言語空間+備忘録

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中国の最終手段は「戦争」と「革命」

2010-11-23 | 日記
陳惠運・野村旗守 『中国は崩壊しない』 ( p.186 )

 アメリカの衰退を見て、共産党の指導部も俄然強気になった。
 〇九年二月にヨーロッパを訪問した温家宝首相は「今回の世界金融危機の原因はアメリカにある」とはっきり指摘し、「今後もひきつづき米国債を買うか否かは現在検討中である」と、アメリカに対して脅しともとれるような発言をした。
 また、ポスト胡錦濤候補の筆頭に挙げられている習近平国家副主席も同時期に南米を訪れ、メキシコ在住の華僑たちが催した歓迎パーティーで酒を飲み、舌禍事件を引き起こしている。
「中国が一三億の人口を食わせているのは、人類に対する最大の貢献だ。腹いっぱいなのは一部だけだの何だのとヒマな外国人がうるさく言っているが、余計なお世話だ。中国は革命も飢餓も輸出していないのだから、我々がとがめだてされる理由はどこにもない」
 などと、習は発言。これがメディアに乗って世界中に配信され、物議を醸した。
 これら中国首脳部の強硬発言は、共産党政府が国際社会からの非難も、そして中国経済の破綻をも、真には懼れて (おそれて) いない証 (あかし) である。この自信がどこから来るかといえば、たとえ絶体絶命の経済危機に瀕しても、中国はそれを乗りきるだけの最終手段を持っていると彼らが考えているからだ。
 それが、戦争と革命である。
 仮に現在推進中の大型公共事業がうまくいかないと判断すれば、中国は国際社会の制止を振り切ってでも人民元の大幅な切り下げに走るだろう。当然のことながら諸外国とのあいだに摩擦が生じるが、それでも中国は切り下げを断行するだろう。現在、中国政府が世界に向かって保護主義の中止を訴えているのはこのためである。
 では、それでも各国が保護主義を解除せず、輸出が伸び悩んで経済がどん詰まりに行き詰まったら、中国は次にどんな手を打つのか?
 間違いなく、戦争を仕掛ける。経済摩擦を理由に周辺国に言いがかりをつけ、地域紛争を引き起こすだろう。
 まず、狙われるのが台湾だ。
 現在の中国人民解放軍の力量からすれば、短期間での台湾併合は決して不可能ではない。圧倒的多数の国民はこれを熱烈に支持するだろう。その勢いを駈って、尖閣列島や沖縄やその周辺の諸島に手を伸ばし、日本との紛争も充分あり得るだろう。
 戦争経済はなにもアメリカの専売特許ではない。アメリカがやっていることを中国がやって何が悪い――中国人は本気でそう考えている。
 ここに巨大な需要と雇用が生まれ、経済は活性化する。当然のことながら在日米軍との小競り合いも想定されるが、中国側はさほど心配していない。米軍の近代兵器がどれほど強力であろうと、民主主義という政治システムは最終的に大量破壊兵器の使用や大規模な殺戮を実行することができない――先のイラク戦争のケースを分析して、中国側はそのことをすでに見抜いているはずだ。
 だとすれば、戦争をやって中国に損なことは何もない。少なくとも、戦禍による一〇〇万程度の人命損失は、中国にとって大きなリスクではない。
 そして、もう一つの最終手段が革命である。
 現在の共産党政権における絶対命題は、唯一つしかない。それは、一党独裁体制の恒久的な維持ということだ。
 四九年、共産主義革命によって政権奪取に成功した毛沢東は、国内の地主ら資本家の土地や財産をすべて奪って国有化し、労働者や下級農民に分け与えた。もし経済が完全に行き詰まったなら、これをもう一回やればよいというわけだ。
 現在中国に駐留する外国資本は総額一兆五〇〇〇万ドルをはるかに超え、先述のように中国国民の総預金額も二一兆元を上回った。これをすべて没収した上でふたたび鎖国してしまえば、経済問題などたちまちのうちに解決できる……。
 我々はなにも机上の空論で、荒唐無稽な仮説を弄んで (もてあそんで) いるわけではない。これは、普通の中国人が日常生活のなかで普通に思いつく、ごく普通の発想である。外国人がそれを知らないのは、普通の中国人が面と向かって外国人に言わないからだけの話に過ぎない。
 第二章で詳述した通り、現在の共産党幹部のなかには小平以来の改革解放路線で堕落腐敗した党政府に憤激し、もう一度農民と労働者による革命をやりたくてうずうずしている連中が多数存在している。蓄えのない九億農民のほとんども、四億都市住民のかなりの部分も、共産党が外国人と新富人から富を奪って分け与えてくれるというなら、これに異存のあろうはずがない。革命の支持基盤はすでにでき上がっているのだ。
 戦争か、革命か――。
 もし中国がその二者択一を迫られるときが本当に来たなら、それはそのときの党内勢力が左派に傾いているか、右派に傾いているかで決まるだろう。現在のように右派が優勢ならば躊躇なく (ちゅうちょなく) 戦争をはじめるだろうし、左派が実権を握っていたならこの機を逃さず革命を断行するはずである。


