さて前の記事では、「ホーキング放射で小さくなってしまったBHにはその直径よりも大きなものは入れない」と言う事を説明しました。
この事は対象物が目で見える場合には幼稚園児でさえ理解可能な事です。
ビンの入り口より大きなものはビンの中には入りません。
この当たり前のことがBHと仮想粒子の関係になると、大学で物理学を習得されたのであろう物理学者さん達には理解できない模様です。(注1)
BHのホライズンの大きさはシュワルツシルト半径*2がその直径を与えます。(注2)
そうしてこれがBHをビンとみなした時にビンの入り口部分の直径になります。
さてそれで(注2):シュワルツシルト半径:によれば
『地球質量のシュワルツシルト半径は約0.9cmになる。』とのこと。
この地球質量のBHが地球と衝突した場合にはこのBHの中に地球ははいれるのか?という事を考えます。
普通に考えますと「ビンの入り口が1.8センチ」では、入り口を通過した後のビンの本体直径がどれほど大きくてもそのビンの中には地球は入れません。
しかしながら地球は水素から始まる100程度の種類の原子の集合体です。
そうしてこの100種類の原子一つ一つの大きさは明らかに1.8センチよりははるかに小さいのです。
したがって地球にこの1.8センチのBHが衝突した場合はまずは地表にある土を構成する原子からBHの中に取り込まれていきます。
そうやってこのBHは地球の中心をめざして地球に直径1.8センチほどの穴をあけながら落ちていく事になります。(注3)
さて地球の中心に到達したBHはそこでも周りから物質原子をBHの中に順次、取り込んでいきます。
ふむ、そうしますと結局はこのBHは地球をそうやってばらばらに分解しながらすべてを食い尽くす事が可能なのです。
さてこのBH、いまや地球を食い尽くしましたから体重が2倍になりました。
そうであればこのBHビンの入り口の直径も大きくなりました。
さあこのBHの半径は0.9センチからどれほど大きくなったでしょうか?
シュワルツシルト半径 r=2GM / c^2 の出番です。
この式でMが2倍になりました。
そうであればシュワルツシルト半径 r も2倍になったのです。
つまりは「BHビンの入り口の大きさはいまや3.6センチになった」と言う事になります。(注4)
さてまた(注2):シュワルツシルト半径:を参照しましょう。
『シュワルツシルト半径を持つ質量に下限はなく、いかなる微小な質量に対しても、シュワルツシルト半径が定まる。』
まあそういう訳でセルンでも陽子ー陽子の正面衝突でマイクロBHが出来るのではないか、と実験しました。
しかしながら今のところはそのようなマイクロBHはセルンの実験では検出されていません。
しかしながら宇宙初期の段階ではセルンが到達しているエネルギーより桁違いに高いエネルギー状態が存在していました。
これがご存じ、ビッグバンの始まりです。
その時には物質粒子が大量に作られました。(注5)
さてそれで、その時に大きなBHもマイクロBHも作られた、という可能性があります。
これを原始BHと言います。
そうしてこれがダークマターの正体ではないか、という話があります。
さてそれで一般的にはこの宇宙最初期に作られたBHについては「小さな質量のBHについてはホーキング放射をだしてすぐに消滅してしまった」と解釈されています。
そうして、たとえば月程度の質量の原始BHであればホーキング放射を出してもそれによるBHの質量の減少は無視可能なほどに小さいので、「今現在の時点でも宇宙空間に存在しうる」と言う様に言われます。
従ってこの様に大きな質量の原始BHを探索する観測は今も行われています。
以上が原始BHをめぐる今のこの業界の認識となります。
まあそれに対して当方は「小さな質量の原始BH=プランクレベルのBHは消滅せずに残っている」とし「それがダークマターの正体である」と主張しています。
その理由は前の記事でも述べましたが「素粒子の直径を下回る程の小さな原始BHに入り込む事ができるものは何もない」というロジックによります。
それはまた「素粒子には分解できない下限の大きさがある」という主張でもあります。
さてそれで、そこの部分が地球に衝突した大きさ1.8センチのBHに起きた事との違いになります。
