著者は、幼少時に野山で遊んだホンチ遊び(クモ合戦)の楽しさが忘れられず、
40歳代で脱サラして、クモ合戦のルーツ、クモに関する民俗学的な研究に没頭するようになったそうです。
ひ弱ないじめられっ子でも、強いホンチ(ネコハエトリ・雄)を見つけることが出来れば、
屈強の上級生も打ち負かすことが出来た・・・大自然の掟に真の自由と平等を享受した・・・と書いています。
当時、著者の住む町(横浜)の駄菓子屋には、ホンチを入れておく小さな箱を売っていたそうです。
中には仕切りがあり、6匹のホンチを入れることができ、それをポケットに入れていたのだそうです。
読むほどに蜘蛛への愛に満ち溢れて、思わず頬がほころびます。
各地のクモの呼び名(方言)遊び、伝承、古い文書に見る蜘蛛、絵画や祭り、銅鐸に描かれたクモ。
そして、なぜ蜘蛛が嫌われるようになったのか、
日本書紀や古事記、風土記に書かれた「土蜘蛛」とは何だったのか、など蜘蛛文化論、
厚い本ですが、後半に展開する短い章は、次々と楽しいお喋りを聴いているような感じがしました。
残念ながら著者は2007年に亡くなっています。
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『蜘蛛』ものと人間の文化史・107
斎藤慎一郎(1940-2007) 著
法政大学出版局 2002年
(著者は絵本も書いているそうです。)
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