宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

「ブラックホール(BH)の消滅不可能定理」

2023-02-13 18:41:55 | 日記

前のページの議論では「基準慣性系に対して止まっているBHはホーキング放射を出して消え去る事はできない」という状況を確認しました。

それに対して今度は「最後の瞬間に基準慣性系に対して動いているBHの事」を考えます。



さてそれで規準慣性系の設定は生成された仮想粒子のペアの真ん中に座標原点をとれば良い事になります。(注1)

そうして通常は質量が軽くなったBHはホーキング放射を出すたびごとにその反動を受けて(=反作用を受けて)この基準慣性系に対して動き回っています。

従ってこのBHが消え去る一歩前の段階では通常はこのBHは基準慣性系に対して静止してはおらず、BHはベクトル量としての運動量P1をもつ事になります。

そうであればBHが消える前はBH+仮想粒子ペアの合計運動量はP1です。



さてそれで仮想粒子の片方がBHに飛び込んでこのBHを消し去り、他方でもう片方の仮想粒子は実粒子化し(=ホーキング放射化し)、設定された原点から飛び去りました。

それでこの場合、実粒子化したホーキング放射がもつ運動量はP2と言う事になり、BHは消えていますからこれが全てです。

さてそうなりますと、BH消滅前はBHが持つ運動量P1が全て、BH消滅後はホーキング放射が持つ運動量P2が全て、という事になります。

それで運動量保存則によればもちろんP1=P2になっていなくてはなりません。

さてそれは確率的に発生する仮想粒子ペアのなかで最後の瞬間にBHに飛び込む方の仮想粒子は正確にBHがもつ運動量P1を、そのBHが運動している進行方向とは真逆の方向に、運動量の絶対値はP1で、しかも正確にBHの中心めがけて飛び込む事が必要になります。

そのようにBHに飛び込む仮想粒子の運動量と飛び込む方向を厳密に調整することができれば、仮想粒子とBHの衝突は「完全非弾性衝突」ですから、BHの運動量をゼロにできます。

そうしてもちろん他方の実粒子化した仮想粒子の運動量P2はP1と方向も含めて正確に同じになります。

加えて実はこの時に当該BHを消し去るためには放出されるホーキング放射の持つ相対論的エネルギーは正確に消滅前のBHの持つ相対論的エネルギーと同じになっている必要があります。

さてこのように精密な調整がBHに飛びこむ仮想粒子に必要とされます。

これが運動量とエネルギーの保存則を満足させながら当該BHを消し去るための条件となります。(注2)

さあそれで、ホーキング放射の際に本当にランダムに発生する仮想粒子ペアがこの厳密な条件を満たす事が出来るのでしょうか?

当方の計算ではその可能性はゼロです。

つまりは「ランダムに発生するホーキング放射でBHが消滅する事はない」がここでの結論となるのです。



注1:生成された仮想粒子のペアはそこに必要なエネルギーが供給されれば実粒子化します。

これが「粒子の対生成」と呼ばれている現象です。

それでこの時にも運動量の保存則が満たされている事が必要になりますので、2つの生成された粒子は正確に反対方向に同じ速度をもって飛び去ります。

従ってこの2つの生成された粒子の合計運動量はゼロになっています。

さあこの時にどの座標系で見た時に運動量がゼロに見えるのでしょうか?

その答えは「基準慣性系で見た時にゼロになっている」が正解です。

したがって「生成された仮想粒子のペアの真ん中に座標原点をとる」と言う事はつまり「基準慣性系を静止系として採用した」と言う事と同義となります。



注2:加えて申し添えれば、上記の話は実はBHが持つ角運動量を無視しています。

そうして角運動量を考慮に入れますれば、BHに最後に飛び込む仮想粒子はBHが持っていた角運動量をゼロにするように、BH中心から少しずらした位置を狙って飛び込む必要があるのです。

その様にできれば当該BHの運動量、エネルギー、角運動量をそれぞれの保存則を満たす形で同時にゼロにできますからBHは消えます。(注3)

