言語空間+備忘録

メモ (備忘録) をつけながら、私なりの言論を形成すること (言語空間) を目指しています。

「在日米軍=瓶の蓋」論

2012-02-09 | 日記
リチャード・L・アーミテージ ジョセフ・S・ナイJr 春原剛 『日米同盟 vs. 中国・北朝鮮』 ( p.170 )

春原 もうひとつ、日米同盟体制を巡る根本的な問題に触れたいと思います。それは日米同盟、あるいは在日米軍が日本の再軍備を防ぐための「瓶の蓋」であるという論についてです。

ナイ 私の観点ではそれはやや大げさに過ぎます。日本自身が再軍備、そして軍事大国になることを望んでいないからです。日本国内の世論を見ても、再軍備を望むのは少数派であり、世論の大半にそれを望む声はありません。

春原 この点も極めて心理的な部分が大きいと思います。言われるように、日本人自身の考えとして、再軍備を望まないならばいいのですが、それを米国に「得策ではない」とか、とやかく言われる筋合いはないと考える人もいるからです。米国人自身が良く使うフレーズで言わせてもらえば、「それはあなたの知ったことではない(That is none of your business)」(笑)。

アーミテージ 一時期、確かに「瓶の蓋」論は流行しました。ここではっきりと言っておきたいのですが、レーガン政権は「瓶の蓋」論に与し(くみし)ませんでした。レーガン大統領自身も我々、政権内部の人間もむしろ、日本のより多くの防衛努力を求めることを基本的な政策としていたのですから。「瓶の蓋」論はもはや、古い考え方です。同時に日本に対しても失礼な話ですよ。

春原 とはいえ、ある時期まで米国内でも日米同盟を「瓶の蓋」と見る空気が主流だったのではないですか…。

アーミテージ 共産・中国と国交正常化に踏み切る頃、確かにそうした考えはありました。しかし、一九八一年一月(のレーガン政権発足)の時点で消え去りました。その年の三月、私は国務省に出向いてマイク・アマコスト(後の駐日米大使)らと向き合い、日米同盟に関する「役割と作戦行動」のアプローチを説明しました。それをもって我々は日本を「瓶」の外へと救い出したのです。

ナイ 九〇年代半ば、中国側に日米安保体制の再確認作業について説明した際、当時の人民解放軍の総参謀長が私に「日本の軍国主義がいかに根深いものなのかあなたは理解していない」と言いました。その上で、その総参謀長は「基本的に我々はある国が海外に基地を置くことには反対しているが、(在日米軍は)その歴史的な理由(旧日本軍による中国侵出)からこれを例外扱いしている。だから、中国は在日米軍の存在を認めているのだ」と。つまり当時の中国は日本が一九三〇年代のように非常に強固な軍国主義国家になると信じていたのでしょう。
 その時、私は「自分はそうは思わない」と反論しました。「日本が中国にとって軍事的な脅威になることはない」と。同時に「日米同盟体制を堅持することが地域の安定に寄与すると思う」とも伝えました。このエピソードから言えるのは、日本の再軍備を恐れているのは米国ではなく、中国だということです。

春原 九〇年代半ばまではそうだったかもしれませんが、今の中国は日本の再軍備もあまり恐れていないのではないでしょうか。

ナイ そうかもしれませんね。

春原 キッシンジャー博士が極秘訪中後、改めて公式に訪中した際に同行した国務省のキャリア外交官であるマーシャル・グリーン国務次官補(東アジア・太平洋担当)からも生前、似たような話を聞きました。グリーン氏によると、キッシンジャー博士が周恩来・中国首相と議論をしている間、中国外交省の局長級と意見交換に臨んだら、その八割以上は「日本の軍国主義の復活をいかに阻止するか」という話題だった、と回想していました。


 「在日米軍=瓶の蓋」論 (在日米軍は日本の再軍備を防ぐための「瓶の蓋」だという考えかた) は、誤りである、と書かれています。



 今回、この話を引用しているのは、某・保守系ブログのコメント欄に、「在日米軍=瓶の蓋」論が再三登場するからです。つまり、日本の保守派の人々のなかには、「在日米軍=瓶の蓋」論を本気で信じている人がいるのです。

 自主防衛を望む人々にとっては(私も望んでいますが)、在日米軍の存在が「ある意味では」不都合なのはわかります。

 しかし、在日米軍の存在を、日本の再軍備を防ぐための「瓶の蓋」だと考えるならば、それは誤りではないかと(私は)思うのです。



 上記引用部分からは、「過去には」米国にも「瓶の蓋」論はあったが、今の米国は「瓶の蓋」論を支持していない。そのような考えかたはとっていない、ということがわかります。

 実際、「「日米同盟:未来のための変革と再編」の意義」を考えれば、現在の米国が「在日米軍=瓶の蓋」論を支持していないことは、あきらかです。



 もっとも、中国については、今回の引用によって、「在日米軍=瓶の蓋」論を支持する考えかたも根強いことがわかります。

 しかし、中国が日本の再軍備を恐れているというのは、本当でしょうか? 考えてみてください。わけですから、中国にとっては、旧日本軍の脅威は「中国の国策を実現するための口実にすぎない」と考えるのが妥当でしょう。



 つまり、いまや、誰も「在日米軍=瓶の蓋」論を支持していないわけです。

 とすれば、もはや、「在日米軍=瓶の蓋」論は存在しないも同然です。「在日米軍=瓶の蓋」論など、気にする必要はないのではないかと思います。