丹後ブランドの 寒ぶり【ぶりしゃぶ】をめがけて、各地から大勢が訪れるらしい。
今年のテレビ番組で人気のほどを知ったが、世間では”今さら情報”なのかもしれない。
これに限らず流行のしっぽばかりつかんでいる我が家ゆえ、いや、それさえつかみきれずに無知のままってことも有り得る。
食べたいねぇ~よぉし皆で行ってみよぉ~てなことになったのだが。
果たしてその日を迎えられるのか・・・宿をおさえるのにこれほど骨が折れるとは思いもしなかった。
ぶりしゃぶを提供する宿は、ことごとく満室なんだもの。
次の日も、また次の日も検索・・・。
今年は無理かなぁと諦めかけた時、やっと一筋の光が見えた。
暖日の昼下がり、母を伴い宮津方面へ向かう。
日本三景天橋立を望む「清輝樓」は、有形文化財の指定をうけ、歴史、文化の縮図を見るような純和風の老舗旅館だった。
ぶり尽くしの料理に舌鼓。
しゃぶしゃぶして軟らかくなるだけかと思いきや、ふわ~トロ~ととろけ、さっぱりとした後口。
初めてのぶりしゃぶに大いなる感動をおぼえる。
刺身や焼き物などはかけ離れているが、シソ巻きの天ぷらは似た食感かもしれない。
また、ぶりと出合うべくして出合った白ワインナイヤガラ。
両者の絶妙な絡みを、心ゆくまで堪能した。
宿泊部屋の片隅に、布でラッピングしたプレゼント・・・?・・・触れると温かい。
その正体は、何十年ぶりかに見る豆炭あんか。
記憶の墓場に埋もれそうになっていたが、今でもあるんだねぇ。
昔々その昔の冬場、就寝時は毎晩のように豆炭あんかで暖をとった。
夕方になると豆炭を熾し、あんかの準備をする母の姿がうかぶ。
豆炭1個で12時間発熱し続ける優れものだ。
旅館の建物や調度品だけではなく、小物にいたる全てが古き時代を繰り広げていた。
翌朝、宿からすぐのカトリック宮津教会まで歩いてみる。
若かりし頃に宮津が勤務地だった母は、当時と現在を重ねて懐かしがった。
教会では恒例のミサが捧げられようとしていた。
一般の入場はできない旨の張り紙があり、気落ちする私たちだったが、そこへキリストの温かい救いの手が。
ミサが始まるまでなら、入り口付近で見学しても構わないと、ひとりの女性が中へ導いてくれた。
教会のパンフレットを配りながら解説にないことを話す彼女は、落ち着きのある知識人だった。
聖堂は宮大工が、ドーム式天井は船大工の仕事によるものだそう。
曲線美が木目とともに優雅さを醸し出す。
ステンドグラスはフランスから直輸入の色ガラスが使われ、鮮やかな光を放つ。
現役の教会としては日本で最も古いとされるが、艶やかで活気にあふれモダンに息づいている。
許された時間は10分ほどだったが、そこに身を置くだけで、魂が清められる空間パワーを感じた。
次は、町はずれの金引の滝へ。
金引、白竜、臥龍の三瀑からなり、左の女滝と比べ、右の男滝は名の通り幅広で力強く、上部では岩と喧嘩するように暴れている。
流音猛々しく水量豊富で、滝壷から離れても細かいしぶきがとぶ。
身体が浄化されたように、清々しい。
ついつい遠くの地に目を向けてしまいがちだが、近場を突いてみよう。
まだまだ飛び出す、いい旅、いい場所、美味な物。
== 三連休の一幕なり ==