ただしこの3つの物理量のうち、いずれかがゼロにできない場合はBHは消える事ができずに残る事になります。

そうしてその残ったBHは運動量、エネルギー、角運動量はゼロではない値をもつ事になると思われます。

ちなみに従来の一般的に知られているBHの寿命式は運動量、角運動量保存則は無視しており、エネルギー保存則も非相対論的なエネルギー保存則のみを考慮している、という「不十分なもの」であります。(注4)

そうして「何故その様な扱いのBHの寿命式しか存在しなかったのか?」といいますれば「常にBHの中心に座標原点を置いていたから」が答えになります。

つまりは「どれほどホーキング放射でBHの質量が軽くなっても、ホーキング放射を出す事でその軽くなったBHは動き出す事は無い」が暗黙の前提となっていたのです。

そうであればBHの運動量は何時もゼロとして扱えた、という訳です。

したがって残るのはBHのエネルギーだけ、そうであればエネルギーがゼロになればそのBHは消えた事になる、と解釈していました。

しかしながらもちろん「BHはホーキング放射を出す事で動く」のでありますから「BHはホーキング放射では動かない」という扱いは誤りです。



注3:BHが角運動量を持つこと:シュワルツシルト・ブラックホール: https://archive.md/GIstF :

『ブラックホールを特徴づける物理量としては質量、角運動量、電荷の 3 つしかない。これを「ブラックホールに毛が三本」という。』

現実に宇宙に存在している、たとえばBH合体で重力波が確認されたBHは質量とスピンしている(=メカニカルに自転している=角運動量を持っている)事が確認されています。

そうして電荷について言えば、現実的にはゼロであろう、という読みが妥当でありましょう。

つまり「現実の宇宙空間にあるBHは質量と角運動量を持つ=毛は2本である」という事になります。

さて、しかしながらこの「BHの毛が3本定理」によって言及されていない運動量についてはこの定理が存在する事によって「あたかもBHは運動量を持たない」と誤解されている観があります。

いやいや、とんでもない事ですね。

宇宙空間を移動する天体は物質でできたものであれBHであれ、「運動量を持つ」のであります。

補足資料:「ブラックホールは毛が3本?」: https://archive.md/5pQcR :ご参考までに。

注4:通説の寿命式導出の手順では「エネルギーと質量は同じものである」という相対論の結論は使っていますが、BHが運動する事によってもつ事になる相対論的な運動エネルギーを考慮に入れていません。

その意味では「通説の寿命式は一部、相対論的にはなっていますが、その寿命式は不完全である」と言えます。


追記:以上の見方からしますと、前のページで行った議論は「消滅の一歩手前のBHが基準慣性系で見た時に静止状態にあった」という前提での話である事が分かります。

そうしてこの静止していたBHが消滅して一つのホーキング放射に姿を変えた、という「ありえない話であった」という訳です。

まあしかしながら、その話を含めて物理屋さん達は「BHはホーキング放射で消滅する」としているのですから、当方にはその様な方々は明らかに「ホーキング トラップにはまっている」としか見えないのであります。



追記の2:前のページの議論では「BHは静止している」としました。

そうして消滅前のBHと仮想粒子の合計運動量はゼロ、BH消滅後の運動量はホーキング放射分だけ増えるので、その様なプロセスは運動量保存則に違反するために起こりえない、としたのでした。

それに対してこのページの議論では「消滅の一歩手前のBHは基準慣性系で見た時に運動量P1を持っていた」としています。

そうして上記の議論は「この運動量P1をBHが持っているゆえに今度は逆にこのBHをホーキング放射が消し去る事が可能となる」というお話です。

ただしその時にこのBHを消し去る事が出来るホーキング放射の条件は厳密に1つだけである、という事になります。

そうしてランダムに発生している仮想粒子ペアがその条件を満たす確率Pは 

P=1/∞=0 ゼロである、がここでの結論となります。



さて以上より「消え去る一歩手前のBHが基準慣性系に対して静止していても、運動していてもそのBHはホーキング放射を出す事で消え去る事は出来ない」という事になります。

そうであればこれを「BHの消滅不可能定理」と命名します。



ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/vtMT7

https://archive.md/EL4sV

 

 