 中国は国際社会からの非難も、中国経済の破綻も、恐れていない。なぜなら、中国首脳部は中国は絶体絶命の経済危機に瀕しても、それを乗りきる最終手段があると考えているからである。それは戦争と革命である、と書かれています。



 中国が国際社会からの非難を恐れていない、というのは、中国がノーベル平和賞の受賞式への出席を、世界各国に対して「圧力をかけて」阻止しようとしているところからも、読み取れます。もちろん、先日の尖閣沖事件における対日強硬姿勢からも、それは読み取れます。

 著者によれば、中国の動きとして予測されるのは、まずは内需の拡大であり、それが失敗した場合には次の策、人民元の大幅な切り下げによる輸出拡大である。このとき、輸出拡大が不可能とあらば、中国は戦争か革命を断行する、というのですが、



 この読みは、おそらく正しいのではないかと思います。

 理由を述べます。

 第一に、内需拡大はもっとも穏健な策であり、まっさきに試みられる政策であることに、異論はないと思います。現に中国は、内需拡大を試みています。

 第二に、最終手段が戦争であるという部分も、おそらく正しいと思います。前回、世界恐慌時のデフレは、戦争によって終了しました。戦争は膨大な軍需を発生させます。需要不足は一気に解消します。また、戦争によって敵国の生産設備を破壊すれば、世界的にみて生産能力が低下することになり、この面でもデフレ (生産能力が高すぎて物余り) は終了することになります。中国は戦争をいとわない態度を示しており、いざというときには戦争がある、と中国首脳部が考えているという分析には、説得力があると思います (「台湾問題についての米中台の姿勢」参照 ) 。

 第三に、外国企業・外国人の資産を没収したうえでの革命には、外国と戦争になるかもしれないというリスクを伴いますが、中国首脳部が戦争をいとわないなら、これは革命を思いとどまる根拠にはなり得ません。

 第四に、戦争か革命に踏み切る前に、もっと穏健な策、すなわち人民元の大幅な切り下げを行う、というのも、当然といえば当然でしょう。



 日本としては、「中国経済が破綻すれば中国は崩壊する、そうなれば日本が中国に侵略される危険性が激減する」などと考えるのではなく、その逆、すなわち「中国経済が破綻すれば中国は日本を攻撃する (可能性が高まる)」と予測したうえで、対策を講じておくことが望ましいことはいうまでもありません。(あなたが上記推論には説得力がないと考える場合であっても)「最悪」を前提に考えておかなければ、いざ攻撃されたときに、大変なことになります。

 したがって、中国が強大化しようが弱体化 (=経済破綻) しようが、日本は攻撃されるかもしれない。「かもしれない」どころか、「その可能性は高い」と考えて対策を練っておくに越したことはないと思います。そしてその対策とは、日本の防衛力の強化なのではないかと思います。

 なお、「対中経済支援は日本を危険にする」と考えられる以上、「中国経済が破綻すれば日本は侵略されるかもしれないので、対中経済支援をしよう」などと考えるのは対策とはいえないと思います。

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