MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

儚き人生

2011-08-25 00:00:00 | その他の音楽記事

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  ゆく河の流れは絶えずして、

     しかももとの水にあらず。

        よどみに浮かぶうたかたは、

           かつ消えかつ結びて、

              久しくとどまりたるためしなし。



 これは方丈記の書き出しの部分ですね。 頃は
鎌倉時代、西暦1212年に成立したとされる、鴨長明
の晩年の作です。



 「これが音楽と、何の関係があるというの?」

 そうですね。 もう少しお読みください。 今回は
クラシック音楽ではありませんが。




 また、今日でも使われる表現に、「流れに棹差す」が
あります。

 これ、長いものには巻かれろの反対に、「流れに
抵抗する
」意味かと思うと、それは誤り。 kotobank
には、以下の記載があります。



 「本来は、船頭が流れに逆らわずに水棹を差し操ること。
また、社会や周囲の動きに合わせて上手に世の中を渡る
こと、時流に乗ることの意。ところが "棹差す" とあるので、
誤って、世の中の流れ、時流に逆らう意で用いられること
がある
。」




 片や、移り行く世の無常を詠い、一方は、現世の世渡りに
言及しています。 共に、極めて日本的な表現と言えます。



 ところが、これと同じような内容が英語にもあり、歌に
までなっているのをご存知でしたか? それも、アメリカ
の幼児向けの歌です。



 それは "Row, Row, Row Your Boat"

 どなたでも恐らく一度は、耳にしたり歌ったり
したことがあるでしょう。

 譜例 (Wikipedia より)もありました。



 「作曲者はライト (Eliphalet Oram Lyte) 」という説が
ありますが、定かではありません。 「曲集を編纂した人物
にすぎない?」とも書かれています。 彼は音楽家ではなく、
文法や作文の教師だったからです。




 そして歌詞ですが、あの「マザー グースを出典とする」
…という説もあります。 しかし、真正なものとして認めるに
は異論もあるようです。




 歌詞には色々ありますが、代表的なのは次のものです。



    Row, row, row your boat
    Gently down the stream.
    Merrily, merrily, merrily, merrily,
    Life is but a dream.

    漕ごう、漕ごうよ、舟 漕ごう、
    流れのままに 下ろうよ。
    おもしろ、おかしく、愉快に、浮かれ、
    所詮は 人生 これ夢さ。
                    (拙訳)

 この "but" は、"~に過ぎない"。 "Only" と同義です。

 "Down" は必ずしも "下に" とは限りませんが。





 上記を1番、2番として繰返した後、次の歌詞が
3番として歌われることがあります。



    Row, row, row your boat
    Gently to and fro.
    Merrily, merrily, merrily, merrily,
    down the stream we go.

    漕ごう、漕ごうよ、舟 漕ごう、
    往きつ戻りつ ゆっくりと。
    おもしろ、おかしく、愉快に、浮かれ、
    流れに任せて 下ろうよ。
                    (拙訳)




 またこれを2番として歌った後に、次の歌詞を
3番とすることもあります。



    Row, row, row your boat
    Gently down the stream.
    If you see a crocodile,
    Don't forget to scream.

    漕ごう、漕ごうよ、舟 漕ごう、
    流れのままに 下ろうよ。
    もしもワニさん 見かけたら、
    必ずギャーッて 叫ぼうね。
                    (拙訳)




 無常感はだいぶ薄れてきましたね。

 ちなみにアメリカでは、「ゴルフ場の沼にワニがいる」
…と友人から聞いたことがあります。 Florida州 Tampa
での話。 30年ほど前のことですが。

 "池ポチャ" のペナルティは、即 死刑 (death penalty)
になりかねません。



 Wikipediaでは、以下のものも見られます。



    Row, row, row your boat,
    Gently down the stream.
    Throw your teacher overboard,
    And listen to her scream.

    漕ごう、漕ごうよ、舟 漕ごう、
    流れのままに 下ろうよ。
    舟から先生 突き落とし、
    キャーって言うの 聴いてやろう。
                    (拙訳)




 ますます物騒になって来ました。

 ワニがいなければ、まだいいのですが。



 次のような歌詞もあります。



    Row, row, row your boat,
    Gently down the stream.
    Verily, verily, verily, verily,
    Life is down the drain.

    漕ごう、漕ごうよ、舟 漕ごう、
    流れのままに 下ろうよ。
    本当は、ほんまに、実は、まさしく、
    人生の行く末 下水管。
                    (拙訳)




 アメリカ式の、即物的無常感?



 歌い出しが、次のようなものも。

 (うたであそぼ から こげこげボート による)



    Gallop, gallopy, gallop your horse,



    Roll, roll, roll your hoop,
    Wobbly by the stream.

 "Hoop" は輪ですね。 "Wobbly" は "グラグラ、グルグル"。



    Bounce, bounce, bounce your ball,
    Down beside the stream.



    Clap, clap, clap your hands
    as slowly as can be,
    clap, clap, clap your hands,
    do it now with me.

 "Clap" は"手を叩く"。




 「ゆく河の 末は 暗渠の下水管?

   …ああ、もうたくさん、ニなった。

      チョウメイ 決して 望まんぞ…。」



 鴨長明も、さぞビックリしていることでしょう。




 さらに探求心の旺盛な方は、以下のサイトをどうぞ。

 不思議の国より不思議な国のアリス から Row your boat




              音源サイト

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