コメント

その3・ ホーキング トラップ

2023-02-09 04:01:08 | 日記

さてもう一つの「BHがホーキング放射で消え去る事が出来ない」という理由を説明する事にしましょう。

BHはホーキング放射で最後は消えてしまう、と主張する方々はBHを消し去る事になるそのBHに最後に飛び込んだ仮想粒子の事と、そのBHがその事によって最終的に放出する事になるホーキング放射の事を真面目に考えた事が無い、と断言できます。

何故かと言えばその理由は次の通りです。

まずはそのホーキング放射で消える事になるBH中心に座標原点を設定します。(注1)

そうするとそのBHの運動量はゼロになります。

さてそこで対生成した仮想粒子の一方がBHに飛び込んでそのBHを消し去りました。

他方でBHに飛び込んだ仮想粒子とペアで出現したもう一方の仮想粒子は実粒子化しBHから速度Vで離れていきます。

そうしてこのBHから離れていく実粒子がホーキング放射として認識されます。

さてこれが一般的に想定されているホーキング放射によるBH消滅のプロセスです。



ほほう、そうですか。

このBH消滅プロセスの最初の状況は静止しているBHと、粒子、反粒子からなる仮想粒子ペアの誕生です。

この時に発生した仮想粒子ペアの運動量は合計するとゼロになっています。

その理由は「仮想粒子ペアが誕生した事で宇宙全体の運動量が増える事はないから」です。(注2)

そうであれば誕生した仮想粒子はお互いに同じ速度で反対方向に飛び去ります。

従ってその時には全体の運動量(=BHの運動量と仮想粒子ペアの運動量を足し合わせたもの)はBH座標系でみてゼロです。

さてそれでBHが消えた後、実粒子化したホーキング放射がBHが在った場所から速度Vで離れていきます。

そうであればその時には全体の運動量はゼロではなくて、速度Vで離れていく実粒子化したホーキング放射が持っている分だけ増えている事になります。

つまりは最初に合計した運動量はゼロであったものが、ホーキング放射でBHが消滅し、BHが一つのホーキング放射に姿を変えた後は全体の運動量はゼロではなくなっているのです。



さてそうであればこれは明らかに運動量保存則に違反しています。

従ってこのような運動量保存則違反のプロセスは起きる事が出来ない、つまり「このような条件ではホーキング放射は起らない」ので、従って「BHはホーキング放射で消えさる事は出来ない」という事になります。



さて以上の事は以下に参照する加速器実験における粒子崩壊の理解から出てくる結論でもあります。

高エネルギー加速器セミナー: http://kek.soken.ac.jp/pn/wp-content/uploads/kasokuki_seminar_2010_Kojima-1.pdf :の9ページ目に『1体崩壊:あり得ない』という説明があります。

これは粒子の崩壊についての説明ですが、BHがホーキング放射で消える、というのはまさにこれと同じことを言っています。

つまり「質量MのBHが崩壊し、ホーキング放射で質量mの粒子に変わった」とそのように「BHがホーキング放射で消えさるというプロセスを見る事が可能」なのですが、そのような崩壊形式は禁止されている、とこの記事では述べているのです。(注3)

さて粒子の崩壊についてはこのような『1体崩壊:あり得ない』と主張する物理やさん達が同様の解釈が可能であるBH消滅については「ありうる」とすることは「論理矛盾である」と指摘する事ができます。



さてそれではどのような崩壊形式であれば成立可能なのでしょうか?

それは10ページ目にある「2体崩壊から可能」となるのでした。

この場合質量Mの粒子は質量m1とm2の2つに崩壊しそれぞれ反対方向に速度V1とV2で飛び去ります。

これをBHの場合にあてはめますと、質量MのBHが質量m1のホーキング放射を右側に速度V1でだし、質量MのBHは質量m2に変化し(=減少し)速度V2で左側に運動しはじめる、となります。

これはつまり「禁止されている1体崩壊」ではホーキング放射分だけ運動量が増えてしまい、それが理由でホーキング放射が出来ないのでした。

しかしながらこれが2体崩壊になりますと、その増えたホーキング放射の運動量増加分は、質量がホーキング放射で軽くなったBHがホーキング放射と逆方向に動く事で逆方向の運動量を持ち、それによってホーキング放射が持つ事になる運動量を打ち消す事が可能となります。

