暇人に見て欲しいBLOG

別称(蔑称)、「暇人地獄」。たぶん駄文。フリマ始めました。遊戯王投資額はフルタイム給料の4年分(苦笑)。

小説「アルバイトがやってきた」~プロローグ~

2004年09月01日 17時48分36秒 | 小説系
【プロローグ~困った考えた決めた~】

「困ったのぉ~、実に困った……」
その世界での最高権力者がうなった。
「何をお困りですか」
傍らにいた秘書官が尋ねる。
「ふん。知っておるクセに‥‥」
「いえいえ。貴方様のお困りになる事が私のような矮小な者に分かるはずもございません。
毎日のようにお困りなのに、今日はまたどんな凄い事でお困りなのでしょうか」
「そうなのじゃ。世界を治めるワシは、日々とてつもなく沢山の事を考え、悩んでいるのじゃ」
皮肉にも全く気付かない男に、秘書官はやるせなさを感じた。
(世界の最高権力者がこんなにバカでよいのだろうか……)
相手がそんな事を思っているとはつゆ知らず、その最高権力者は続ける。
「だが、その全ての無理難題をことごとく解決してきたワシも、今回のコレにはお手上げじゃ」
そう言って、秘書官の方へ1枚の書類を差し出した。
(今まで解決してきたのは貴方じゃなくてこの私だ)
 バレバレの大ウソをつくその男に辟易しながらも、秘書官は書類を受け取って目を通す。
そこにはこんな事が書かれていた。

   私の部署の人員が足りなくなりそうです。
   せめて、1名は補充要員が欲しいのですが。

   巡察執行部 長官 ロン・アーロンド(大佐)


「確かに、これは無理難題でございますね。
現在、この世界に手の空いている者などおりません。たかが1名されど1名。
こんな無茶を言ってくるとは、アーロンド大佐殿もご多忙で頭のネジが1本抜けているようだ。新しいネジでも買って来ましょうか‥‥」
そこまで言ったところで、頭の中で閃光が走った。
早速、男に耳打ちする。
数秒後―――
「考えた!今ひらめいたぞ!」
(私が教えたんだろう……)
 いつもの事ながら、今回は自分でもビックリするような名案だったので余計、やるせない。
「決めた!決めたぞ!」
そう言って、男は、さっき秘書官から教わった案をそっくりそのまま紙に書いて、
「では、コレを巡察執行部へまわしてくれたまえ」
言いながら紙を秘書官に渡した。
(この男の即断即決ぶりには毎度毎度、驚かされる。もう今では、ため息しか出てこないが。……そのうち、ため息すら出なくなるんじゃ‥‥)
そうなった自分の姿を想像して、秘書官は思わず首を横に振った。
「御意」
その一言を残して部屋を出た秘書官の、そのやるせない背中に、男の高らかな笑い声が力強くこだましていた……

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