銀の砂時計

Elegant~美しい旋律に調和する良質な風景・生活空間を求めて

感動の映画「パンズ・ラビリンス」

2008-11-30 22:31:08 | 映像空間
今日は11月27日にWOWOWで放送された映画を観ました。
#録画していたものです

しばらく映画そのものから離れていたこともあって、この作品は全く知りませんでした。作品を知ったのは、WOWOWの番組表に出ていた写真(主役の少女オフェリアが迷宮の中で振り向くシーン)を観たことがきっかけでした。題名も内容も知らない、その作品の「その一コマ」の写真で、全てを察したような感覚を覚え、久しぶりに1枚の写真から身震いするような衝動を感じました。
「これは観なくては!」


***
「パンズ・ラビリンス」は、映画の始まりからして哀しい。
(T.T)

特にこの始まりのシーンは、2度目に観ると胸が熱くなるのではないでしょうか。2度目以降は冒頭部分だけで作品のいろいろなシーンが走馬灯のごとく回想され、この作品の持つ「重さ」が一気に襲ってきます。そしてその時、より深く作品に触れることが出来ると思います。ぜひ、1度観たら、少し時間を空けて翌日にでも観てみることをお勧めします。
#わたしは昼・夜と2回観てしまいました

さてさて、本編は主役の少女「オフェリア」の織りなすおとぎ話が、作品の主軸になっています。ただ、オフェリアの眼を通して描かれる現実の世界は凄惨かつ、あまりに切なく哀しすぎます。

オフェリアの前で展開される悲しい現実。死、孤独・・・多くの試練に向き合うオフェリアを観ていると、この作品を観ている観客でさえも、おとぎ話の中に展開される「安らぎ」が唯一の救いに思えてしまうほどです。それくらいに観る人を引き込み、強く訴えかけてくる力がある作品といえます。

スペインの内戦に関しては、ドキュメンタリー番組をみたことがあります。とても悲惨なものだったようです。その番組の悲劇的な記憶が強く残っているせいか、「パンズ・ラビリンス」から受ける衝撃はとても大きなものでした。シーンの一部は「PG-12」指定を受けるほどの、目を背けたくなるようなシーンとなっていますが、製作者側として現実を明確に表現したかったのかもしれません。


***
オフェリアが体験するおとぎ話の不思議な世界には、怖そうな怪物(?)たちが出てきます。エヴァンゲリオンに出てきそうな白い怪物も出てきたり、一瞬ドキッとしてしまうところもあります。食卓の天井を飾る恐ろしい絵、積み上げられた靴・・・おとぎ話仕立てになっている空間なのですが、どれも「現実」を想起させる繋がりがあって、とても恐ろしい。特に靴は生々しくて鳥肌が立ちました。本当に怖いシーンです。

作品中、たまらなく好きなのは、母親のお腹の中にいる弟にオフェリアがおとぎ話を聞かせるシーン。このときのスペイン語の響きが味わいがあって好きです。映画冒頭でもスペイン語での「語り」の部分がありますが、この種のシーンではスペイン語がもつ響きの美しさが引き立ちます。

音楽も美しく、なかなか良い仕上がりです。物悲しい子守歌は一度聴いたら忘れられないです。オフェリアが地下の入り口へ降りていくシーンで流れる音楽は、芥川也寸志の映画音楽的な哀愁のようなものが何となく漂っていて、いいですね。


***
映画の終わりに出てくる王宮のシーンは、華麗で美しく作られています。デザイン的にも面白い作りです。しかしその美しさゆえに、現実の世界での悲劇がピンポイントでクローズアップされることとなります。

オフェリアの表情・・・
そして観る人へ重くのしかかるもの・・・
最後に迫り来るもの・・・

作品が語りかけてくる何かを「現実」の世界で深く考えさせられる、素晴らしい作品です。
パンズ・ラビリンス 通常版 [DVD]

アミューズソフトエンタテインメント

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