これでこの崩壊形式では運動量保存則を満足させることが出来るのです。

これはつまり、「ホーキング放射のもつ運動量を打ち消す存在としてのBHはホーキング放射が起こる為には必要である」という事になるのです。



さてこの崩壊形式、あるいはホーキング放射形式が最少のものであり、この場合はエネルギー保存則と運動量保存則が同時に満たされます。

以上の事によって「ホーキング放射をどれほど放出しようが、その事でBHは消え去る事はできない」という事がこの議論の結論となります。



注1:座標軸原点の取り方については、より現実に即した設定の仕方があります。

ただしそれについてはページを改める事と致します。

注2:仮想粒子であるから運動量保存則を破ってもよい、という主張が聞こえます。

短時間であればそれは可能である、という主張ですね。

しかしながらホーキング放射の場合は仮想粒子が実粒子化しますので「短時間ではなく以後ずうっと存在し続ける事になる」のです。

したがって「運動量保存則は厳密に適用される」事になります。

さてその事を逆に解釈しますと「全てのペアで生成している仮想粒子は運動量保存則を満たす形で発生している」という事になります。

何故かと言いますと「どの仮想粒子ペアがホーキング放射を作り出すかはそのペアが生成した時点では不明であるから」です。

つまり前もって「お前たちはホーキング放射に変わるから運動量保存則をまもれ」とか「お前たちはホーキング放射とは関係ないから運動量保存則は守らなくて良い」と言う様に仮想粒子ペアが生成する時に指定する事は不可能であるのです。

しかしながら「ホーキング放射を出す事になる仮想粒子ペアは厳密に運動量保存則を満足させている事が必要である」のです。

そうであれば「対生成している仮想粒子ペアは全て前もって、運動量保存則を満たすように発生している事が必要になる」という事になります。

ちなみに運動量を考える場合には座標設定が必要になります。

そうしてこの場合の座標は基準慣性系(=客観的に存在している静止系)である、と言うのが当方の主張となります。

注3:「BHがホーキング放射を出して消え去る事が可能である」とすると、その最後の姿は静止していたBHが一つのホーキング放射に姿を変えた、と見る事が出来る事は上記で述べました。

この一連のプロセスが量子力学に従うものであるとすると、これは時間反転が可能であるプロセスとなります。

さてそういうわけでこれを時間を逆に動かします。

そうすると、所定の放射(素粒子であれ光であれ)がある時、理由もなく静止してその姿をBHに変えた、となります。

さてこのような現象はないと断言できます。

したがって「静止していたBHが一つのホーキング放射に姿を変える」と言う様な事も起りえない、という事がこの時間反転の視点からも分かるのであります。


ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/OT1hh

 

 

コメント

その2・ ホーキング トラップ

2023-02-06 01:20:47 | 日記

さて前の記事では、「ホーキング放射で小さくなってしまったBHにはその直径よりも大きなものは入れない」と言う事を説明しました。

この事は対象物が目で見える場合には幼稚園児でさえ理解可能な事です。

ビンの入り口より大きなものはビンの中には入りません。

この当たり前のことがBHと仮想粒子の関係になると、大学で物理学を習得されたのであろう物理学者さん達には理解できない模様です。(注1)



BHのホライズンの大きさはシュワルツシルト半径*2がその直径を与えます。(注2)

そうしてこれがBHをビンとみなした時にビンの入り口部分の直径になります。

さてそれで(注2):シュワルツシルト半径:によれば

『地球質量のシュワルツシルト半径は約0.9cmになる。』とのこと。

この地球質量のBHが地球と衝突した場合にはこのBHの中に地球ははいれるのか?という事を考えます。

普通に考えますと「ビンの入り口が1.8センチ」では、入り口を通過した後のビンの本体直径がどれほど大きくてもそのビンの中には地球は入れません。



しかしながら地球は水素から始まる100程度の種類の原子の集合体です。

そうしてこの100種類の原子一つ一つの大きさは明らかに1.8センチよりははるかに小さいのです。

したがって地球にこの1.8センチのBHが衝突した場合はまずは地表にある土を構成する原子からBHの中に取り込まれていきます。

そうやってこのBHは地球の中心をめざして地球に直径1.8センチほどの穴をあけながら落ちていく事になります。(注3)

さて地球の中心に到達したBHはそこでも周りから物質原子をBHの中に順次、取り込んでいきます。

ふむ、そうしますと結局はこのBHは地球をそうやってばらばらに分解しながらすべてを食い尽くす事が可能なのです。



さてこのBH、いまや地球を食い尽くしましたから体重が2倍になりました。

そうであればこのBHビンの入り口の直径も大きくなりました。

さあこのBHの半径は0.9センチからどれほど大きくなったでしょうか?

