makoto's daily handmades

博物館実習を受ける学生さん達へ

老婆心ながら、20年以上昔、博物館実習を受けたことがある私から、これから博物館実習を受ける学生さん達へ伝えたい怖いお話があります。
博物館実習を受け入れる博物館関係者の方も、ぜひこの怖い話を学生さん達に教えてあげてください。

私は某博物館で博物館実習を受けたい、と高校生の頃から考えていました。
少しでも某博物館関係者に顔を覚えてもらいたく、年会費を支払って友の会会員にもなりました。
そして私が大学3年生の9月、大学で翌年に控えた博物館実習のガイダンスがありました。
教授から「今年の4年生の博物館実習が終わりました。その中で本校始まって以来の不祥事がありました」と重々しい言葉がありました。

その内容は次の通りです。
博物館実習に遅刻し、喫煙のために勝手に席を外し、勝手にジュースを買いに行って、指定場所以外でそのジュースを飲み、資料にこぼしました。
また学芸員を目指す人なら常識であるはずの鉛筆以外の筆記具を平然と使っていました。
また作業中もおしゃべりが止まず、注意されても毎日同じことの繰り返し。
休憩室で騒いでなにしろ目に余ったそうです。
ちなみに、博物館実習は指導してくれる学芸員だけがあなた達を見ているわけではありません。
博物館では接客サービスを担っているのは、パートタイマーやアルバイトの方達です。
この人達は、お客様からの苦情を直接言われる立場でもあります。
今紹介した実習生が騒いでいる姿を見たお客様が接客サービスの方達に苦情を言ったそうです。
一生懸命接客をしているパートさん達だって実習生に対して悪い印象になります。
実習生達は気がついたら博物館のトップから末端まで万遍なく嫌われていたと言う訳です。

結果、その実習生は博物館実習の単位を取得できませんでした。
そしておまけに、博物館から「今後一切、この大学からは博物館実習を受け入れません」と通告されたのです。

ちなみにこの博物館、私がずっと博物館実習を受けたいと思って友の会まで入会していた博物館でした。
私、教授に掛け合いました。
「私、高校生の頃からこの博物館で実習を受けたくて、友の会にも入会しています。どうにかならないモノでしょうか?」と。

教授から言われた言葉は、次の通りです。
「絶対にムリ。それに学芸員の世界は狭いので、すぐに周辺施設にも伝わるよ。残念だけれど諦めてください」

そして続けてこうも言われました。
「学芸員になりたいと考えている人は、大卒でなれると思わないでください。このような不祥事があった大学から学芸員採用があると思わない方がいい。どうしても学芸員になりたかったら、大学院に進学してとぼりが冷めるまで、次官をやり過ごしてほしい」とも。

私が資格取得した時代と現在では、かなりカリキュラムが違うとはいえ、博物館実習は博物館の義務ではありません。
実習生は常に謙虚であるべきだ、という実例です。

さて、この話にはまだ続きがあります。
問題を起こした実習生のその後の話。これは博物館の学芸員さん達には知らされていないと思います。
私も人づてに聞いた話です。

実習生だったその人は、とある企業に内定が決まっていたそうです。
当時は就職協定というモノがありまして、10月1日に内定式という拘束日が広く一般に行われていました。
その際、企業側から「卒業見込や資格取得見込などに変更があったら速やかに連絡してください」と言われたそうです。
当然、その実習生は学芸員資格取得見込が取消になっていましたが、伝えなかったそうです。

そしてその年の12月。
再度内定企業での集まりがあり、1人ずつ面接で近況報告をする機会がありました。
実習生だった人は「学芸員資格取得見込が無くなりましたが、卒業予定です」と伝えたそうです。
すると企業側から大学に照会があったそうです。
今とは違って買い手市場でしたし、個人情報保護法もない時代です。
大学は「博物館実習の単位を落としたためです」と答えたそうです。
再度実習生は企業側から呼び出されました。

10月の内定式の時に既に分かっていたのになぜ報告しなかったのか?と。
そして企業側からは「学芸員資格取得見込と履歴書に書いてあるのに資格取得ができなかったので、内定取消します」と通告されました。

