あるいは本当は「量子力学がダークマターに挑戦している」がより正しい言い方になります。
そうして今の所「ダークマターは量子力学の挑戦を全て退けている」という事になるのです。
「量子力学がこの宇宙に存在する物質=質量をもつ粒子状のものは全て説明できる」という考え方がダークマター粒子の探索の基本にあります。(注1)
これはまた量子力学帝国主義の考え方「宇宙に存在するものは全て、量子力学に従わなくてはならない」という主張そのものになります。
そうであれば「既存の素粒子の中にダークマター粒子を説明できるものが無いのであれば、ダークマターは新しい、未発見の素粒子である」と量子力学は考えます。
そうしてその線に従って探索が行われているのが現状です。
地下でのダークマター検出実験しかり。
セルンによるダークマター生成実験しかりです。(注2)
しかしながらいずれの実験でも今の所、成果はゼロです。
他方で天文学的な観察ではダークマターの存在は確定しています。(注3)
そうしてまた標準宇宙論でもダークマターは必要欠くべからざるものになっています。
そうであればダークマターは「遠くの宇宙を観測すればその姿ははっきりと人の前に姿を現します」がそのダークマター粒子が目の前を通り過ぎているにも関わらず地球上にいる人類はそれを観測できていない、理解できていない、という事になるのです。
そうして人類史上、こんなことは今までは起こった事がありません。
人類は宇宙に存在する物理的な実在は全て理解できる、とし今までは実際その通りでありました。
しかしながらここにきてダークマターにはどうやらそれが通用しないかの様であります。
そうしてどうもダークマターは量子力学と相性が悪い様に見えます。(注4)
さてそうであればこの状況はとても興味深いものになっている、という事になります。
注1:超対称性理論、それが「ダークマターはWINPである」と主張しているのですが、その理論も量子力学です。
注2:今までの新素粒子探索実験は2つの既存粒子を正面衝突させることで反応させ、そこで生成される素粒子を識別する事で成し遂げられてきました。
実際セルンで行われたヒッグス粒子の確認もその様にしてなされたものです。
そうであれば物理学者は当然のごとく「ダークマター粒子が未発見の素粒子なのだから、従来の延長線上の粒子正面衝突実験で姿を現す事になる」と考えます。
そうして実際、セルンはそのストーリーで実験を行っています。
しかしながら今の所、正面衝突実験ではダークマター粒子は姿を見せていません。
ちなみにかつてはこの正面衝突実験でいやと言う程の新素粒子が発見されていました。
そうして「素粒子と言うには多すぎる」ということてゲルマンがクォークモデルを提唱し、この新素粒子多発状態の混乱に終止符がうたれたのでした。
皮肉なものでそれが今ではどんなにエネルギーをつぎ込んでも新素粒子が現れない状態に陥っているのです。
注3:たとえば「理論予測より桁違いに多かった銀河団内の重力レンズ」: https://archive.md/a9cUQ :を参照ねがいます。
上記記事に限らず重力レンズを使った宇宙でのダークマターの分布についてはすばる望遠鏡による研究など多数、報告されています。
つまり「遠くを観察すれば、ダークマターの存在は明らかになる」のです。
くわえてこの件については ういき「暗黒物質」: https://archive.md/uLLoc :も参照願います。
注4:量子力学と相性がわるいもう一つの存在はBHです。
そうして後日に至りて人々はこんな風に言う様になるのです。
「なんだダークマターがプランクレベルの原始BHだなんて、みえみえのことじゃないか。なんで当時の物理学者はこんな簡単な事に気が付かなかったのか?」とね。
多くの物理学者が「ダークマターがプランクレベルの原始BHである」という事に気が付かない理由は2つ。
一つは上記で述べたような「量子力学至上主義の壁」。
もう一つは「ホーキング トラップ」。
「ホーキング トラップ」と言うのは今の物理学者が落ち込んでいる、ホーキングさんによって仕掛けられた罠の事です。
それはもともとはホーキングさんの主張「BHはホーキング放射を出して最終的には蒸発してしまう」の丸呑みによる「それが何時も正しいのだ」という思い込みです。
その思い込みの下で「宇宙初期に物質が現れるのと同時に現れた小さなBHは、それが実際に存在したとしてもすぐにホーキング放射を出して消滅してしまう」と物理学者は考えます。
まあそういう訳でほとんどの物理学者は「プランクレベルの原始BHなど現時点で存在するはずがない」と頭から決めつけているのでした。