シュワルツシルト半径 r=2GM / c^2  の出番です。

この式でMが2倍になりました。

そうであればシュワルツシルト半径 r も2倍になったのです。

つまりは「BHビンの入り口の大きさはいまや3.6センチになった」と言う事になります。(注4)



さてまた(注2):シュワルツシルト半径:を参照しましょう。

『シュワルツシルト半径を持つ質量に下限はなく、いかなる微小な質量に対しても、シュワルツシルト半径が定まる。』

まあそういう訳でセルンでも陽子ー陽子の正面衝突でマイクロBHが出来るのではないか、と実験しました。

しかしながら今のところはそのようなマイクロBHはセルンの実験では検出されていません。



しかしながら宇宙初期の段階ではセルンが到達しているエネルギーより桁違いに高いエネルギー状態が存在していました。

これがご存じ、ビッグバンの始まりです。

その時には物質粒子が大量に作られました。(注5)

さてそれで、その時に大きなBHもマイクロBHも作られた、という可能性があります。

これを原始BHと言います。

そうしてこれがダークマターの正体ではないか、という話があります。



さてそれで一般的にはこの宇宙最初期に作られたBHについては「小さな質量のBHについてはホーキング放射をだしてすぐに消滅してしまった」と解釈されています。

そうして、たとえば月程度の質量の原始BHであればホーキング放射を出してもそれによるBHの質量の減少は無視可能なほどに小さいので、「今現在の時点でも宇宙空間に存在しうる」と言う様に言われます。

従ってこの様に大きな質量の原始BHを探索する観測は今も行われています。

以上が原始BHをめぐる今のこの業界の認識となります。



まあそれに対して当方は「小さな質量の原始BH=プランクレベルのBHは消滅せずに残っている」とし「それがダークマターの正体である」と主張しています。

その理由は前の記事でも述べましたが「素粒子の直径を下回る程の小さな原始BHに入り込む事ができるものは何もない」というロジックによります。

それはまた「素粒子には分解できない下限の大きさがある」という主張でもあります。



さてそれで、そこの部分が地球に衝突した大きさ1.8センチのBHに起きた事との違いになります。

なるほど地球の直径は1.8センチのBHの直径よりははるかに大きかったのですが、地球の大きさは見かけだけで、地球は分解可能だったのです。

そうして見事に直径1.8センチのBHは地球を分解し、食い尽くしました。

さて、しかしながら素粒子は分解可能ではありません。

それが素粒子の定義です。

そうしてこの分解不可能な素粒子をBHが食べるためには、それを丸呑みしなくてはならないのです。

つまりは「素粒子を食べるにはBHの口の大きさは素粒子を丸呑みできる大きさ以上に大きい事」と言うのが必要条件なのです。

そうしてホーキング放射はそれが出されるたびに順次、このBHの口の大きさを小さくしていくのです。



まあそういう訳で、前の記事で述べた結論

「ホーキング放射によってBHのホライズン直径がプランクスケールを下回る所までになってしまったBHには何物も入り込めない、従ってそのようなBHはホーキング放射を出す事が出来ない」ので

「宇宙最初期に生まれた大量のプランクスケールの原始BHは消え去ることなくダークマターとして今現在、宇宙を満たしている」という認識に至るのです。



注1:そうして残念な事にパラダイムシフトが起こらない限り、この状況は続くものと思われます。

注2:シュワルツシルト半径: https://archive.md/MLm4I :によれば

『天体の質量を M、光速度を c、万有引力定数を G とすると、そのシュワルツシルト半径 r は、 r=2GM / c^2 と表される。』

注3:実際は同じ重さのものが合体するのですから、「どちらかが一方に落ちる」のではなく、両方が同時に他方に近づいていくのです。

しかしながら地球で暮らす我々の目には「BHが地球中心に落ちていくように見える」という訳です。

注4:体重が2倍になると直径が2倍になる、と言う事はそのBHの体積は8倍になる、と言う事になります。

このあたり、通常の物質の挙動とは異なりますね。

注5:そうしてまた今ではダークマターとして知られることになるものも物質粒子の5倍ほどの量がその時に作られました。



追記:図式による簡単なまとめ

一般相対論ーー>シュワルツシルト解ーー>BH

量子力学ーー>真空での仮想粒子ペアの生成と消滅

一般相対論+量子力学ーー>ホーキング放射(及びホーキングトラップの発生)

