宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論 etc etc

「ブラック ホールの消滅不可能定理」の検証

2023-02-16 06:28:28 | 日記

前のページで示した様に「今までの話の上ではBHをこの世から消し去る方法はただ一つだけ存在する」のでした。

さてその方法によれば本当にBHを消し去る事が出来るのでしょうか?

以下、その事を確認します。(注1)



BHを消滅させる為のレシピ(=作業手順)

それでBHを消滅させる上でまずいやな事は「消滅の一歩手前のBHで運動量と角運動量という2つの運動量を持っている事」です。

その状態では最後のホーキング放射で運動量、角運動量、エネルギーの3つを同時にゼロにしなくてはなりません。

そうしてどう考えてもそのような「奇跡的な事はできない」のです。

従って「消滅の一歩手前のBHではすでに角運動量はゼロになっていてほしい」のです。

そうできれば「BHを消滅させることになる最後にBHに飛び込む仮想粒子はBHの持つ運動量とエネルギーをゼロにすればよい」という状況を作れた事になります。



ちなみにこの場合、エネルギーはもちろん相対的なエネルギーとしなくてはならず、そうなりますと座標系の設定が必要になります。

それでここではその座標系は基準慣性系(=CMBレストフレーム)とする事になります。(注2)

さてそうであればBHの角運動量も基準慣性系に対してゼロにすれば良いのです。



始めに「質量が100grを超えるBHがホーキング放射をだして100gr程度の重さまで減少した」というBHを想定します。

このBHがさらにランダムにホーキング放射を出しながらその質量を減少させて10grまでになったとしましょう。

ランダムに発生したホーキング放射のおかげでいまやそのBHはゼロではない運動量と角運動量を持っています。(注3)



それで10grから1grにBHの質量を減らす時に、BHに飛びこむ仮想粒子を精密にコントロールしてBHの自転を止めます。

つまり「BHの自転方向とは逆の向きに仮想粒子を打ち込む」のです。

こうしてこのBHは1grに到達した時には角運動量はゼロにできていました。

そうであればこれ以降、BHに打ち込む仮想粒子はBHの中心を正確に狙う事になります。

そうでなくてはせっかくゼロにできたBHの角運動量をまたゼロ以外の値にしてしまうからですね。



さあそれで次は1grからプランク質量(=mp)までBHの質量を減らさなくてはなりません。(注4)

この時に気を付ける事はなるべくBHの運動量を増やさない、と言う事です。

それはつまり、常にBHが運動している方向とは逆向きに仮想粒子をBHに打ち込む、と言う事です。

こうやってBHの運動量が増加するのを極力さけながらBHの質量を下げていきます。(注5)



こうやってほぼ1プランク質量までBHの質量を減らせた場合、そのBHの直径は4プランク長となります。(注6)

さてシュワルツシルト半径 RsはBH質量と正比例していますからBH質量が0.25プランク質量にまで低下しますとそのBHの直径は1プランク長となります。

そうして素粒子の大きさを1プランク長程度と想定していますので、BHの大きさが1プランク長に到達したところが、もう一回ホーキング放射ができるぎりぎりのBHサイズとなります。

なんとなれば、1プランク長を切ってしまったらそのBHに飛び込める仮想粒子は存在しないからであります。(注7)



さてここでその時のBHの運動量の大きさをPBHとしましょう。

そうであればここでそのBHに打ち込む仮想粒子の持つべき運動量もPBHでなくてはいけません。

そうして打ち込む方向はBHの進行方向と真逆の方向です。

さてこれでBHの運動量はゼロにできます。

のこる問題は相対論的なエネルギーです。

この時のBHの相対論的なエネルギーEBHは次のように書けます。

EBH=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・①式

従ってこのBHに飛びこむ仮想粒子の相対論的なエネルギーE(仮想粒子)も

エネルギーE(仮想粒子)=sqrt(PBH^2*C^2+(0.25mp)^2*C^4)・・・②式

でなくてはなりません。

このとき仮想粒子の運動量はPBHでBHの相対論的なエネルギー①式と同じになっています。(但し仮想粒子の運動の方向はBHとは真逆です。)

それでここで問題になるのは飛び込む仮想粒子の静止質量の大きさです。

上記エネルギー②式にある様に、このとき仮想粒子の静止質量は(0.25mp)つまり

0.00545ミリグラム、でなくてはなりません。

そうしてこんな巨大な質量をもつ素粒子は存在ないのです。(注8)

そうであれば最後の最後にきてこのように精密にコントロールしたホーキング放射をつかってもBHを消滅させる事はできない、と言う事になります。(注9)



さて結論です。

ランダムに起きるホーキング放射ではBHは消せません。

そうしてまた精密にコントロールされたホーキング放射を使ってもBHは消滅できないのです。

こうして「唯一残されたBH消滅の方法も実際には実現不可能である」=「BHの消滅不可能定理は厳密に成立している」という事が確認されるのです。



注1:今までの話で「どれほどやっても無理な話だ、というのがわかっているのだが、、、。」という事は少し横に置いておきましょう。

そうしてまた「仮想粒子の対生成のコントロールなどできない」という主張もナシということにします。

さてそう仮定した場合には前のページで指摘した内容、「唯一BHを消し去る事が出来るホーキング放射というのは実現可能なのか?」=「BHの消滅不可能定理は成立しないのか?」という問いかけとなります。

