疫幽儚(えきゆらはかな)の真実
霊(たま)の記憶から、ほとんどすべての謎が解けた。
どうやら私は、もうすぐ疫幽儚として生き返るらしい。
そのリハビリのために健介の魂の半分を私の体に込め、一日様子を見ている最中なのだ。
『そのとおり。はじめまして、健介の父の石動鉋(いするぎかんな)です』
いつの間にか闇の中にいた私に、健介のお父さんは思念波とやらでそう言った。
は、はじめまして . . . 本文を読む
霊(たま)の十日間1
霊の中で、記憶を探る。
私の力では十日前までしか遡(さかのぼ)れない。
と。
奥の奥、十日前の意識に入り込むことができた。
自分の中から霊(れい)が出てゆくのを霊(たま)は感じた。
玄関。時刻は夜の6時をわずかに過ぎている。
貞子は気絶してその場に倒れてしまった。残ったのは、疫幽儚(えきゆらはかな)の死体と幼なじみの健介だけである。
貞子が倒れた . . . 本文を読む
十日目
がら、がら、がら……と。
霊(たま)に意識を落としていた私は、玄関の戸が開くのを目の当たりにした。
そこにいたのは……
――疫幽儚(えきゆらはかな)!!
どう見ても、疫幽儚だった。
質素な白い服に、長い黒髪。透けるような青白い肌に、細長い手足。
白い靴を脱いで家に上がり、ゆったりとした足どりで歩いてゆく。
ゆらゆらと、どこか危なっかしい動きだった。
死体が見つ . . . 本文を読む