ホーキング放射+素粒子は大きさを持つーー>ホーキング放射可能な最少BHサイズがある(当方の主張)

インフレーション宇宙論ーー>原始BH

ホーキング放射可能な最少BHサイズ+原始BHーー>プランクスケールの原始BHは蒸発できない

プランクスケールの原始BHは蒸発できないーー>ダークマターはプランクスケールの原始BHだ

・・・しかしながらいまだパラダイムシフトは起らず・・・



追記の2:「ダークマターはプランクスケールの原始BHだ」にパラダイムシフトが起こると・・・

ホーキング放射の物理モデルが明確になります。ーー>BHのエントロピー算出式が修正されます。

それからホーキング放射の物理モデルに合わせて、いままでのBH寿命式が修正されます。(運動量、角運動量、エネルギーの保存則が考量されます。)

規準慣性系(=客観的に存在する静止系)が認められます。

それから「情報は光速を超えて伝わらない」が修正されます。

そうしてまた「BH情報問題」にも新たな切り口が提示されます。

インフレーション宇宙論でプランクレベルの原始BHが大量に作られるようなモデルが出現します。ーー>宇宙の始まりについての理解が進みます。

地上でのダークマター粒子検出方法がさまがわりします。

・・・とまあ、かなり大きな修正と追加のパラダイムシフトが想定されます。


追記の3
ダークマターの正体探しは世界中の物理学者あげての宝探しゲームです。

そうであればそれぞれの物理やさん達は自分の読みを頼りにダークマターというダンジョンにトライしている訳です。

そうしてこのゲームには最終的には結論が出る、答えを人類は見つけ出す事でしょう。

しかしながら今のところは誰もその答えを知りません。

そうしてこのゲームに参加するのは無料で可能です。

そうであれば読者の方々もこのゲームに参加される事をお勧めします。


それはきっと良い思い出になる事でありましょう。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/x6d8P

 

 

コメント

ホーキング トラップ

2023-02-03 04:36:09 | 日記

ういき「ブラックホール」: https://archive.md/ocwUV :の蒸発の章によれば

『この粒子の放出はブラックホールの地平面上で確率的に起こるため、巨視的にはブラックホールがある温度の熱放射で光っているように見える。これをホーキング輻射(またはホーキング放射)と呼ぶ。

この輻射によってエネルギーを失うと(エネルギーは質量と等価なので)ブラックホールの質量は減少する。ホーキング輻射の温度Tはブラックホールの質量Mに反比例し、以下の公式で表すことが出来る。

T= hc^3/(8π ^2*GMk)

(ここでπは円周率、Gは万有引力定数、kはボルツマン定数)

陽子質量程度の微小なブラックホールではこの量子効果は無視出来ない。ホーキング輻射で質量が減るとさらにこの効果が強く働いて輻射の強度が増え、加速度的に質量とエネルギーを失い、最後には爆発的にエネルギーを放出して消滅する。

消滅直前のブラックホールでは、T=10^32Kにも達する。

これがブラックホールの蒸発である。』(注1)