但しここでの議論では「仮想粒子を含んで素粒子には有限の大きさがある」とし「素粒子の大きさよりもBHの大きさが小さくなった時点でホーキング放射は止まる」という条件を使っています。

ちなみにこの条件を外したらBHは消滅するのか、といいますとこれとはまた別の「素粒子には固有質量がある」と言う制限がかかりますので、BH消滅に対する状況はそれほど有利にはなりません。(この件については後述となります。)

注2:対象とするBHが存在している場所にある、客観的に存在する静止系です。

注3:ホーキング放射を出す為にはBHには前もって仮想粒子が飛びこまなくてはなりません。

そうしてその仮想粒子はBHに運動量と角運動量を持ち込みます。

ちなみに角運動量はBHの中心からずれた位置をめがけてBHに飛び来む仮想粒子によってBHにもたらされます。

注4:プランク質量(mp): https://archive.md/sRXXo :によれば

1プランク質量=0.0218ミリグラムである。

『1プランク質量は一般的なコピー用紙(坪量 64g/m2)を 1mm×0.3mm に切ったものの質量くらいである。』

目視可能なサイズの紙の切りくず、あるいはゴミの重さ、といったところです。

注5:その理由についてはここでは詳しくは述べませんが(=ページを改めます)、その様にしてBHをなるべく動かさない方がこのBHはそれ以降はホーキング放射を出しやすくなります。

逆に言いますと「動き回っているBHはホーキング放射を出す頻度が落ちる」のです。

注6:プランク長: https://archive.md/IOCb9 :によれば

プランク質量 mpでのシュワルツシルト半径 rsはrs=2*lpとなっている。

ここでlpはプランク長である。

つまりプランク質量のBHの直径は4*lp、プランク長の4倍の大きさとなります。

注7:ここで発生する仮想粒子は有限の大きさを持ち、その大きさよりもBHの大きさが小さくなった時点でホーキング放射は止まる、という仮定を導入しています。

注8:0.00545ミリグラムは陽子質量の3*10^18倍の重さ。

このような質量の素粒子は我々が暮らす宇宙には存在しないと言い切って良いでしょう。

これが「いつの日にか人類が仮想粒子の対生成を精密にコントロールできた」としてもBHを消し去る事ができない、次の壁となります。

注9:このレシピに従ってBHを消滅させようとした結果、そこに残るBHは運動量、角運動量はゼロにできた、つまり「基準慣性系に対しては静止させることが出来た」「質量がほぼ0.00545ミリグラム(=0.25mp)のBH」と言う事になります。

そうしてこのBHはそれ以降ホーキング放射を出す事はなく、その状態で安定して宇宙に存在し続ける事になります。



追伸:上記の話は素粒子の大きさを1プランク長程度と想定した話でしたが、その大きさが0.5プランク長になっても0.1プランク長であったとしても、この議論は多少修正するだけでほとんど同様に行う事が出来ます。

つまり「素粒子に有限の大きさがある限り、BHはホーキング放射では消滅できない」と言う事になります。

そうしてまたBHが消え去る事ができる最後に残された1回のホーキング放射で必要とされる仮想粒子の質量は消し去る対象のBHと同じである必要があり、その様な巨大な質量をもつ素粒子は存在しない=その様な巨大質量をもつ仮想粒子も存在しない=したがってこのBHを消し去る事はできない、がここでの結論となります。



追伸の2:プランクスケールを超えて生成した原始BHがダークマターになる手順。

この原始BHは誕生した瞬間からホーキング放射を出しながら自分の質量をプランクレベルまで順次減少させます。

そうして自分の質量が0.25mpに近くなった所で、所定の運動量と角運動量をもって次に起こるであろう、そのBHにとっては最後となるホーキング放射を待ちます。

そうしてランダムに決定された最後のホーキング放射によってBHの質量は0.25mpを切る事になります。

しかしながらその最後のホーキング放射はBHの運動量と角運動量をゼロにする事はありません。

従って最終的にそこに残るBHは質量が0.25mpを少しだけ切った、ゼロではない運動量と角運動量を持ったプランクレベルのBHという事になります。

そうしてこのBHはもう2度とホーキング放射を出さない為、宇宙が終わる時までこの姿で安定して存在し続ける事になるのです。

くわえて、このように安定化したプランクレベルの原始BHこそがダークマターの正体となります。

ちなみに宇宙初期の原始BH誕生の際に最初からその質量が0.25mpを切って誕生した原始BHは一度もホーキング放射を出すことなく、そのままダークマターとしての役割を担う事になります。

そうしてこのようにして最初からホーキング放射を出さない原始BHが冷たいダークマター(=CDM)としては最適であります。

さてインフレーション宇宙論によれば「原始BHの質量は少ない方が誕生頻度が高い」という事の様ですので、「プランクスケールの原始BHがCDMである」という主張にとってはこれは都合の良い状況であります。



ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧

https://archive.md/Y7qJs

 

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