銀の砂時計

Elegant~美しい旋律に調和する良質な風景・生活空間を求めて

感動の映画「パンズ・ラビリンス」-2

2008-12-01 11:46:48 | 映像空間
「パンズ・ラビリンス」について、追加で語らせてください。

<<<以下、ネタバレご注意>>>


「パンズ・ラビリンス」は内戦後のスペインという設定になっています。同じような時代設定というと、ビクトル・エリセ監督の「ミツバチのささやき」がすぐに思いつきます。

「ミツバチのささやき」は、アナという少女を主役に、静寂の空間、繊細かつ美しい映像で綴る叙情詩のような作品。幻想的とも言えるくらい美しい映像の裏には、美しさと同じくらい大きな闇があることを暗示的に示し、ドーンと奈落の底に落とされてしまうような感覚を覚えます。

アナと姉(イザベル)の会話は可愛らしくも謎めき、アナの一瞬の表情に深い意味合いを持たせたり、小学校(?)の授業シーンで朗読している詩は子供向けというには重たい内容すぎるなど、一つ一つが多くの意味を包含しています。この深い内容の織り込み方が素晴らしい作品ともいえ、とても好きな作品ですね。

そして「パンズ・ラビリンス」を観ていると、「ミツバチのささやき」が頭の中に浮かんでしまって、両者の接点を自然と探してしまっていました・・・


***
あえて接点を見つけたというのではないのですが、どうしても気になってしまうポイントがいくつもあるのが「パンズ・ラビリンス」でもあります。

○冒頭部分
車・・・主人公のもとに来るのか、あるいは主人公自身が来るのか。

○絵本・映画
絵本を読むオフェリア。映画の中で映画を観るアナ。

○父・母
ヴィダル大尉は義父になるのだけど、両作品とも父・母の関係には冷たい風を感じてしまう。

○懐中時計
大きな意味合いを持っていますね。カチカチと時計の音を強調するか、オルゴールの音を強調するかで、持ち味もかなり違ってみえます。一方の作品ではガラスが割れているし。オルゴールの音に反応するアナの表情は、特に素晴らしい。

○ヒゲそり
アナとイザベルのいたずらは可愛かったのですが、ヴィダル大尉の場合は恐ろしい空気がある。

○コーヒー
メルセデスにコーヒーが煮詰まって不味いと文句をいう大尉。「ミツバチのささやき」では父親のカップが煮詰まって吹きこぼれていました。

○妖精・精霊
その存在について、少女側から大人の女性へ問いかける。

○血
「パンズ・ラビリンス」では、場面ごとに多用されています。「ミツバチのささやき」は、イザベルのシーンで出てきますね。本質的な怖さを誘発するものとしては、イザベルのシーンのほうがスゴイと思います。子供ならやりかねないことだけど、背景にある意味合いを考えると怖いです。「パンズ・ラビリンス」の積み上がった靴なみに、怖い。

○音
寝室で聞く、響くような音。「パンズ・ラビリンス」でも足音には配慮しているように思えました。


簡単にまとめても、これだけありますね。


***
似たような時代設定ではありますが、2つの作品は全く別の作品です。しかし、全く異なる2つの作品は、作品同士が遠い場所でお互いに会話をしているように思えるのです。そこがまた面白いところでもあり、「パンズ・ラビリンス」という作品を奥深いものにしているように感じられます。

「遠くて近い」存在のようにお互いの作品が語り合い、そして観ている人に静かに語りかけてくる・・・

想いの幅を広げ、違った側面からみてみると、より深く「パンズ・ラビリンス」の世界を味わえるでしょう。


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