実習生が青ざめた時には既に遅かったと言う訳です。
その実習生は、卒業見込が無くなったら内定取消だと知っていたそうですが、資格取得見込が無くなっても内定取消の事由になるとは知らなかったそうです。
また当時は、秋採用試験や第二新卒も無かった時代のことでした。
その実習生は、大学教授に掛け合って助けてもらおうとしましたが、なにせ不祥事を起こしたという自覚が無かった性格の持ち主です。
誰も救いの手を差し伸べることもありませんでしたし、周りからも「自業自得」と言われてしまいました。

その後、実習生か卒業はできたそうですが、就職ができたかどうかまでは私は知りません。

なぜ今、こんなことを私が書いているか、という理由を書きます。
じつは今、私のパート先では、博物館実習の大学生たちと休憩室が同室なのです。
施設上の都合なので、パートやアルバイト勤務の人達は「ハイ、分かりました(ニコッ)」と社員さんたちに笑顔で了承しています。
しかし、パートやアルバイト勤務の人たち同士では、実習生の大学生に対して不満が噴出中です。

休憩室の中で騒いだり、食べ物を食べながらウロウロしたり、自分の荷物を部屋の端に置かなかったり、パートさん達のお菓子を勝手に食べたり、フライヤー(チラシ)を机いっぱいに広げたままどこかへ行ったり、鼾をかいて寝たり、挨拶しても聞こえていないふりをしたり、他のパートやアルバイトに対して配慮がないとのことです。

博物館実習を受ける学生さん達へ。
あなた達は、学校の授業の一環だから学生気分なのは仕方がないことです。
ただ、指導をしてくださる学芸員さんや館長だけが、博物館の運営をしているのではありません。
あなた達はいろいろな方の目に触れていることを忘れないでくださいね。


ちなみに私は他の施設で実習を受けて無事に単位を取得、もちろん資格も取りました。
ただ、今も某博物館で実習を受けられなかったのは、悔しくて溜まりません。

コメント一覧

makoto-hizikata
山田邦和さんへ
コメントをいただきありがとうございます。
このお話の大半は25年くらい前の出来事なので、今の制度とは違うこともありますので、ご参考程度にしてください。
それに私が勤務していた博物館は、水害で閉館し、その後私も解雇されたので、もう鮮度の悪い昔話です。
学生さん達にはぜひ鮮度の良いお話をして差しあげてください。
山田邦和
大学で博物館学芸員課程の指導をしている者です。遅まきながらこちらのブログにたどりつかせていただき、衝撃と、自省の思いを持ちました。大変重要な内容と思いますので、私が指導する学生たちにもこちらのページを閲覧するよう伝えたいと思います。大変貴重なお話、ありがとうございました。
makoto
ふるやのもりさんへ
私の時代、博物館実習は大学4年生で受ける実習なので、親の躾ではないと思います。
もう就職の内定をいただいているので、プレ社会人として、社会に出る心構えを自覚する時期です。
当時の私はその先輩学生を恨む気持ちがありましたが、今はその人を哀れむ気持も出てきました。

私もこの出来事を教訓に謙虚な気持を忘れずに生きていきたいです。
ふるやのもり
後輩の道を閉ざしてしまいましたね
そうなんですか。
一人の為に後輩が道を閉ざされてしまったのですね。
残念な事です。
学生気分で自覚がなかったのでしょうが
後々まで影響しましたね。
考えさせられます。
親のしつけもあるのかなあと、親としたら心配になりました。
makoto
jun-sweetsさんへ
学生さん達にとっては資格取得のための「授業の一環」と思っている部分があります。
でも本当は、博物館はその社会的役割として実習生を受け入れているに過ぎません。
そのミスマッチが問題になるのでしょう。
博物館実習は、友達作りの場ではなく、社会に出るためのインターンシップだと自覚していれば、問題にならないと思うところです。
jun-sweets
こんにちは(^^)
一人の不祥事にそこを目指す人たちが巻き込まれたとは悲しいですね。
実習中もいわば働いているのと一緒なので、社会人としてのマナーは必要不可欠。
そこに目を向けなければ、社会人として成り立たないでしょう。
もっと自分の姿に目を向けてほしいですね。
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