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チクチク テクテク 初めて日本に来たパグと30年ぶりに日本に帰ってきた私

大好きな刺繍と大好きなパグ
香港生活を30年で切り上げて、日本に戻りました。
モモさん初めての日本です。

「小村雪岱スタイル」 三井記念美術館

2021年04月17日 | 美術展

曇、16度、92%

 「小村雪岱」という日本画家を知ったのは、2010年出版の「芸術新潮」二月号でした。 大正後期から昭和初期にかけて「日本画」そのものよりも「本の装幀」「舞台装置原画」の制作者として名の通った人だったようです。

 「日本画」に見る日本女性は世代を反映しています。それ以上に描く画家の心が反映していると思います。「小村雪岱」が描く日本女性はとても身近に感じることが出来ます。美しいけれどすぐ側に居そうなそんな日本女性です。「おお、美人」ではないのです。それでいて小柄な日本女性の身体のしなやかさや着物のシャンとした後ろ姿が描き込まれています。

 日本を永く離れていましたから、「小村雪岱」の展覧会に巡り合うことがないまま10年以上が過ぎました。年明けて、「三井記念美術館」での催しに「小村雪岱」の字を見たときは大喜びしました。コロナのことが心配でやっと重い腰を上げて観に行きました。「三井記念美術館」は日本橋一帯の再開発で新しく出来た美術館です。

 完全予約、時間指定があります。しかも雨ですが会期も残すところ僅かとあって入り口から並びました。新しい美術館、大き過ぎない落ち着いた造りです。会場に入ると人の多さは気にならないほど作品に没頭しました。

 この10年、グラビアなどで「小村雪岱」の絵を見つけると切り抜いてあります。写真で見るそれと実際軸に仕立てられた絵を見るとでは大違いです。江戸時代の「鈴木春信」の女性像に似ているとよく書かれています。この展示会では「鈴木春信」の絵も出品されています。見比べると確かに似ています。「小村雪岱」の描く女性の方がひとまわり華奢です。そして女性の目線が優しさを持っています。「泉鏡花」の本の装丁に至っては布地に書かれた絵の具合が心に染み渡ります。手に取れないのが残念です。「舞台装置原画」と聞くととてつもなく大きなものを想像していましたが、B5サイズほどの大きさに緻密に描き込まれた数々でした。

 数少ない展示だろうと思っていましたが140点にも上る出品でした。個人の所有物もありますが大半は京都「清水三年坂美術館」からの出品でした。「小村雪岱」が書く文章も当時高い評価を受けています。 五十歳前に亡くなっていますが、各方面でいいものを残された「小村雪岱」です。「資生堂」のデザイン室に勤めていたこともあり、その時代には「香水瓶」のデザインも手掛けています。この「香水瓶」を見られるかと思いましたが、残念、出品されていませんでした。

 「小村雪岱」に何故こんなに惹かれるのか?小柄で華奢な女性像、それ以上に色遣いの妙だと気付いたのは会場を出る頃でした。独特な淡いそれでいてモダンな色遣いです。この会場でまだ時間をと思うのですが、次の時間指定の美術展の入場時間が迫っています。長年見たかった「小村雪岱」の絵の余韻をしっかりと胸に雨の中を次に急ぎました。

 

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「篠田桃紅作品展」を見る

2021年03月20日 | 美術展

曇、15度、88%

 先日お亡くなりになった篠田桃紅さんの作品展に行きました。百歳を超えてなお創作意欲が衰えず、写真で拝見するだけでもとても百歳を超えた方の筆とは思えない作品でした。

 篠田桃紅さんが日本で広くお名前が知られるようになったのは、私が日本にいなかった30年の間です。いつか、いつかと思いながら年明けて福岡でも作品展があることを知り楽しみに待ちました。その2週間前に訃報に触れました。

 「墨象」と言われる墨絵の数々、リトグラフを混じえた後年の作品の数々です。 晩年の篠田桃紅さんのぐっと襟を抜いた着物姿を思い浮かべながら拝見しました。力強いと思っていた筆致は実際の作品に触れるとその不思議な枯れ具合に目が停まります。筆を知り尽くす以上の筆が体の一部になって、心を現したような線の数々です。潔い中に女性の心の奥底にあるものが見え隠れします。

