今日も ぺこぺこ

ジョリ夫婦&ぺこ。3匹とも、今日も元気に「ぺこっ」てます。

劇場にて、「アマデウス」

2005-11-06 21:50:59 | Weblog
今日は夫と観劇に行ってきました。
お題は「アマデウス」です。モーツァルトのお話。
これは映画でもあったので知ってる人多いんじゃないかと思います。
(わたしはこの映画が好きで、この劇もとっても気になってたんです。)

この演劇の主役俳優のうち1人、モーツァルト役には、今回初舞台と言うローラン・ダッチ(Lorant Deutsch)という映画俳優が出演してます。この人の主演映画「アメリカン」っていう、おバカなコメディーを見たことあるんですが、あのテンションはモーツァルト役にピッタリだ!と思ってたので、よけいでも見てみたかったのです。

普段は滅多に演劇など見ないので、他の俳優さんのことは全く知らないワタシ。でも夫が言うには、もう1人の主役俳優ジャン・ピア(Jean Piat)はフランスの舞台ではとっても有名な俳優なんだとか。

劇場そのものも、古くてとってもステキでした。
古い劇場って、どこも小さいんです。その小ささがまたステキ。声が届く範囲なんです。だからマイクは必要無い。それが自然でイイんですよね。

フランスで劇場に行くと、大抵席に案内してくれる係りの人がいて、チケットを見せると「こちらです」と先導してくれる。親切だな~と思っていると、席につくやいなや、夫はこの人に1~2ユーロの小銭を渡している。チップ必要だなんて、なんだかヤなサービス。
(夫の話では、このバイトにありつくためにはコネが必要らしくて、一日働くとかなりの儲けになるんだとか・・・)

開始のベルが鳴り、さぁ、いよいよ幕が上がります・・・と思いきや、逆に幕が下りてきた。アレレ?と思ってたら、そこから劇が始まったのでした。(幕の前で数人の男性が少し演じ、その後で本格的に“幕開け”となったのです。)

この劇、とにかく仕掛けがすごかったです。向こうが透けて見える大きなパネルをカーテンのごとく左右に動かし、舞台の奥を半分隠すようにしてみたり。(それで奥と手前の間に距離感を作っているのです。)
演劇については無知なわたしは、本当にビックリの連続でした。

そして何よりビックリしたのは、この老俳優ジャン・ピア氏の演技でした。
存在感とでも言うのか、何と表現したら良いのか・・・とにかくこんな人を見たのは初めてです。
まず、声の通りが違う。他の俳優さんは誰もが、声を前に押し出すようにしてセリフを語っているけれど、この老俳優だけは違う。小さな声でもハッキリと聞き取れるし、大きな声の時にもうるさく感じない。とても心地の良い「声の発し方」なのです。そうか、映画とは違って演劇にはこういうことも大事なんだな、と思いました。
そしてそんな彼が舞台でセリフを語っている時、わたしはスーッと、自然とお話の世界へ引っ張り込まれて行くのを感じるのでした。(御年81歳の俳優さんです。)

この老俳優とは違い、他の俳優さんたちは、若さがチラホラ目立っていて、モーツァルトの妻役の女優さんはさすがに演技が上手だったけれど、やはり「若い」のです。モーツァルト役のローラン・ダッチは、演技は悪くない(むしろ良い感じ)なんだけど、悲しいかな、発声が・・・(彼の声だけ小さく聞こえるのです。)やはり映画俳優なんだなぁって思いました。

肝心のお話の内容は、音楽界に彗星のごとく登場したモーツァルトと、当時の有名音楽家であった宮廷のお抱え音楽家サリエーリの間の人間関係、そしてモーツァルトの人生のお話。(まさに映画の内容そのものなんです。きっと同じ本を元にしてるんでしょうね。)

映画を見てたから内容もわかったんだけど、とにかく、わからない単語や言い回しが多すぎて、何も知らずに観に行ってたら???となるところでした。
聞き取れた面白い表現はいくつかあったんですが、そのうちの1つ calligraphier(カリグラフィエー) という単語を紹介することにします。

映画でも描かれていたように、天賦の才能の持ち主モーツァルトは“アタマの中で曲が全て完成していて、それを「あとは譜面に書くだけ」という状態だった”そうなのですが、劇中でもこのシーンがありました。
「もうオペラは完成したのか?」とたずねるサリエーリら宮廷人たちに対してモーツァルトは「ええ、ココ(頭の中)ではね。あとは(譜面に)書くだけですから。」と、へらへら笑いながら答えたのです。「信じられない!○週間しか経ってないのに全て完成させてるとは!」と宮廷人は驚き、サリエーリはモーツァルトの才能を理解していたので、彼の作品発表を恐れたのでした。
ここで登場した単語、「書く」が先ほどの「カリグラフィエー」なんですが、これってあの「カリグラフィー」の動詞形なんですよね~。つまり、カリグラフィーする、とでも和訳すればいいんでしょうかね。
でも「カリグラフィー」するってヘンですよねぇ。辞書では「みごとな書体で書く」と和訳されてるこの単語。このセリフに当てはめてみたら、「あとは見事な書体で書くだけですから。」って。これはあまりに変だ!!
当時はカリグラフィー(書道・習字)があまりに当然なことだったので、その単語自体が「書く・書き留める」という意味で使われていたのかもしれませんね。このあたり、歴史の中のフランス語に詳しい人に聞いてみないとわからないけれど・・・。

