マグロチャンピオンの料理道場

人気バラエティー番組、TVチャンピオンの「マグロ料理人選手権」優勝者が、本格料理を分かりやすく教えるブログ。

料理長が自宅で作る「簡単おつまみ」(13)豚肉の味噌漬け焼き

2011年10月07日 | 料理長が自宅で作る簡単おつまみ
前回は[すりおろした玉ネギ]で肉を柔らかくする「シャリアピンステーキ」の話をしたが、今回は玉ネギのみじん切りと味噌だけを使って豚肉を味噌漬けにしてみよう。

その前に、 (ガンガンガン速) さんからコメントを頂いた。

お邪魔します。

2011-10-07 12:31:43

私は高級牛にくよりも、玉ねぎで柔らかくした方が断然好きです~ 


自分も霜降り高級和牛の「A4」「A5」等より、赤身肉の方が好きだが、脂の味だけではなくて肉の旨さが感じられるからだ。

玉ネギでマリネしてからステーキにすると肉が柔らかくなるのは、玉ネギに含まれるタンパク質分解酵素によるものだが、玉ネギの甘さが肉に合い、更に美味しく感じられる。

それでは、なぜ、タンパク質分解酵素で肉が柔らかくなるのだろうか?

それは、たんぱく質分解酵素が肉のタンパク質をアミノ酸へと分解することで筋などの硬い部分がなくなるので、肉を柔らかく感じるのだ。

肉を軟らかくするタンパク質分解酵素が含まれる食品には「玉ネギ」の他にも、いろいろあって「パイナップル」や「キィウイ」がよく知られている。

ただし、気を付けなければいけないのは、酵素というのは加熱すると活性しなくなるということだ。

よく、「酢豚」を作る時に缶詰めのパイナップルを使っているのを見かけるが、缶詰めを作る段階で既に100℃以上に加熱してあるので、パィナップルのブロメリンと呼ばれるタンパク質分解酵素は活性しなくなっている。

さて、今回は玉ネギのみじん切りと味噌だけを使って豚肉を味噌漬けにするが、実は意外なことに、肉を味噌に漬けると風味が増すとともに、麹菌に含まれるタンパク質分解酵素の働きで肉が柔らかくなるのだ。

よく味噌漬けを作る場合には、味噌に酒、みりん、砂糖等を加えるが、今回は味噌に加えるのは、「玉ネギのみじん切り」だけで、他の物は一切加えていない。

実際に作って食べてもらえば分かるが、砂糖や味醂を加えなくても、玉ネギの甘さだけで十分な甘味を感じる。

よく、TVの料理番組では、味噌に酒、みりん、砂糖を加えて混ぜ、そこに豚肉を30分程漬け込み、焼く時には『焦げるので味噌をきれいに洗い流してから焼きましょう』などと平気な顔をして言ってるが、これでは味噌漬けでは無く味噌の風味漬けになってしまう。

みりん、砂糖を多く使えば糖分が直ぐに焦げてしまうので、しかたなく洗ってから焼くのだろうが、これなら、肉を焼いてから味噌を塗って食べても変わらず、味噌漬けの風味などとても引き出せないだろう。

肉は最低3日は漬け込み、5日頃が食べ頃だろう。しっかり漬け込んでもタンパク質分解酵素のおかげて肉は堅くならず、味噌の風味が染み込んでから焼けば、酒のアテにもおかずとしても美味しく食べられる。

◆豚肉の味噌漬け焼きの作り方。

1)用意する物。

写真手前の左から「豚ロース肉」「玉ネギ」。写真奥の左から「米味噌 2種類」「豚のスペアリブ」。

2)作り方。
①味噌と同量の「玉ネギのみじん切り」を用意する。


②容器に「味噌2種類」と「玉ネギのみじん切り」を入れる。


③よく混ぜ合わせる。


④肉を漬け込む(スペアリブ)


⑤肉を漬け込む(ロース肉)


⑥漬け込んだ状態。


⑦蓋をして冷蔵庫に入れる。


***3日目の状態***

玉ネギのツブツブは、ほとんど見られない。

⑧5日目に容器から肉を取り出す。


⑨食べきれない分は、ラップをして冷凍する。


***今回、ロース肉はフライパンで、スペアリブはオーブントースターで焼いてみる***

⑩スペアリブの表面の味噌をかるく拭ってオーブントースターで焼く。


⑪テフロン加工のフライパンを弱火に掛け油を敷かずに、表面の味噌をかるく拭ったロース肉を乗せる。


⑫蓋をして蒸し焼きにする。


⑬裏面も同じように焼く。


⑭スペアリブも両面を焦げ目が付くように焼く。


⑮焼き上がったロース肉を食べやすいように切って皿に盛り出来上がり。


⑯焼き上がったスペアリブを皿に盛って出来上がり。


さて、今回作った味噌だが、玉ネギのみじん切りは多少大きくとも2日もすれば味噌に溶け込み、形も無くなるので、玉ネギのみじん切りに「競泳用のゴーグル」を使わなくても大丈夫だ。

