危機にどう対応したか。彼らはいずれも毅然として文書で抗議し、中国の領海法から "自国領" を削除するよう要求した。マレーシアに至っては「たとえ敗北しても国益を守るためには戦わなければならない」との決意表明さえ行った(『中国の海洋戦略』平松茂雄著、勁草書房、12ページ)。日本の気概の決定的な欠如は、同年10月に、こんな中国との友好を深めるため、天皇、皇后両陛下の御訪中を実現させ、日本最高の外交カードを切ったことで一層際立った。


 日本の外務官僚や政治家は、国益を守ろうとせず、事勿れ主義に堕している。中国は尖閣問題の「棚上げ」を主張しておきながら、いざ自分に有利になったとみるや「棚下ろし」して日本を欺き裏切った。それにもかかわらず、日本は毅然と抗議せず、中国と友好を深めるために天皇、皇后両陛下の御訪中まで実現させている、と書かれています。



 この背景には、おそらく、日本側の「こちらが善意で接すれば、相手も善意で応えてくれる」という「思い込み」があるのではないかと思います。

 しかし、上記引用部にみられる、尖閣諸島をめぐる中国側の態度には、「狡猾さ」がみられるといってよいでしょう。つまり日本側の「善意」は通じないということです。

 したがって私は、中国に配慮するのではなく、中国に対し、毅然とした態度をとるべきではないかと思います (「南京大虐殺記念館にみる中国の態度と、日本のとるべき態度」参照 ) 。



 「狡猾さ」は普通、「意図的」に行われているので、相手が「狡猾な手段は良いことだ」と考えているかぎり、いつまで経っても「狡猾さ」は消えません。

 つまり、中国に対して日本が「譲歩」したり、「大人の態度」をとれば、いつまで経っても中国は「狡猾なまま」ということになります。中国の立場で考えれば、「狡猾な作戦がうまくいった!!」ということで、「また狡猾な作戦をとろう」ということになるでしょう。

 べつに狡猾な相手と「親しくする」必要はありません。



 「狡猾な」相手に接するには、「善意をもって相手に配慮する」という方法ではうまくいかず、なにも変わらないと思います。

 日本は中国に対して、毅然とした態度をとるべきではないかと思います。毅然とした態度をとれば、中国が怒り狂う。それでは日本が困る、という意見もありますが、

 べつに中国が怒り狂ったところで、日本が困ることはないと思います。



 私の場合、一弁(第一東京弁護士会)の湯山孝弘弁護士について、「こぐま弁護士」さんのブログにコメント書き込みをした際、「どこかの弁護士さんが」こぐま弁護士を怒鳴りつけたようですが (「こぐま弁護士を怒鳴りつけたのは弁護士ではないか」参照 ) 、

 このブログ上で、湯山孝弘弁護士について書いていても、「誰も怒鳴りつけてきません」。

 なぜ、こぐま弁護士に対しては怒鳴りつけるが、私に対しては怒鳴りつけないのか、を考えてみれば、おそらく、
  1. こぐま弁護士を怒鳴りつければ「言うことをきく」ので書き込みを削除させることができるが、
  2. 私を怒鳴りつけても「言うことをきかせられない」ので書き込みを削除させるどころか、「怒鳴りつけたこと」まで公表されてしまい、かえって困る
と、「こぐま弁護士を怒鳴りつけた弁護士さん」が考えているからではないかと思います。いまのところ、苦情も一切なく、訴えられる兆候もありません。



 同じように、中国に対して、日本が毅然とした態度をとったところで、日本が困ることはないと思います。日本は中国に対して、毅然とした態度もいとわず、日本の国益を守るべきではないかと思います。

 このような態度を日本がとってこそ、日中関係が正常化し、「本当の」日中友好が実現するのではないかと思います。



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4 コメント

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通用しない「古来からの領土」論 (四葉のクローバー)
2011-05-24 11:24:51
中国の楊外相と日本の松本外相は22日、東京都内で会談した。中国外交部の姜兪報道官は23日、会談内容について楊外相は「釣魚島と周辺の諸島は(尖閣諸島)は古来から中国固有の領土だと改めて述べた」などと紹介した。

楊外相は尖閣諸島について「中国は(同諸島に対して)議論の余地がない主権を有するとの立場だ」と述べた。松本外相は日本の立場を主張。双方が「自国領だ」と述べるにとどめた。

この中国の論理「古来からの領土」は、常識外れであり、現在の世界では通用しない。
それが、まかり通るなら。

①イタリアは「ヨーロッパ全域は、古来(ローマ帝国時代)から、イタリア固有の領土であり、議論の余地がない主権を有する。」

②モンゴルは「ユーラシア大陸の大部分は、古来(モンゴル帝国時代)から、モンゴル固有の領土であり、議論の余地がない主権を有する。」

③トルコは「中央アジアの大部分は、古来(オスマン帝国時代)から、トルコ固有の領土であり、議論の余地がない主権を有する。」

と主張するだろう。

そもそも、何世紀の世界地図が望ましいかは、国によってバラバラであり、各国が過去の最大版図を「議論の余地のない自国領土だ」などと言い出したら、地球が何個あっても、領土は足りないくらいだ。

中国の主張は、荒唐無稽としか言いようがない。









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Unknown (memo26)
2011-05-24 19:25:47
 荒唐無稽の主張であっても、核を持ち、強力な軍事力を有する国の主張であれば、「通る」可能性があります。

 日本としては、理に基づいた主張をすべきことはもちろんですが、軍事力(防衛力)を高める努力をすべきなのではないかと思います。
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勿論 (四葉のクローバー)
2011-05-24 19:41:42
軍事力も重要ですし、日本はもっと軍事力を強化すべき、と考えます。
私の今回のコメントは、「中国の主張が荒唐無稽だ」と言うことを証明する為でしたので、敢えて「軍事力」について言及しなかっただけです。
あなたが、これとは別に「軍事力」についてのテーマで、お書きになれば、コメントしたいと思います。

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Unknown (memo26)
2011-05-25 18:45:06
 わかりました。その際にはよろしくお願いいたします。
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