しかし、ワタシにも限度があって、わからない単語だらけで???な中、幕が一旦下りる時になぜか皆が笑っているので、後で夫に尋ねてみたんです。すると「あの老俳優が、“皆はどうか知らぬが、ワシの膀胱はすでにはちきれんばかりなので・・・”とか言って幕を下ろしてたからね。」って。
そんな気の利いたジョークが沢山ちりばめられていたこの劇。最後はとっても悲しい終わり方(モーツァルトの死)をするのですが、そんな中でも観客は笑ってる。ナゼ???
これも夫に聞いてみたところ、「サリエーリ役の老俳優が、“ワシが死んで、もしも聖人になれるとしたら、聖・凡人だろうな。凡人の皆さんの守り神になるのじゃ。”」とか言ってたらしいんです。
サリエーリは自分の才能の限界を十分に知っており、モーツァルトの有り余る才能に嫉妬し、あのテこのテでモーツァルトを追い詰め、最終的に暗殺したというお話。しかし当時の人たちにとってはモーツァルトの派手な曲調は耳慣れないものであり、サリエーリのありきたり(?)の音楽のほうを好んだようで、モーツァルトの才能は理解されなかったのでした。(唯一の才能の理解者が、宿敵サリエールだったとは皮肉な話ですよねぇ。)

「聖・凡人」の話に戻りますが、フランスには365日毎日に聖人が当てられており、それぞれの聖人が「○○の守護神」という感じで役割を持ってるんだとか。(例えばモン・サン・ミッシェルで有名な聖ミッシェルさんは、交通の守り神だとか。)そういうワケで、サリエーリが聖サリエーリになったとしたら、それは凡人の凡庸さを守る聖凡人ってことなんですね。(それでフランス人は笑ってたわけです。観客の大半が、凡人なわけですから・・・。)

映画のほうは、前半はとても派手で明るく楽しく、そして後半は悲壮感に満ちたメリハリのある内容でしたが、この劇はそれに準じる形でありながらも全体を通してスマートなギャグに満ちていて(それをフランスのエスプリとでも言うのでしょうか)、悲しいシーンでじ~んときながらも、どこか笑えるのです。

コレを読んでくれてるお友達の中で、この劇を実際にパリ9区の「Theatre de Paris」まで観に来ることができる人っていないかもしれないけれど、とにかく言わずにはいられない!ってくらい心動かされた劇だったので、ここに書きました。


この劇、「アマデウス」に関してはココを↓(仏語サイト)
http://images.google.fr/imgres?imgurl=http://www.billetreduc.fr/zi/br/sp_4198_p.jpg&imgrefurl=http://www.billetreduc.fr/les_critiques.htm%3Feid%3D247527&h=114&w=90&sz=3&tbnid=iPhOHIkasQcJ:&tbnh=81&tbnw=63&hl=fr&start=98&prev=/images%3Fq%3Djean%2Bpiat%26start%3D80%26svnum%3D10%26hl%3Dfr%26lr%3D%26sa%3DN

ジャン・ピアについてはココを↓(仏語サイト)
http://images.google.fr/imgres?imgurl=http://www.theatremontparnasse.com/lunes/images/jpiat.jpg&imgrefurl=http://www.theatremontparnasse.com/lunes/distri_01.htm&h=300&w=200&sz=13&tbnid=oF6-3jhO9LYJ:&tbnh=111&tbnw=74&hl=fr&start=6&prev=/images%3Fq%3Djean%2Bpiat%26svnum%3D10%26hl%3Dfr%26lr%3D%26sa%3DG
ここも↓(仏語サイト)
http://www.mairie-marseille.fr/vivre/culture/odeon/prof.htm
ここも↓(仏語サイト)
http://fr.wikipedia.org/wiki/Jean_Piat


役者のローラン・ダッチについてはココを↓(仏語サイト)
http://www.allocine.fr/personne/fichepersonne_gen_cpersonne=24873.html

ローラン・ダッチ主演映画「アメリカン」の説明についてはココを↓(日本語サイト)
http://japan.unifrance.org/films/detail_film.asp?CommonUser=&langue=21010&cfilm=24387