それでも涙が出る場合には、包丁を研いでやるか、冷蔵庫でよく冷やした「玉ネギ」を使うといいだろう。

ただし、玉ネギはすりおろさず、必ずみじん切りにして味噌と混ぜよう。

この味噌は、豚肉だけではなく、魚やパプリカ等の野菜や、豆腐や茹で玉子など、いろいろな物を漬け込んで食べても美味しいので試してみて欲しい。

さて、ここのところ上海はめっきり寒くなり、外出する時にはジャケットが必要となってきた。

次回の「料理長が自宅で作る簡単おつまみ」は、「鍋」にでもしよう。






料理長が自宅で作る「簡単おつまみ」(12)シャリアピンステーキ

2011年10月07日 | 料理長が自宅で作る簡単おつまみ
今日は10月7日(金)で、国慶節の休みもいよいよ今日までだ。

明日は土曜日で明後日は日曜日だから、一般の会社は月曜日から始まるように思うが、ここが中国の不思議なところで、祝日のお休みが終われば、土曜でも日曜でも会社に行くサラリーマンをよく見掛る。

日系企業の場合には、日本の本社が土曜、日曜は休みなので連絡が取れないからか、来週の月曜からという会社が多いようなので、いずれにしても来週の月曜日までは暇な状況が続くだろう。

さて、前回は「ステーキシャンピ二オン」を作ったが、発音が似ている為に「シャリアピンステーキ」と勘違いしている人が多いようだ。

「ステーキシャンピ二オン」については前回作ったので「シャンピ二オンソース」を使ったステーキ。ということを理解してもらえたと思うが、「シャリアピンステーキ」の「シャリアピン」はロシアの有名なオペラ歌手「フョードル シャリアピン」の名前からとったものだ。

シャリアピンは当時、拠点をパリに置いて活躍していたが、1936年(昭和11年)には日本にも訪れて、東京、名古屋、大阪で公演をしている。

しかし、その日本滞在中はどうも入れ歯の調子が悪かったようで堅い物は食べられなかったようだ。

東京での宿泊先は帝国ホテルだったが、そのことを知った帝国ホテル内のレストラン「ニューグリル」の筒井福夫シェフが「シャリアピン」の為に考案した料理が、この、とても柔らかな「シャリアピンステーキ」だった。

ステーキを柔らかくする為に、肉を薄くのばし、更に「おろした玉ネギ」に漬けこみ、ステーキの上にはじっくり炒めた玉ねぎのソースを乗せたこの料理はシャリアピンもたいへん気に入ったようで、それ以来、このステーキが「シャリアピン ステーキ」と呼ばれるようになったようだ。

さて、それでは早速、柔らかな「シャリアピン ステーキ」を作ってみよう。

1)用意するもの。

写真手前の左から「牛ステーキ肉」「玉ねぎ」。写真奥の左から「無塩バター」「サラダ油」「黒コショー」「塩」

2)作り方。
①肉を薄くのばす。(筋があれば包丁を入れておく)


②玉ネギをおろす。


③肉を玉ネギに漬けこむ。


***付け合わせの野菜を炒める(野菜は何でも良い)***

④「絹さや」をオリーブオイルで炒めて「塩」「コショー」する。

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⑤肉を容器から取り出して表面の玉ネギを取る。


⑥肉に「塩」を振る。


⑦肉に「コショー」を振る。


⑧フライパンを弱火に掛けて、バターを入れる。


⑨おろし玉ネギを加えて炒める。


⑩玉ねぎが色付いて、甘くなったら塩を振る。


⑪コショーを振って更に炒める。

***肉を焼く***

⑫フライパンを中火に掛け、サラダオイルを大さじ1程入れる。


⑬バターを大さじ1(15g程)加える。


⑭肉を入れ両面を焼く。(焼き過ぎると堅くなるので注意する。)


⑮食べ易いように肉をカットする。


⑯肉を皿に盛り、肉の表面に炒めた玉ねぎを塗り、網目の模様を付ける。


⑰パセリのみじん切りを散らし、炒めた「絹さや」を添えて出来上がり。


⑱お好みで醤油を数滴掛けて食べるのもいいだろう。


さて、この料理を作る時にいつも思うのだが、日本には「黒毛和牛種」という、箸でも切れる脂の乗った柔らかい肉があるのに、なぜ、玉ネギを使ってまで肉を軟らかくしなければならなかったのだろう?

きっとそれは、1936年(昭和11年)には、日本では牛肉を食べるという習慣がそれほど無かったからではないかと思う。だから、牛肉は堅い肉しかなく「しゃぶしゃぶ」というのは、その堅い肉を薄くスライスして食べるという理に適っ食べ方だと思う。

今は中国でも「牛肉」を食べるようになってきたが、以前は中国で「肉」と言えば「豚肉」のことを指し、牛肉を食べる習慣は戦前の日本のようにほとんど無く、市場でも豚肉ばかりが並んでいた。

さて、「玉ねぎ使って肉を柔らかくする」という調理法が、この「シャリアピン ステーキ」の特徴だが、次回は、同じように「玉ネギ」を使った「豚の味噌漬け」の話をしよう。