チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

沈香の線香

2024年06月26日 05時07分26秒 | 日々のこと

雨、23度、94%

 私が中学1年の時、47歳で逝った父は「お香」が好きな人でした。火も入れない座敷で一人静かに「お香」を炊いていた姿、その香りが記憶にあります。父が亡くなってから母は毎日線香を仏壇にあげていました。父が好きだった鳩居堂の「いかるが」か「好文木」です。 

 私も帰国以来、毎日線香を父母にあげます。仏壇はありません。お香とお花は欠かしません。そしてずっと父が好きだった、「いかるが」と「好文木」を使ってきました。

 今までお線香が切れると迷いもなく「いかるが」か「好文木」を選んできたのに、ふと、別の香りが欲しくなりました。湿っぽい季節に入ったこともあります。気紛れかもしれません。

 「いかるが」も「好文木」も「白檀」の香りが強く残ります。甘さより透明感、澄んだ香りが欲しいと思いました。「白檀」より「沈香」の香りが強い線香を探しました。「沈香」は特定の香木からできる線香ではないそうです。複雑に組み合わさった香りでベトナム産のものが良いとされています。火をつけるまでは香らないと言われますが、店に並ぶ箱を開け目を閉じて香りを嗅ぎました。

 家に帰り「今日からお線香が変わりますよ。」と父母に声をかけました。すうっと立ち上げる煙と共に静かに香りが漂います。深い緑色の線香がゆっくりと消えました。あとに残る香りは「白檀」のそれより強いと感じます。「沈香」の香りを凝縮したのが「伽羅」です。 この箱にたった10本しか入っていませんが高価な線香です。命日に使います。

 「お香」の香りはお寺の香りに通じます。日本ばかりか仏教国の寺院では大きな伽藍の冷たい空気に「お香」がかおります。その国その国によって特徴ある香りです。どんな暑い国でも寺院の空間は静かな冷んやりした空気が流れています。「線香」の香りは心を覚ます香りです。

 「沈香」の線香に変えて数日が過ぎました。外は連日雨です。気温も高くなりました。座敷の隅にふと「沈香」が香ります。残香を長く楽しむことができます。私好みの「沈香」の香り、父母に気に入ってもらえたでしょうか。

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