なるほど地球の直径は1.8センチのBHの直径よりははるかに大きかったのですが、地球の大きさは見かけだけで、地球は分解可能だったのです。
そうして見事に直径1.8センチのBHは地球を分解し、食い尽くしました。
さて、しかしながら素粒子は分解可能ではありません。
それが素粒子の定義です。
そうしてこの分解不可能な素粒子をBHが食べるためには、それを丸呑みしなくてはならないのです。
つまりは「素粒子を食べるにはBHの口の大きさは素粒子を丸呑みできる大きさ以上に大きい事」と言うのが必要条件なのです。
そうしてホーキング放射はそれが出されるたびに順次、このBHの口の大きさを小さくしていくのです。
まあそういう訳で、前の記事で述べた結論
「ホーキング放射によってBHのホライズン直径がプランクスケールを下回る所までになってしまったBHには何物も入り込めない、従ってそのようなBHはホーキング放射を出す事が出来ない」ので
「宇宙最初期に生まれた大量のプランクスケールの原始BHは消え去ることなくダークマターとして今現在、宇宙を満たしている」という認識に至るのです。
注1:そうして残念な事にパラダイムシフトが起こらない限り、この状況は続くものと思われます。
注2:シュワルツシルト半径: https://archive.md/MLm4I :によれば
『天体の質量を M、光速度を c、万有引力定数を G とすると、そのシュワルツシルト半径 r は、 r=2GM / c^2 と表される。』
注3:実際は同じ重さのものが合体するのですから、「どちらかが一方に落ちる」のではなく、両方が同時に他方に近づいていくのです。
しかしながら地球で暮らす我々の目には「BHが地球中心に落ちていくように見える」という訳です。
注4:体重が2倍になると直径が2倍になる、と言う事はそのBHの体積は8倍になる、と言う事になります。
このあたり、通常の物質の挙動とは異なりますね。
注5:そうしてまた今ではダークマターとして知られることになるものも物質粒子の5倍ほどの量がその時に作られました。
追記:図式による簡単なまとめ
一般相対論ーー>シュワルツシルト解ーー>BH
量子力学ーー>真空での仮想粒子ペアの生成と消滅
一般相対論+量子力学ーー>ホーキング放射(及びホーキングトラップの発生)
ホーキング放射+素粒子は大きさを持つーー>ホーキング放射可能な最少BHサイズがある(当方の主張)
インフレーション宇宙論ーー>原始BH
ホーキング放射可能な最少BHサイズ+原始BHーー>プランクスケールの原始BHは蒸発できない
プランクスケールの原始BHは蒸発できないーー>ダークマターはプランクスケールの原始BHだ
・・・しかしながらいまだパラダイムシフトは起らず・・・
追記の2:「ダークマターはプランクスケールの原始BHだ」にパラダイムシフトが起こると・・・
ホーキング放射の物理モデルが明確になります。ーー>BHのエントロピー算出式が修正されます。
それからホーキング放射の物理モデルに合わせて、いままでのBH寿命式が修正されます。(運動量、角運動量、エネルギーの保存則が考量されます。)
規準慣性系(=客観的に存在する静止系)が認められます。
それから「情報は光速を超えて伝わらない」が修正されます。
そうしてまた「BH情報問題」にも新たな切り口が提示されます。
インフレーション宇宙論でプランクレベルの原始BHが大量に作られるようなモデルが出現します。ーー>宇宙の始まりについての理解が進みます。
地上でのダークマター粒子検出方法がさまがわりします。
・・・とまあ、かなり大きな修正と追加のパラダイムシフトが想定されます。
追記の3
ダークマターの正体探しは世界中の物理学者あげての宝探しゲームです。
そうであればそれぞれの物理やさん達は自分の読みを頼りにダークマターというダンジョンにトライしている訳です。
そうしてこのゲームには最終的には結論が出る、答えを人類は見つけ出す事でしょう。
しかしながら今のところは誰もその答えを知りません。
そうしてこのゲームに参加するのは無料で可能です。
そうであれば読者の方々もこのゲームに参加される事をお勧めします。
それはきっと良い思い出になる事でありましょう。