まい、ガーデン

しなしなと日々の暮らしを楽しんで・・・

彼女の願いはかなったのか『バースディ・ガール』村上春樹著

2024-04-24 08:58:13 | 

書架の村上春樹の並びに紛れ込むように挟まれた薄い薄い1冊の本。64頁。
それだけで手に取ってみてぱらぱらとめくる。強烈なイラストの挿絵。
これなら面白く読めるかなと。

 帯が付くと 

ほぼ全編見開き左ページに東ドイツ・ルッケンヴァルデ生まれカット・メンシックのイラスト。
右ページに文章。ちょっと馴染みがない、今まで読んだことがない。
その毒々しいまでのイラストが二人の会話を端的に物語っていて、大人の絵本の様相に見える。

物語は回想から始まる。

二十歳の誕生日を迎えた女の子は、誕生日もまたアルバイト先のイタリア料理店で働いていた。
その日、店のフロア・マネージャーが体調を急に壊し、代わりに彼女がフロア・マネージャー以外
誰も姿を見た事の無いオーナーに夕食を運ぶ事になる。時間通りに食事を運んだ彼女はオーナーに
年齢を尋ねられ、今日が二十歳の誕生日であると言う。彼女はオーナーに誕生日を祝福のしるし
として一つだけ願い事を叶えようと言われ、戸惑いながらも一つの願い事をする。

回想する彼女に聞き手の「僕」は尋ねる。願い事は叶ったのか、願い事に後悔はないか。

ほとんど彼女とレストランのオーナーとの会話。禅問答のような会話が続く。
うーん、理解できるようなできないような。
ありふれているようなそこから深読みしそうな。
結局、彼女とオーナーとのやり取りはなんだったんだろうかと。
私も聞き手の僕と同じように聞きたい、知りたい。
今の彼女はどうなのか、その時願った生活をしているのか。

 

二十歳の誕生日、彼女は普段と同じようにウエイトレスの仕事をした。
オーナーに食事を運んだ部屋での会話。(会話はかなり省略しています、彼女の部分だけ
彼女と記して、ついていないかぎかっこはオーナー)

彼女「二十歳になりました」
 「今からちょうど二十年前の今日に君はこの世に生を受けた」
 「そいつはいい。それはおめでとう」
 「お嬢さん、君の人生が実りのある豊かなものであるように。なにものも
  そこに暗い影を落とすことのないように」

誕生日のプレゼント
 「君の願いをかなえてあげたいんだよ。(略)なんでもいい。どんな望みでも
  かまわない。もちろんもし君に願い事があるならということだけれど」
 「こうなればいいという願いだよ。もし願いごとがあれば、ひとつだけかなえてあげよう。
  それが私のあげられるお誕生日のプレゼントだ。しかしたったひとつだから、
  よくよく考えた方がいいよ」
 「ひとつだけ。あとになって思い直してひっこめることはできないからね」

 「お嬢さん、君には願いごとがあるのかね。それともないのかね?」

彼女「だから私は言われたとおり、願いごとをひとつした」

その願いごとはオーナーが思っていたのとはかなり違っていたようだ。


彼女「もちろん美人になりたいし、賢くもなりたいし、お金持ちになりたいとも思います。
  でもそういうことって、もし実際にかなえられてしまって、その結果自分がどんな
  ふうになっていくのか、私にはうまく想像できないんです。かえってもてあましちゃう
  ことになるかもしれません。私には人生というものがまだうまくつかめていないんです。
  その仕組みがよくわからないんです」

「これでよろしい。これで君の願いはかなえられた」
「ああ、君の願いは既にかなえられた。お安いご用だ」

 

聞き手の僕
  「僕が知りたいのは、まずその願いごとが実際にかなったのかどうかということ」

彼女「イエスであり、ノオね。まだ人生は先が長そうだし、私はものごとの成りゆきを
   最後まで 見届けたわけじゃないから」

僕 「君はそれを願いごととして選んだことを後悔していないか?」

彼女「私は今三歳年上の公認会計士と結婚していて、子どもが二人いる」
彼女「男の子と女の子。アイリッシュ・セッターが一匹。アウディに乗って、週に二回
   女友達とテニスしている。それが今の私の人生」
彼女「私が言いたいのは」
彼女「人間というのは、何を望んだところで、どこまでいったところで、自分以外には
   なれないものなのねっていうこと。ただそれだけ」

小説はもちろん答えを出していない。
彼女は現在、公認会計士と結婚していて子供が2人いる。ペットはアイリッシュ・セッターで、
車はアウディ。週2回は友人とテニスを楽しみ、日本では馴染みの薄いバンパー・ステッカーに
ついても軽く冗談を交わせる。

そんなプチセレブな生活が彼女の願いだったのかしら。
そうだとしたら、と考えてしまう。うーん、違うだろうな、とは思うけれど。
64頁の小説は私には難しい。

 

 


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