MARU にひかれて ~ ある Violin 弾きの雑感

“まる” は、思い出をたくさん残してくれた駄犬の名です。

休符が落し穴?

2011-02-27 00:00:00 | 私の室内楽仲間たち

02/27 私の音楽仲間 (260) ~ 私の室内楽仲間たち (234)



              休符が落し穴?




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       [音源ページ ]  [音源ページ




 Beethoven が最初に完成した弦楽四重奏曲、ニ長調
(Op.18-3)


 その第Ⅳ楽章には、アンサンブルの落し穴が、何箇所か
あります。



 メンバーは、Violin が私、Sa.さん、Viola は O.さん
チェロはN.M.さんでしたが、その落し穴の一つに、
私たちも捕獲されてしまったようです。

 テンポは "Presto"。 拍子が、数えにくい 6/8 で
あるのも、原因の一つでしょう。




 その部分をスコアで見ると、こんなふうになっています。 色が
塗ってある
のは、もっとも数えにくいと思われる、Viola パートです。

 ここは、3つの音から成る主要モティーフが展開されている部分
ですが、一番の問題点は、各モティーフの前に "八分休符" が
置かれていることです (1拍目、4拍目)。



 休符といっても八分休符が一つだけ。 実際に休んで
いる暇などありません。 テンポが Presto なので、どう
しても「食い付きが遅れてしまう」わけですね。

 早めに準備を終え、休符の置かれた場所は、単なる
"発射ボタン" として捉える必要があります。

 この "入り" が遅れてしまうと、テンポ感まで、おかしく
なりがちです。 いくら周囲の音を聴こうとしても、余裕が
無いと、表 (おもて) 拍、裏拍の区別自体が出来なくなって
しまうのです。







 またこのモティーフを見ると、小節を跨いでいる場合と、小節内
に収まっている
ときとがありますね。 スタート地点に差があり、
5拍目だったり、2拍目だったりするわけです。

 Viola の120小節目では、それ以前とパターンが変わるので、
準備の仕方を咄嗟に変えなければなりません。 二つの Violin
パートには、こういう問題はありません。



 最後の問題は、休みの小節があることです。 パートによっては
4小節も。 しっかり数えていないと、その前後の "不完全小節"
の休符が邪魔をして、頭の中が混乱してしまいます。

 この例の場合は、126小節目の "入り" が、多少難しいかも
しれません。 休んでいる3小節の間に、色々なタイミングで音
が鳴っており、幻惑されやすいからです。 しかも、八分休符は
一つしか無く、すぐに音を出さねばなりません。

 もし、その先の箇所が技術的に心配だと、冷静さを保つのは
ますます困難になります。




 休符がほとんど無く、常に弾きっ放しのままでよければ、こう
いう問題は起こりませんね。 多少忙しくなりますが。

 同じ問題は、オーケストラの弦楽器パートでも、頻繁に見られま
す。 しかし、誰かがしっかり数えていてくれれば、周囲はとても
助かるわけです。

 しかしこれは室内楽。 譜面に書かれた音符、休符には、自分
だけが責任を持たねばなりません。



 「そんなの、怖いから嫌だな…。」

 君子危うきに近寄らずですね。 でも、虎穴に入らずんば
虎児を得ず
という諺もありますよ? 穴に落っこちても、落命は
しません。 『…一時の恥』で済みます。

 個々のアンサンブル能力の向上は、オーケストラ全体にとって
も、大きな武器になるはずです。 長期を見据えれば。




 音源は、親友のパソコン ソフト君が、この部分を演奏した
ものです。 これを聴きながら、Viola パートを追ってください。

 テンポは多少ゆっくりめで、Viola パートが大きめに聞える
ようになっています。 スコアを追いながら、"入り" を的確に
成功させてください。

 アルト譜表は読みにくいかもしれないので、音程の正確さ
は "二の次" です。 その代わり、八分休符1個を休み過ぎ
て遅れないように、注意してください。



 「こんなのはお茶の子だよ…」という方、ごめんなさい。
次回はパート譜で挑戦していただきます。




 音源がスタートするのは、100小節目から。 114小節目からは
2番〔〕に入り、問題の箇所が現われます。 この難所を乗り切り、
133小節目まで正確に演奏してください。

              さて、結果は?

  [おめでとうございます!]  [次回はがんばってね!]





  

        [アンサンブル用 音源]