さて、基本的には上記の様な「BHは蒸発して消えてしまうパラダイム」に従って現在では以下の様な記事が存在しています。

「量子BHの問題点」: https://archive.md/XVDlU :この記事によれば

仮想粒子と仮想反粒子のペアがホライズン近傍の真空の中で生まれては消えていく。

その中には一方の仮想粒子がホライズンを超えてBHに飛び込むものがある。

この仮想粒子はホーキングさんの計算によれば「マイナスのエネルギーをBHに持ち込む」とされる。

残されたもう一方の仮想粒子は実粒子化しBHから飛び去る。

そうであればBHはエネルギーが飛び込んだ仮想粒子分だけ減少し、これはつまりその分だけBHの質量が軽くなる、ということです。

他方でBHに飛び込んだ仮想粒子のマイナスエネルギーを帳消しにするプラスエネルギーを持った実粒子化した仮想粒子がBHから逃げていく(様に見える)。

これがBHを外側から観察している者にはまるでBHが温度を持っていて、熱放射をしているように見える、と言うのがホーキング放射メカニズムの大まかな所です。

そうしてそのようなホーキング放射が続くことによって次第にBHの質量は減少し続け、ついにはBHは蒸発してしまう、この世から消えてしまう、とホーキングさんは言ったのでした。



さてこのホーキングさんがおこなった計算ですが、少し違うのではないか、という意見もありますが、大方の見方では「確かにBHはホーキング放射を出す」「そうしてそれによってBHの質量は減少する」という事は認められている様です。(注1)

そうしてそのホーキング放射が行き着く最後のところ、そこでBHは消えてしまう、という見方が大方の物理やさんの認識ですが、プランクレベルまで到達した小さくななったBHのその後の運命については不明である、とする少数意見の物理屋さんもいます。

まあしかしながら「プランクレベルまで到達したBHはそこでホーキング放射が止まり、その後は安定してBH状態を維持する。」と主張しているのは当方ぐらいのものです。



さて、何故当方はそのように主張出来るのでしょうか?

それはホーキング放射のプロセスのスタートが「まずはBHに仮想粒子が飛び込むこと」であるからです。

まず最初にBHに仮想粒子が入り込まなくてはホーキング放射は始まらないのです。



これが通常の熱放射の場合は、熱を持って放射を出している対象には何も飛び込む必要はなく、ただ単に対象物から熱放射が出てくればよい、という所が大きく違います。

そうして確かに熱放射でエネルギーを失った対象物は放射したエネルギー分だけ質量は減少したでしょう。

そこに起こっている「放射エネルギーが対象物の質量を減少させる」という事については対象物が通常の物質であれBHであれ、一緒であります。



しかしながらBHの場合はホーキング放射を出す前にまずはBH近傍でペアで誕生した仮想粒子の片方がBH内に入らなくてはならないのです。

そうでありますからその場合ホライズンの直径がプランクスケール以下にまで小さくなってしまったBHに飛び込める仮想粒子はありえません。

何故かと言えば超弦理論が提唱している様に「全ての素粒子は有限の大きさを持つから」です。

そうしてその素粒子が持つ最小の大きさはプランクスケール程度であろうといわれています。

そうであればホーキング放射によってBHのホライズン直径がプランクスケールを下回る所までになってしまったBHには素粒子を始めとして何物も入り込めない、従ってそのようなBHはホーキング放射を出す事が出来ないのです。



以上の様な考察から分かる様に、宇宙最初期に生まれた大量のプランクスケールの原始BHは消え去ることなくダークマターとして今現在、宇宙を満たしていると主張出来るのです。

しかしながら多くの物理学者はホーキングさんが言った事「BHはホーキング放射を出して最後は消えてしまう」という「ホーキング トラップ」にはまり込んでそこから抜け出せなくなっているのが現状であります。



注1:寿命式導出の詳細は「Hawking 輻射とブラックホールの蒸発」: http://astro-wakate.sakura.ne.jp/ss2013/web/syuroku/grcosmo_24a.pdf :を参照願います。

但し一部寿命式導出の途中の諸式運用にタイプミスがあるようですが、結論の式はOKの様です。

ちなみにより詳細な、現代的な寿命式の結果については「ホーキング放射」: https://en-m-wikipedia-org.translate.goog/wiki/Hawking_radiation?_x_tr_sl=en&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja&_x_tr_pto=sc :を参照願います。



ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/3L0lX

 

 

コメント

ダークマターの存在は量子力学への挑戦である。

2023-02-01 07:01:14 | 日記

あるいは本当は「量子力学がダークマターに挑戦している」がより正しい言い方になります。

そうして今の所「ダークマターは量子力学の挑戦を全て退けている」という事になるのです。



「量子力学がこの宇宙に存在する物質=質量をもつ粒子状のものは全て説明できる」という考え方がダークマター粒子の探索の基本にあります。(注1)