 展示即売会です。数百万円の作品がもう生み出されないと知る愛好家に求められ、次々と「売約済み」の札が付けられていました。「篠田桃紅」という人間、容姿までを含めたものを買い求められているような気がします。機会があればお若い時の作品にも触れて見たいとの思いが残りました。生きていることを表現するのは万人皆その方法が違います。ささやかな自分の生き様をささやかに残したい、いいものを見せていただきました。

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今日

2019年12月06日 | 美術展

今日レコ

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「眺めのいい部屋」国立近代美術館

2019年11月22日 | 美術展

晴、11度、78%

 1週間前、鏑木清方の絵を見るために竹橋の国立近代美術館を訪ねました。羽田から地下鉄を乗り継いで地上に出ると皇居のお堀端に出ます。秋の東京の匂いです。

 作品数は少ないながらも充実した鏑木清方の絵を見て、この先2日間の多忙を患う気持ちも失せました。そんな落ち着いた心持ちで4階の「眺めのいい部屋」に向かいました。皇居に面するこの部屋は一面ガラス張り、ただ心地の良い椅子が置いてある空間です。数年前に訪れた時は小雨に煙った皇居を眺めました。今回は色づき始めた秋の景色です。

 皆さん静かにこの景色を楽しんでいます。先日も数々の展覧会がありそれぞれ胸に抱いているものは違うのに、同じ景色で心が和みます。 お堀端はいつもジョギングする人の姿が見えます。そういえば大手町の地下鉄のホームには大きなスポーツショップがありました。走るためのシューズから服装まで全部揃うようです。

 皇居が好きでこの景色を見ているのではありません。水のある風景は川であれ海であれその時々の見る者の心を映すように思います。お堀の水は流れずに弛んでいます。 人しばらく窓辺に佇みました。慌ただしく写真を撮る外人の方が入って来たのを機に部屋を出ました。

 近代美術館ではこの「眺めのいい部屋」も展示物の一つだと言われています。超高層から見る景色とは違います。身の丈のいい眺めは自分の足元を考えながら何かを教えてくれるように思います。

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鏑木清方 幻の《築地明石町》特別公開 東京国立近代美術館

2019年11月20日 | 美術展

晴、10度、64%

 今回の上京は本来なら美術展など見に行く余裕がないはずでしたが、移動時間の合間を縫って国立近代美術館へ向かいました。鏑木清方の代表作を見るためです。

 一昨年やっと念願の鏑木清方の鎌倉の美術館を訪ねました。自宅をそのまま美術館にしたもので、見ることができる作品数は限られていました。それでも絵を描いた庭に面した画室を見ると鏑木清方その人の人となりが伺えます。鏑木清方を知ったのは絵からではありません。数冊の本も書いています。「明治の東京」を読んで初めてこの画家を知りました。

 

 今回は展示数は少ないものですが、鏑木没後40年行方が分からなかった代表作「築地明石町」が出ています。鏑木自身が3部作と思っていた「新富町」「浜町河岸」も一挙公開です。軸装にして170センチ以上の3作が並んでいる様子は圧巻です。ここまでと思われるほどが細かく描き込まれています。「築地明石町」の女性の着物の小紋の模様は実物の絹地を見ているかのようです。美人画の流れを組む鏑木清方らしく女性を捉える目の鋭さを感じます。その目の先にあるのは嫋やかな日本女性の線です。

 「明治風俗12ヶ月」も軸装で150センチほどの軸が12枚揃って見ることができます。どの絵にも日本女性の美しさを描いています。市井の女性から花柳界の女性まで清方が描く女性は決して妖艶ではありません。今の女性のような子供っぽさもありません。ああ、日本人と私は心でつぶやきます。作品数は少ないのですが、鏑木ファンの方は必見の展示会です。

 ちょっと煮詰まった時の私の一番の息抜きはいい絵を見ることのようです。

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