宇宙論、ブラックホール、ダークマター、ホーキング放射、相対論

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その2・ ホーキング放射のメカニズム

2023-02-22 04:22:29 | 日記

前のページで示したものは仮想粒子の対生成について「プラスエネルギーの仮想粒子とマイナスエネルギーの仮想粒子が生成する」という考え方でした。

そうしてこれはホーキングさんがやった計算過程を再解釈したものでした。



それでもう一つの考え方は「生成された仮想粒子はどちらもプラスエネルギーをもっている」と考えるやり方です。

なぜそのような、一見エネルギーの保存則に反した様な状況が許されるのか、といいますれば「エネルギーと時間の不確定性関係によって、ごく短時間であれば真空がエネルギーを仮想粒子に与えることが出来るから」と説明されます。

そうやって与えられたエネルギーは所定の時間が経てばまた真空に戻ってしまう、つまりそこで対生成した仮想粒子ペアは「再会する必要などなく、ただ単に消えてしまう」のです。



したがってこの仮想粒子ペアが実粒子化する為には「時間切れで消えてしまう前に片方の仮想粒子がBHに飛び込む必要がある」という事になります。

そうしてその様にできた場合は両方の仮想粒子はその時点で実粒子化します。(注1)

ここで注意すべき点は「BHにペアで生まれた仮想粒子の片方がBH内に入る」と言うのが原因で、その結果が「両方の仮想粒子が同時に実粒子化する」という所です。

そこにはあきらかな因果関係、原因と結果、順序があります。(=あるいは、その様に観測者には見えます。)



一方でエネルギーを仮想粒子に貸し出したBHを取り囲む真空は、その貸した分のエネルギーをBHから取り立てます。

さてその結果は、真空としては仮想粒子に貸し出したエネルギーはBHから取り立てましたので差引の変化はありません。



他方でBHは仮想粒子1個分のエネルギーはもらいましたが(=このエネルギーのもともとの出所はBHを取り囲む真空)、同時にBHを取り囲む真空が仮想粒子2個分のエネルギーをBHから取り立てますから、差し引き仮想粒子1個分だけエネルギーが減少します。

そうしてその時BHが減少した1個分のエネルギーは、対生成したもう一方の(=BHに飛び込まなかった方の)仮想粒子が実粒子化してBHから飛び去っていますので、その粒子が持って行く事になります。



こうしてBHがホーキング放射を出す前の合計エネルギーは「真空+BH+仮想粒子ペア」で、BHがホーキング放射を出した後では「真空+BH+ホーキング放射(=実粒子化した仮想粒子)」となるのですが、その合計エネルギーは保存される、BHがホーキング放射を出す前と出した後で変化する事はないのであります。

さて以上の話をプロセス順にそってまとめますと次のようになります。



真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系の合計エネルギー

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Ebh(=BHが前から持っているエネルギー)

・仮想粒子ペア ・・・存在しない=ぜろ

以上合計=ゼロ+Ebh+ゼロ=Ebh



仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系の合計エネルギー

・真空 ・・・仮想粒子2個分貸出し=-2

・BH  ・・・Ebh(=BHが前から持っているエネルギー)

・仮想粒子ペア ・・・真空から2個分の借り=+2

以上合計=-2+Ebh+2=Ebh



BHがホーキング放射を出した後の系の合計エネルギー

・真空 ・・・仮想粒子2個分貸出し分-2+BHから取り立て分+2=ゼロ

・BH  ・・・Ebh+仮想粒子1個分プラス+真空に2個分支払い=Ebh+1-2=Ebh-1

・仮想粒子ペアーー>一つがホーキング放射化・・・真空から2個分の借り=+2ーー>BHに1個取られた=2-1=+1

以上合計=ゼロ+Ebh-1+1=Ebh=エネルギー保存則は成立



そうしてまたホーキング放射を出す前と出した後でのこの組み合わせの合計運動量にも変化はない、運動量も保存されるのです。

真空が仮想粒子ペアを生み出す前の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・仮想粒子ペア ・・・存在しない=ゼロ

以上合計=ゼロ+Pbh+ゼロ=Pbh



仮想粒子ペア誕生後、BHがホーキング放射を出す前の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh(=BHが前から持っている運動量)

・仮想粒子ペア ・・・P(仮想粒子)+(ーP(仮想粒子))=ゼロ:(注2)

以上合計=ゼロ+Pbh+ゼロ=Pbh



BHがホーキング放射を出した後の系の合計運動量

・真空 ・・・ゼロ

・BH  ・・・Pbh+P(仮想粒子=BHに飛び込んだ方の仮想粒子の運動量分)

・仮想粒子ペアーー>一つがホーキング放射化・・・(ーP(仮想粒子)=BHに飛び込まなかった方の仮想粒子の運動量分)

以上合計=(Pbh+P(仮想粒子))+(ーP(仮想粒子))=Pbh=運動量保存則は成立



ちなみに以上の様に「対生成した仮想粒子は2つともプラスエネルギーを持っていた」と仮定しても、あるいは「プラスエネルギーの仮想粒子とマイナスエネルギーの仮想粒子が生成する」と仮定しても最終的に到達する結論は同じ、「BHは仮想粒子が実粒子化した分だけエネルギーが減る」のです。

さてそうであればこれはエネルギーのやり取りについては2つのやり方は計算の経路が違うだけの話で結果は同じになる、という事になります。

しかしながら「マイナスエネルギーの仮想粒子、あるいは実粒子をつかった運動量保存の計算」と言うのはあまりなじみがないものですので、「両方ともにプラスエネルギーを持って仮想粒子は生成された」とした方が運動量保存則を加えた計算がやりやすく分かりやすいのです。



さて当方は上記の様な計算上の都合もありますがホーキング放射で実際に起きている状況についても「仮想粒子の対生成では両方ともにプラスエネルギーを持って生成される」と想定しています。



注1:何故同時に実粒子化する、と言えるのでしょうか?

それはこの2つの粒子はエンタングルしているからですね。

どちらかの仮想粒子がその状態を決定するならば(=この場合は実粒子化する事をいう)、他方の仮想粒子も同時にその状態を決定します。

注2:仮想粒子ペアは誕生したと同時に正確に同じ速度で反対方向に飛び去ります。

したがって仮想粒子ペアの合計運動量は何時もゼロになっています。

つまりは「仮想粒子ペアが誕生する事で宇宙の合計運動量が増加する事」はありません。

もし仮想粒子ペアが誕生する事で宇宙の運動量が増加した、とするならば、それは運動量保存則を破っている事になります。



2、恒星から進化したBHの誕生から消滅までの一般的なストーリー

ビジュアルな説明としては『ブラックホールの誕生から消滅までをムービーで分かりやすく説明する「Black Holes Explained – From Birth to Death」』: https://archive.md/NUtpy :と言うものがあります。

前半の説明は通常の超新星爆発でBHが誕生するプロセスであり、後半の蒸発の所でホーキング放射が説明され、最後に大爆発して消える、と締めくくられています。

ちなみにこの説明で特筆すべきは「仮想粒子の対生成」の部分ですね。

対生成で誕生した仮想粒子がお互いに反対方向に同じ速度で離れていくように描かれています。

そうして当方の仮想粒子の生成の理解の仕方もこのイラストにあるものと全く同じです。

ダークマター・ホーキングさんが考えたこと 一覧


https://archive.md/YBLkJ

 

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