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『イタリア遺聞』 塩野七生

2024年01月30日 06時15分15秒 | 書籍
『イタリア遺聞』 塩野七生

前回古本を買っての失敗が尾を引いたせいか、今回は文庫本で注文。
第30刷で発行は平成23年12月25日。当たり前だがきれいな本が届いた。
時々塩野七生の本が読みたくなることがあるが、決して「ローマ人の物語」には
たどり着かず、その周辺のエッセイを読むことになってしまう。
それがもう数冊目になってしまった。
今回もその一冊『イタリア遺聞』
この表紙の絵がなかなかいいので調べたら、マルコポーロがシルクロードへ出発
した時の様子を描いた絵で作者不詳とある。
なかなか見ていて楽しい絵だ。


内容は、例えばその中の第15話、ヴェネツィアの出版社の話。
14,5世紀に世界最大の経済の中心地だったヴェネツィア。
15世紀ヴェネツイアにあったアルド出版社の本には
自社の本のほかその内容に関係ある他社の本まで列記したという。
こんな親切な出版社は現代でも一つも見たことがない。

ヴェネツイアは出版の一大中心地で1495年から97年にかけて
ヨーロッパで1821冊刊行されたが、このうち447点がヴェネツィアで出版。
次はパリの181点。
アルド社は予約制を採用、大きさを小型化、活字もゴシックから
読みやすいイタリック体の文庫版を作り、それによって価格を下げ
圧倒的な支持を得たという。
などなど、興味深い内容が次から次に出てくる。

あるいは第23節「奴隷から皇后になった女」という
トルコのスレイマン一世の皇后に上り詰めた
ロシアの女奴隷の話など興味は尽きない。

こんな話が全部で30話載せられているが、塩野氏は膨大な知識から、
その地方の時代風景、人々、その生活等を切り取って見せたり、
そこから導かれる彼女の推察などが載っている。
そこには歴史家の眼と知性があり、それが内容を深いものにしている。
自分にもっと歴史の素養があったら、さらに興味深く読める部分もあるはずで、
この点がやや口惜しい。

こういった本を読む醍醐味は、当時の様子を知りその中を旅することである。
小学生1年生の時、近くの小学校まで一人で歩いて通い始めた。
通学路からは決して外には出ることはなかった。
自分にとってはそこに何があるのか未知の世界だったし、
自分が方向音痴であるのが、当時ひょっとしてわかっていたのかもしれない。

ある日、意を決して一人で通っていた通学路から、小学校を通り抜け、
今まで踏み入れたことのなかった道へと踏み込んだ。
迷子にならないように数歩進んでは振り返り、振り返りだった気がする。
まっすぐ進んでいるうちはいいが、十字路を曲がってしまうと、
見知らぬ光景が表れ、迷いそうで、慌てて引き返したような記憶がある。

しかしそのことが自分にとっては大変な冒険だったようで、
未知の場所に行くというのは、今でもたとえ街中であってもワクワクする。

沢木耕太郎の深夜特急はじめ、そういった旅行物が好きなのは
そんな理由からなのかもしれない。
それは今回のように、地理的なものだけでなく、異なる時間、時代への旅だったとしても。






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