これはまた量子力学帝国主義の考え方「宇宙に存在するものは全て、量子力学に従わなくてはならない」という主張そのものになります。

そうであれば「既存の素粒子の中にダークマター粒子を説明できるものが無いのであれば、ダークマターは新しい、未発見の素粒子である」と量子力学は考えます。

そうしてその線に従って探索が行われているのが現状です。

地下でのダークマター検出実験しかり。

セルンによるダークマター生成実験しかりです。(注2)

しかしながらいずれの実験でも今の所、成果はゼロです。



他方で天文学的な観察ではダークマターの存在は確定しています。(注3)

そうしてまた標準宇宙論でもダークマターは必要欠くべからざるものになっています。

そうであればダークマターは「遠くの宇宙を観測すればその姿ははっきりと人の前に姿を現します」がそのダークマター粒子が目の前を通り過ぎているにも関わらず地球上にいる人類はそれを観測できていない、理解できていない、という事になるのです。

そうして人類史上、こんなことは今までは起こった事がありません。



人類は宇宙に存在する物理的な実在は全て理解できる、とし今までは実際その通りでありました。

しかしながらここにきてダークマターにはどうやらそれが通用しないかの様であります。

そうしてどうもダークマターは量子力学と相性が悪い様に見えます。(注4)

さてそうであればこの状況はとても興味深いものになっている、という事になります。



注1:超対称性理論、それが「ダークマターはWINPである」と主張しているのですが、その理論も量子力学です。

注2:今までの新素粒子探索実験は2つの既存粒子を正面衝突させることで反応させ、そこで生成される素粒子を識別する事で成し遂げられてきました。

実際セルンで行われたヒッグス粒子の確認もその様にしてなされたものです。

そうであれば物理学者は当然のごとく「ダークマター粒子が未発見の素粒子なのだから、従来の延長線上の粒子正面衝突実験で姿を現す事になる」と考えます。

そうして実際、セルンはそのストーリーで実験を行っています。

しかしながら今の所、正面衝突実験ではダークマター粒子は姿を見せていません。

ちなみにかつてはこの正面衝突実験でいやと言う程の新素粒子が発見されていました。

そうして「素粒子と言うには多すぎる」ということてゲルマンがクォークモデルを提唱し、この新素粒子多発状態の混乱に終止符がうたれたのでした。

皮肉なものでそれが今ではどんなにエネルギーをつぎ込んでも新素粒子が現れない状態に陥っているのです。

注3:たとえば「理論予測より桁違いに多かった銀河団内の重力レンズ」: https://archive.md/a9cUQ :を参照ねがいます。

上記記事に限らず重力レンズを使った宇宙でのダークマターの分布についてはすばる望遠鏡による研究など多数、報告されています。

つまり「遠くを観察すれば、ダークマターの存在は明らかになる」のです。

くわえてこの件については ういき「暗黒物質」: https://archive.md/uLLoc :も参照願います。

注4:量子力学と相性がわるいもう一つの存在はBHです。

そうして後日に至りて人々はこんな風に言う様になるのです。

「なんだダークマターがプランクレベルの原始BHだなんて、みえみえのことじゃないか。なんで当時の物理学者はこんな簡単な事に気が付かなかったのか?」とね。

多くの物理学者が「ダークマターがプランクレベルの原始BHである」という事に気が付かない理由は2つ。

一つは上記で述べたような「量子力学至上主義の壁」。

もう一つは「ホーキング トラップ」。

「ホーキング トラップ」と言うのは今の物理学者が落ち込んでいる、ホーキングさんによって仕掛けられた罠の事です。

それはもともとはホーキングさんの主張「BHはホーキング放射を出して最終的には蒸発してしまう」の丸呑みによる「それが何時も正しいのだ」という思い込みです。

その思い込みの下で「宇宙初期に物質が現れるのと同時に現れた小さなBHは、それが実際に存在したとしてもすぐにホーキング放射を出して消滅してしまう」と物理学者は考えます。

まあそういう訳でほとんどの物理学者は「プランクレベルの原始BHなど現時点で存在するはずがない」と頭から決めつけているのでした。

 

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/RrPBb

 

コメント